一昔前の場合、ある技術を身につけるのにはそれなりの時間がかかっていました。
それは、体系的に整えられたマニュアルが存在しなかったり、ネットもなかったり(または情報が著しく少なかったり)、実際にその現場でその人を見て吸収しなければならなかったりと制約は様々だったんでしょうけど、今やそんなことは遠い昔となっています。
寿司屋の修行で「飯炊き3年握り8年」という言葉あるそうで(そして、それについて数年前に論争されてましたけど)、ある技術を身につけるだけなら実際今でもCookpadでレシピみたり、投稿された料理動画をみれば一定レベルのところまではスキップできると思います。
ただ、技術だけを身につけるならそれでよくても、実際それだけでは役に立たないことも多く、結局のところ複合的な技術力の集大成で個人としてのスキルを表現できたり、技術以外のところを占める領域というのも社会を生き抜くためには少なくありません。
経験を積んだ人を採用するのが是か非か
一般的に誰かを採用する際に持ち込まれるのは経歴書であり、そこには細かくその人の業務経験が書かれています。
そして、一般的にそこに書かれていることの数が多く、そして業務年数が長い方が「業務経験が豊富だから即戦力になるのではないか」とか「色んな現場で活躍してきたわけだから応用力や順応力があるのでは」などの理由で印象はよくなります。
まぁ、もちろん採用の中での質問事項で粗探しが始まるのでその効力も書類選考の段階までというのはあるものの、経験年数というのは数値化できるという点において良くも悪くも定量的に判断できる基準と捉えられがちです。
一方で、先に書いたように現代においてはその業務経験年数というのが必ずしもスキルレベルにマッチするというわけではないのですが、それを定量的に表現する方法もあまりありません。
1年で猛勉強してプログラミングをマスターしたとしても10年業務経験がある人と比べたら評価されにくい状況になりがちです。
エンジニアとしてならソースコードを見てもらうとか、構築したサービスを見てもらうのが手っ取り早いわけですが、それが難しい分野も多々あるでしょう。
これはその人の表現力などに依存するのもあって、ブログやSNSなどを通して活発に発言していく中で周りに伝播していって、アクセス数やフォロワーの数などといった定量的に見えるてくる場合もあります(もちろんそれが全てではないですけど)
つまりは、自分がどのレベルのスキルを持っているのかというのを業務経験年数以外に表現する術というものも必要になってきますし、逆に技術を習得する時間が短くて済む時代であるからこそその人の本当の能力を見抜く術というのも大事になってきているんだと思うわけです。
長い業務経験を経て身につくこと
例えば、10年という業務経験において身につくものというのは会社から支給される業務をこなしていった結果であって、そこには必要ない無駄な仕事というのも多分に含まれたりします。
本来自分が磨き上げたい技術とは異なる分野の仕事をする羽目になるかもしれませんし、1日の業務の内訳を見ていても面倒な事務処理に関する時間が多くを占めているケースもあります。
大学で最先端の技術を研究している教授とかでも実際にその研究に使える時間というのはほんのわずかで多くを事務処理や他の研修生の教育などに時間を割かれているというニュースをテレビで見たことがありますが、一般的な企業の中でも優秀な人に対しその人が絶対的に能力を発揮できる現場以外に回したり、時間を食いつぶしているケースはよく見かけます。
ですので、業務経験10年といっても実際のところその技術を身につけるだけに要する時間というのは1年分ぐらいなのかもしれません。
10000時間の法則というのもあるぐらいですしね。
ただ、裏を返せばその10000時間という経験値を得るためには実際にそれよりもずっと長い業務時間が必要だという現実もあったりします。
そんな無駄なことばかりやらせる会社なんて辞めてしまえ、というのはあるものの10000時間を丸々自分のスキルを身につけるためだけに時間を与えてくれる現場なんてなかなかないものです。
そして、それは会社の中だけの話でなくプライベートで起こる出来事に大きく左右されたりもします。
もう1つ言えるのは技術をマスターするのに10000時間かかるとしても、1000時間を費やしたあたりで「俺、大体のことわかったんじゃね?」的な理解した感が出てきたりもします。
企業が主催する有料研修とかの日程を見ても長くて5日程度で組まれていたりするので、1か月以上の時間を費やせば学ぶことのでき範囲というのは相当広がるでしょう。
ただ、これは結構危険な感覚でもあってその分かった感によってその技術を学ぶのを止めてしまう人も多かったりします。
1000という時間を使って技術を使いこなせるようになっても、それを正しく理解するのにはさらに相当な学習経験を費やさないといけないわけですが、そういった領域というのは最初の1000時間の中では出くわすケースも少なく問題にならないことがよくあります。
ですので残りの長い時間の経験そのものが技術を理解する期間としては大事になってくるんじゃないかと思うわけです。
実際の業務経験というのはその技術を習得した後に、どれくらいの間それを継続できたのかということなのかもしれません。
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