あらすじ

いつもピンクのトップスを着込んだベニーは、9歳のどこにでもいる普通の女の子。だけど、怒りの感情にいったん火がつくと、あたり構わず暴力をふるい手がつけられなくなる問題児。里親の家庭、グループホーム、特別支援学校、トラブルを起こしては新たな保護施設へとたらい回し。学校にも行かず、街をぶらついては毎日を過ごす。そんなベニーは、顔を触られることが大嫌い。ママ以外、誰にも顔を触らせない。赤ちゃんの頃、顔にオムツを押し付けられたことがトラウマとなって、感情をコントロールできないほどのパニック発作を起こすから。


 

  感想

2019年第69回ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞作品。

9歳の少女ベニーは怒りの感情をコントロールできず、パニック発作を起こし暴力を振るってしまい、家族の元を離れ、保護施設を転々としている。そんな中、通学介助を行うミヒャが森の小屋に1対1で過ごすことを提案し、その症状は変化するのかというお話。

観る前の想定を遥かに上回るほどに素晴らしかったです。

ベニーは本来親の愛情を欲しているのですが、それが最善の形になりきらずに、世話をする大人たちの苦悩や葛藤とベニー自身の孤独と苦しみがバランス良く描かれていて、それでも編集が小気味よく、発作を起こした時にスクリーンがピンク色なる表現や、ハードロックな音楽がコントロールが利かない暴走ぶりをウエットになりすぎないような映画に仕上がっていて、後味も心地よかったです。

 

主人公ベニーを演じた少女の演技、その演出も凄まじかったし、周囲の大人たちの対応の難しさが、社会と愛情のバランス感覚がドラマチックて、最後まで読みにくい驚きの連続でもありました。

 

同日に観た濱口竜介監督の「悪は存在しない」と終盤のあるシーンが似通っていて、それをどう解釈し、結末まで持って行くか、想像力に膨らませ方は「システムクラッシャー」の方が上手に感じました。

 

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