今年2024年は、アール・ヌーヴォーの旗手として知られる、
フランスの工芸家エミール・ガレ(1846~1904)の没後120年目を迎える節目の年。
それを記念して、現在、渋谷区立松濤美術館では、
“没後120年 エミール・ガレ展 奇想のガラス作家”が開催されています。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
今なお、アール・ヌーヴォーは日本で人気が高く、
その中でも、エミール・ガレは根強いファンが多いため、
なんとなく、毎年のようにどこかでガレの展覧会が開催されているような。
それゆえ、なんとなく、個人的には、
もう観尽くした感を抱いていたのですが・・・・・
全然そんなことは無かったです!!
本展を見逃さなくて良かった。
心の底から、そう思いました。
・・・・・と言いますのも。
本展に出展されている作品は、全部で約120点(一部前後期で展示替あり)。
うち半数近くが、個人蔵のもので、そのほとんどが日本初公開とのこと。
どうりで見慣れない作品が多かったわけです。
見慣れないといえば、貴重な初期の作品も多く出展されています。
エミール・ガレ《花器(ニンフ、唐草)》 1880-1886年頃 個人蔵
エミール・ガレ《花器(狩猟図)》 1878年頃 個人蔵
実は、父の会社を引き継いだばかりのガレは、
当時の他のガラス作家、ガラス職人たちと同様に、
ヨーロッパの古典的なガラス作品や図柄をモチーフにしていたそう。
しかし、このままでは新たなガラスの世界は生まれないと感じたガレは、
古典的な作品とは決別し、植物や虫といった自然をモチーフにするようになるのです。
その時はきっと、自分の会社の職人たちに、こう宣言したのではなかろうか。
「古典的なガラス作品に、憧れるのをやめましょう」と。
かくして、ガレはさまざまな革新的な技法を駆使して、
自然をモチーフにした独自のガラス工芸の世界を確立しました。
エミール・ガレ《花器(プリムラ)》 1900年頃 個人蔵
色や文様の美しさだけでなく、造形的にも美しい。
まさしく総合芸術といったガラス作品です。
ただ、そういった美しい作品も多い一方で。
セミやタツノオトシゴが張り付いたものなど、
わりとグロテスクな造形のものも少なくありませんでした。
エミール・ガレ《花器(セミ)》 1884年頃 松江北堀美術館蔵
左)エミール・ガレ《壷(貝柄)》 1901年頃 個人蔵
右)エミール・ガレ《花器(タツノオトシゴ)》 1901~1903年頃 個人蔵
世のマダムが好みそうな(?)、お上品で美しい作品だけではなく、
むしろ男性受けしそうな、ワイルドな作品も多く制作していたのですね。
本展を通じて、ガレの意外な一面を知れた気がします。
そうそう意外といえば、ガレはガラスだけでなく、
意外にも、陶器の作品も多く制作していたようです。
それも、独創的な作品を多く制作しています。
エミール・ガレ《大杯(貝に跨るカエル、コイ))》 1883年頃 松江北堀美術館蔵
中でもインパクトが強かったのが、こちらの香炉。
エミール・ガレ《香炉(ヘラクレスオオカブト)》 1870-1878年頃 松江北堀美術館蔵
両耳の部分には、龍のような何やら、
摘まみの部分には、虎のような何やら、
足の部分は、象の顔になっています。
(↑自分で書いておいてなんですが、なぞなぞみたいです)
極めつけは、表面に描かれた絵柄。
梅らしき花と一緒に描かれているのは、ヘラクレスオオカブトとのことです。
世界観がまったくもってわかりません(笑)。
最後に。
本展を通じて知ったガレの意外な事実を、もう一つ。
どんなモチーフでも美しく仕上げる器用な印象のあるガレですが。
猫に関しては、どれも微妙な印象でした(笑)。
エミール・ガレ《植込鉢(エジプト風)》 1880~1884年頃 松江北堀美術館蔵
特に、1階ロビーに展示されていたこちらの猫。
エミール・ガレ《猫型置物》 1865~1890年代 松江北堀美術館蔵
猫というよりも、小森のおばちゃま。
口元は、『おふくろさん』を歌ってる時の森進一のようです。
┃会期:2024年4月6日(土)~6月9日(日)
┃会場:渋谷区立松濤美術館
┃https://shoto-museum.jp/exhibitions/203galle/