医療マーケティングの片隅から

医療ライター・医療系定性調査インタビューアーとして活動しています。独立30年を機に改題しました。

信頼できるネットの医療情報

2017年11月28日 | 医療・健康

今日、一般向けの医学情報サイト 「MSDマニュアル家庭版」の最新デジタル版 が公開されたとのことで、
公開記念プレスカンファレンスに行ってきました。





この仕事を始めた頃から、メルクマニュアル改め「MSDマニュアル」には随分お世話になってきました。
私としては「メルクマニュアル」のほうがなじみがあるし、
名前はそのままにしておいてほしかった気もするんですけど、それはさておき。

 

米国とカナダではいまも「メルクマニュアル」だそうなので、
ここではそちらの名称を使わせてもらいますが、
メルクマニュアルは元々1899年に医師向け手引書として刊行され、日本語版は1994年に刊行。
「正しい医療情報へのアクセスは、普遍的な人権」という思想のもと、
メーカーの冠がついてはいても、独立した事業としてMSDさんの宣伝色を一切排除しつつ、地道に更新が続けられています。
査読を担うのも、このマニュアル以外にMSDとまったく接点がない26名の医師。

普通、淡々と事実が紹介されるのみのプレスカンファレンスですが、
日本語版総監修者である福島雅典さんのスピーチは感動的でさえありました。
ざっくり言うと、当時、日本の医療がガラパゴス化することを恐れて、米国医学のEBMを導入しようという思いから
2000ページだかの膨大な翻訳プロジェクトが始まったんだそうです。
翻訳者は約50人の専門医+下訳を担った医学生たち。

考えただけでも、大変な作業です。
日本語版を出すときには、最初に手を挙げた医学系出版社が降りたそうですから、
採算性としては推して知るべし。
企業のCSR活動だから続けられるようなもので、
とても収益事業として採算をとれるようなものではないと思います。

で、今回公開された最新デジタル版は、これを一般向けに平易にした「家庭版」です。
MSDの方から、「自分の受けている治療が理解できると、モチベーションが上がる」という話がありましたが、
これはホントにそうだと共感しました。

治療って、病院の待ち時間も含めて、相当な時間とエネルギーがかかるもの。
何だかなあ、と思いながらじゃやってられないじゃないですか。
前向きな気持ちかどうかで、時間の濃さは変わるっていうか…。
「先生にお任せしているけれど、何をされているのだかよくわからない」というパターンは本人にとっても不安なはず。
わたしだったら、いやですね、絶対。

なので、自分の治療をできるかぎり理解することを、
周囲の人をふくめ、皆さんにお勧めしています。

でも、やみくもに調べると、どういうわけだか、検索上位にトンデモ医療が上がるんです。なぜか。

なので、私が信頼できる情報源としてよく使うサイトをご紹介しておきます。
赤字は一般向けコンテンツがあります。 

・MSDマニュアル(プロフェッショナル版)
http://www.msdmanuals.com/ja/プロフェッショナル

国立がん研究センター がん情報サービス
http://ganjoho.jp/public/index.html

PDQ®日本語版 がん情報サイト
http://cancerinfo.tri-kobe.org/pdq/summary/index.html

・NCCNガイドライン日本語版
https://www.tri-kobe.org/nccn/

 

いずれも質の高い確かな情報が、無料で使えるのでありがたい限りです。

今朝、「がんのご親戚に勧められる治療法を探しているのだけど、これどう思う?」と連絡をくれた知人にも、
上記の国がんのサイトを教えてあげました。

その知人は、ご親戚が現在抗がん剤の副作用の下痢に苦しみ、治療継続を躊躇しているそうで、
手あたり次第ネットで「副作用の少ない、からだにやさしいがん治療」を探したのだそうです。
そして案の定、標準治療を上回る効果が出ていない、
数名の症例だけをアピールした治療法にひっかかっていました。
知らずに勧めていたら、勧められた患者さんも、
勧めたほうにとっても不幸なことになりかねません。

MSDマニュアル、がん情報サービス、PDQともに、一般向けの情報が出ていますので、
病気のことで何か調べたいと思ったら、へたに検索して玉石混交の情報で混乱するより、
上記のサイトにまず行ってみることをお勧めします。

 

 

~おまけ~

プレスカンファレンスの会場は丸ビル。
秋の景色とクリスマスがいっぺんに見られました。

 

東京駅の駅舎はいつ見ても美しい。

 

 

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