パキン
と乾いた音が、妙に耳に残る…。
音を立てて割れたのは、左手薬指にずっとはまっていた結婚指輪。
はい。
ご覧の通り、無残な姿に。
ゴールデンウィークに、山奥に住む友人宅へ泊まりに行って、帰ってきた翌日。
左手薬指がぱんぱんに腫れているのを発見。
気づいたときには既に指輪が抜けるような状態ではなく、あきらめて「リンデロン」をぬって出社。
出社後もどんどん腫れてくるので、上司に許可をもらって病院へ。
医者いわく、「ああ、これは昆虫だねぇ」
かまれた自覚はないのだが…。そういうことらしい。
ふたたびリンデロンを塗られ、消炎湿布をはってもらい、次の一言をもらって会社へもどる。
「チアノーゼが出て、指先がしびれるようだったら、指輪を切ってもらってください」
夜帰宅。
腫れはひくどころか、ひどくなっている気がする。
上司に教えてもらった、タコ糸を利用した指輪抜き取り作戦を試みるものの、うまくいかず。
かえって、腫れがひどくなるという、どうしようもない状態に。
悪いことに、指は紫色になるし、しびれてくるという、医者に警告されていた状況になってしまった。
指一本と指輪では、天秤にのっけられないので、意を決して救急病院に電話したが…。
「うちには指輪を切る道具はないし、来てもらっても何もできないかも。消防署には道具があるらしいから、119番してそっちできいてみて」
…。
119番…そんな大げさな…。
とはいえ、どうすることもできないので、119番してみる。
さすが119番。
いきさつを伝えると、手馴れたもので、近所の消防署を案内してくれた。
「連絡を入れておくので直接行ってください。」
といわれ、お礼を言って電話を切る。
さっさと車に乗り込んで、消防署へ向かう。
消防署に到着し、入り口の扉を開けると、消防署の方とばったりと鉢合わせ。
「ひょっとして、指輪の人?」
ちゃんと話がとおっている。さすが119番と消防署員。
奥に通されると、6人ぐらいの職員がわらわらと出てきて少しびっくり。
(あとで知り合いに聞いた話、この時期は新人研修で人が多いらしい)
ぱんぱんに腫れて、紫色になった指をみて、消防員からも「うわぁ…ひどいな。」とコメントをもらう。
複雑な心境。
書類(指輪を壊す同意書)に名前と住所を書いていざ処置に。
まず指輪と指の間にアクリル板らしきものを入れて、リングカッターなる器具を設置。
ダイヤモンドでできているらしい、円盤状ののこぎり部分を手でギリギリと回していく。
そして、冒頭のような音を聞いた次第。
その後、指輪でせき止められた毒素(?)が手の甲にも流れたせいか、薬指付け根の甲も腫れたが、腫れが分散されたおかげで指は、いくぶんましになった。
5月11日現在、腫れはほとんどひいた。
さて、壊れた指輪。
宝飾店にもっていけば直してもらえるらしいが、いくらかかることか…。
この際、直さずに「独身」でいるか?