大吉原展 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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開幕前からSNSで大きな話題だった“大吉原展”に行ってきました。

(詳しく知りたい方は、「ネット見ろ!」です。)

 

 

 

余談ですが。

僕の記憶が確かなら、当初のポスターは、

ショッキングピンクがビジュアルカラーだったような・・・??

今のポスターは、まるで炎上でもして、

灰になってしまったかのような色合いです。

ついでに言えば、当初の展覧会タイトルは、

“大吉原展 江戸アメイヂング”だったような・・・??

サブタイトルは焼失してしまったのでしょうか。

まさに、アメイヂングです。

 

 

・・・・・と、それはさておきまして。

本展は、江戸最大の歓楽街「吉原」をテーマにしたものです。

意外にも、吉原を真っ向から取り上げた展覧会はこれが初めてなのだとか。

出展数は、実に約230点。

 

(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)

 

 

吉原で幇間(=太鼓持ち)としても活躍していた英一蝶による絵巻や、

 

英一蝶《吉原風俗図鑑》 元禄16年(1703年頃) サントリー美術館蔵

 

 

美人画の名手として競い合った喜多川歌麿と鳥文斎栄之、

それぞれが当時人気だった遊女をモデルに描いた浮世絵の数々、

 

 

 

遊女がモデルとなった明治時代の絵葉書などなど、

 

 

 

江戸から明治のものを中心に、

吉原に関する美術作品や資料が多数取り揃えられていました。

なお、それらの中には、大英博物館所蔵の、

鳥文斎栄之の《畧六花撰 喜撰法師》をはじめ、

 

鳥文斎栄之《畧六花撰 喜撰法師》
寛政8-10年(1796-1798)頃 大英博物館 ©The Trustees of the British Museum.

 

 

海外のミュージアムから里帰りを果たした貴重な作品も含まれています。

とりわけ目玉と言うべきが、喜多川歌麿による《吉原の花》です。

 

喜多川歌麿《吉原の花》

寛政5年(1793)頃 ワズワース・アテネウム美術館 

Wadsworth Atheneum Museum of Art, Hartford. The Ella Gallup Sumner and Mary Catlin Sumner Collection Fund

 

 

高さ204.5㎝、幅275cm。

歌麿の最高傑作と名高い大画面の肉筆画です。

この《吉原の花》は、箱根の岡田美術館が所蔵する《深川の雪》と、

フリーア美術館蔵の《品川の月》と併せて、「雪月花」三部作として知られています。

2017年に、「雪月花」三部作をテーマにした展覧会が、

岡田美術館で開催された際に、《吉原の花》が奇跡的に初里帰りを果たしましたが。

このたび、7年ぶりに2度目の奇跡の里帰りを果たしています。

前回、箱根で観られなかったという方は、この機会を是非お見逃しなく!

 

さらに、目玉作品といえば、重要文化財の高橋由一による《花魁》も。

 

重要文化財 高橋由一《花魁》 明治5年(1872) 東京藝術大学

 

 

本展では、《花魁》と表記されていますが、

《美人(花魁)》と表記されることもあるこちらの作品。

現代人の眼からすれば、そこまで違和感はありませんが。

モデルとなった花魁の小稲は、この絵の完成品を見て、

「妾はこんな顔ではありんせん!」と腹を立て、泣いてしまったとか。

浮世絵のように、キャラ化(?)して描いてもらえるのが当たり前だった当時。

こんな風に顔の凹凸までリアルに描かれたら、さぞかしショックだったことでしょう。

なお、最近まで修復作業が行われていたようで、

綺麗に生まれ変わった姿が、本展で初披露されています。

きっと草葉の陰で、小稲も少しは喜んでいるのではないでしょうか。

 

 

ちなみに。

展覧会全体としてのハイライトといえば、

3階展示室の一角に再現された吉原の五丁町の街並みです。

 

 

 

監視スタッフさんたちも、法被を羽織って、

吉原の雰囲気作りを演出してくれていました。

 

なお、この再現された街並みの先には、

人形師・辻村寿三郎さんをはじめとする職人たちが、

奇跡のコラボを果たした《江戸風俗人形》が展示されています。

 

人形・辻村寿三郎、建物・三浦宏、小物細工・服部一郎《江戸風俗人形》 

昭和56(1981)年 台東区立下町風俗資料館

 

 

こちらの《江戸風俗人形》と併せて、

制作者の辻村寿三郎さんの言葉がパネルで紹介されていました。

 

「悲しい女達の棲む館ではあるのだけれど、

 それを悲しく作るには、あまりにも彼女たちに惨い。

 女達にその苦しみを忘れてもらいたくて、

 絢爛に楽しくしてやるのが、彼女達へのはなむけになるだろう。

 男達ではなく、女達にだけ楽しんでもらいたい。

 復元ではなく、江戸の女達の心意気である。女の艶やかさの誇りなのだ。

 

 

吉原の制度が、現代では決して容認されるものではないのは言わずもがな。

しかし、辻村さんが仰ったように、

絢爛に楽しくしてやるのにも、大きな意味はあると思います。

この絢爛な展覧会が開催後も、大きく盛り上がることを願って。

星星

一つだけ辻村さんの言葉に反しますが、男達も楽しみましょう。

 

 

 ┃会期:2024年3月26日(火)~5月19日(日)

 ┃会場:東京藝術大学大学美術館
 ┃https://daiyoshiwara2024.jp/

 

 

 

 

 

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