労災の遺族補償年金の遺族の範囲 | 札幌の社労士だべさ

札幌の社労士だべさ

社労士としてこっそりつぶやきます。
本業のつぶやきは意外と少ないかも(笑)

たまには真面目な話。

 

労災で家族を亡くした人に支給される遺族補償年金について、

残された家族が妻の場合は年齢制限がないのに、

夫の場合は54歳以下だと支給を受けられないのは

不当な差別で憲法違反だとして、

妻を亡くした男性が国に処分の取り消しを求める訴えを

4月9日に東京地裁に起こしました。

 

これは私が受験生の時から

疑問に思ってました。

 

労働者である男性が業務上で亡くなった場合、

遺族である妻には年齢制限はありません。

 

一方、労働者である妻が業務上で亡くなった場合、

遺族である夫は55歳以上でなければ遺族になれませんし、

さらに60歳になるまでは支給停止になります。

 

日本国憲法第14条では

すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分

又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない

 

とあります。

 

何故、夫婦間で年齢による差があるのか?

 

遺族厚生年金も同じような制度になっており

立法当時とは違った社会情勢を取り入れる必要性を感じております。

専業主夫が救われる制度が必要と思います。

 

 

参考までに

同じような最高裁判例があります。

最三小判平成29年3月21日 〔裁判所時報1672号3頁〕 

(地公災基金大阪府支部長(市立中学校教諭)事件)

 

第一審(大阪地判平成25年11月25日・労判 1088号32頁)では

地方公務員災害補償制度は 「一種の損害賠償制度の性格を有しており,純然たる社会保障制度とは一線を画するもの」であり, 「遺族補償年金制度につき具体的にどのような立法 措置を講じるかの選択決定は,上記制度の性格を踏まえた立法府の合理的な裁量に委ねられており」, そのような立法府の裁量権を考慮しても,「そのような区別をすることに合理的な根拠が認められない場合には,当該区別は,合理的な理由のない差別として,憲法14条1項に違反する」とした上,本件区別は「女性が男性と同様に就業することが相 当困難であるため一般的な家庭モデルが専業主婦世帯であった立法当時には,一定の合理性を有していた」が,「共働き世帯が一般的な家庭モデルとなっている今日においては,…もはや立法目的との間に合理的関連性を有しない」というべきで,地公災法32条1項等は「憲法14条1項に違反する不合理な差別的取扱いとして違憲・無効である」として,不支給決定をいずれも取り消した。

 

→違憲判決ですね!

 

ところが第二審(大阪高判平成27年6月19日・ 労判1125号27頁)では,

①女性は男性に比べて労働力率が相当低いこと

→立法当時よりはるかに女性就業者数は増えている

②女性は雇用者数に占める非正規雇用の割合が男性のそれの3倍近いこと

③女性は男性と比べて賃金が著しく低いこと

④ 専業主婦の世帯数は,共働き世帯数より下回っているものの,専業主夫の世帯数よりはるかに多いこと

→だからといって専業主夫を切り捨てていいのか?でも専業主夫の定義や対象者の区別が難しいか?

 

を踏まえると,「本件区別は,合理性を欠くとはいえず」,地公災法32条1項等が本件区別を設けていることは憲法14条1項に違反しないとして, 第一審判決を取り消し,Xの請求をいずれも棄却した。

 

で、最高裁の判決では

地公災法の定める「遺族補償年金制度は,憲法 25条の趣旨を実現するために設けられた社会保障の性格を有する制度というべきところ,…男女間における生産年齢人口に占める労働力人口の割合の違い, 平均的な賃金額の格差及び一般的な雇用形態の違い等からうかがえる妻の置かれている社会的状況に鑑み,妻について一定の年齢に達していることを受給の要件としないことは,Xに対する不支給処分が行 われた当時においても合理的な理由を欠くものという ことはできない。したがって,地方公務員災害補償法32条1項ただし書及び附則7条の2第2項のうち, 死亡した職員の夫について,当該職員の死亡の当時一定の年齢に達していることを受給の要件としている部分が憲法14条1項に違反するということはできない」。

 

下記抜粋

p34-35.pdf (toben.or.jp)

 

 

ぽちっとお願いします。

↓↓↓↓↓↓↓↓


法律・法学ランキング