チッコリーニが録音したアルベニスの作品をまとめた一枚。56〜66年の演奏を収録しています。組曲「スペイン(エスパーニャ)」 作品165と組曲「イベリア」です。スペイン音楽演奏にはラローチャに代表されるスペシャリストがいます。アルベニスの他、グラナドス、ファリャ、モンポウといった音楽には古くイスパボックスへの録音から何度も録音されることになりました。特に民族的な起源を持つ舞曲は独特なリズムを持っています。ショパンのマズルカを弾くポーランド人、ウィンナ・ワルツを演奏するウィーン・フィルハーモニー管弦楽団といったものも、そうした例に上がるでしょう。ラローチャのスペイン音楽演奏も、そういった地域性への対応を持っています。ラローチャはドイツ音楽も演奏する。モーツァルトやシューマン、ラヴェルといった演奏でもスペイン音楽と同様に説得力ある演奏を展開するのです。ラローチャが学んだフランク・マーシャルはグラナドス門下でした。スペイン音楽のスペシャリストというより、全ての音楽に通底する技術を修得していったのです。スペイン音楽もまたヨーロッパの音楽としての流れとして受け止められています。ドビュッシー、ラヴェル、メシアンをはじめフランスの音楽家も注目し、印象派的な書法は相互に影響を与えることになりました。イタリアのチッコリーニもまたイタリア音楽以上に、フランス音楽、スペイン音楽のスペシャリストとなっていました。ミケランジェリ、ポリーニ、新しい世代でカシオーリ、バックスといったピアニストも地域性には固執しません。チッコリーニはフランスに定住し、69年には帰化しました。チッコリーニがフランス音楽演奏で見せるのと同様の明晰な音色で展開します。音色は明るい。アルベニスの残した音楽はほとんどがピアノ曲です。アルベニスもまたパリで学んでいます。接種した経験からもフランス音楽との親和性があるのも当然です。

 

感性の揺らぎを捉えて、ピアノ音楽として昇華する。例えばアルベニスの音楽もギター的な発想をピアノに移しての作品があります。チッコリーニの演奏は時にラローチャよりも個性的です。スペイン音楽もまた世界音楽として展開していく過程も重要です。実際、独創的なピアノ音楽は二十世紀作品の中でも独自の地位を占めています。特にフランス音楽への接近を感じとることができるでしょう。

 

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