現在、金沢の国立工芸館で開催されているのは、
“卒寿記念 人間国宝 鈴木藏の志野展”という展覧会。
今年2024年でめでたく90歳を迎える、
放送作家じゃない方の鈴木藏(おさむ)さんの最新個展です。
鈴木藏さんは、荒川豊蔵に続いて、
2人目となる「志野」における人間国宝。
31歳で陶芸家として独立して以来、
一貫して、「志野」にこだわり続けてきました。
志野について簡単に紹介しますと。
志野とは、岐阜県の東濃地方において、
桃山時代、わずか20年ほどの期間だけ生産されていたやきもの。
その後、パッタリ作られなくなり、技術も途絶えてしまいました。
そんな志野に再び脚光が浴びたのは、昭和初期のこと。
陶芸家や学者、愛好家らによって復興され、現在に至ります。
なお、志野焼は薪窯でしか焼けないとされていましたが、
鈴木藏さんはあえてガス窯での作陶にチャレンジし、独自の作風を確立しました。
その特徴は何と言っても、火を思わせる赤さにあります。
実は、志野は日本初の白いやきものと言われており、
一般的には、白やグレーがかった色のイメージがあります。
しかし、鈴木さんはガス窯で5日間近くかけて、
しっかりと焼き上げることで、唯一無二の緋色の志野を実現させているのです。
さて、本展のハイライトともいえるのが、
本展のために制作された新作の志野茶碗です。
その数、実に15点。
会場にズラリと並べられた様は、まさに圧巻です。
失礼ながら、どの志野茶碗も、
90歳近い作家の作品とは思えないくらいに、
斬新でエネルギッシュな魅力を放っていました。
ちなみに。
もし、何かの奇跡が起こって、
どれか1椀プレゼントしてもらえるとしたら(←?)、
悩みに悩んだうえで、こちらの茶碗を頂戴しようと思います(←??)。
なお、展覧会では最新作以外にも、
初期に制作された貴重な作品の数々や、
文字の力強さにも定評のある鈴木藏さんの書の作品、
さらには、陶芸家として活躍する息子さん2人の作品なども紹介されています。
個人的に興味深く感じたのは、
1990年代に制作されたという会席の器の数々。
5人様用として作られたそうで、
向付や茶碗、ぐい呑み、お皿など、
すべて5つで1セットとなっています。
それらの中には、灰皿もありました。
1人1灰皿。
思いがけないところで、時代を感じてしまいました。
ところで。
スマホで撮影した鈴木藏さんの作品の写真を、
何気なく見返していたところ、とんでもない事実が発覚しました!
なんとiPhoneは、鈴木藏さんの作品を食べ物として認識していたのです!
確かに言われてみれば、美味しそうな気がします。
こちらの《志野大皿「漂」》なんて、
まるで焼きマシュマロがたくさん載っているようです。
こちらの《志埜茶碗》にいたっては・・・・・
サーティワンアイスクリームのフレーバーのようです。
ストロベリーチーズケーキ的な。