13.奇跡のような仕事のオファー - 友人の紹介で思わぬ仕事が舞い込む | ロジウラブックス営業雑感

ロジウラブックス営業雑感

北海道から鹿児島に移住して10年経ちました。
薩摩川内市の複合商業施設Soko Kakaka(ソーコカカカ)に古本とタロット占いの『ロジウラブックス』をオープンします。

奇跡のような仕事のオファー - 友人の紹介で思わぬ仕事が舞い込む

「……話、聞かせてくれるか?」

俺は、目の前に座るナオキの顔をじっと見つめながら言った。

タフティメソッドを実践し、「成功した未来」をスクリーンに映し続けて数日。まさか、こうして具体的な仕事のオファーが舞い込むとは思っていなかった。
 

俺は、57歳、無職、実家暮らし。

世間的に見れば「終わった人間」と言われてもおかしくない。

でも今、目の前にいるナオキは、そんな俺を「必要な人材」として見てくれている。

「本当に、俺でいいのか?」

「もちろんです! ユウスケさんの料理の腕、知ってますから。俺、昔からユウスケさんに憧れてたんですよ!」

「……そんな大層なもんじゃないさ」

俺は照れ臭そうに言いながらも、心の中でじわじわと嬉しさが広がっていくのを感じていた。
 

「具体的に、どんな店なんだ?」

「カジュアルなレストランなんですけど、料理長が突然辞めることになっちゃって、今、新しい人を探してるんです。でも、急だからなかなか良い人が見つからなくて……」

「料理長?」

「ええ、料理の総責任者ですね。メニュー開発とか仕入れの管理とか、キッチン全体のまとめ役です」

「……俺が、料理長?」
 

俺は思わず苦笑した。

「ナオキ、俺はもう57歳だぞ? しかも、しばらく飲食業から離れてたんだ。そんな俺が、いきなり料理長なんて……」

「ユウスケさんならできますよ!」

ナオキは食い気味に言った。

「昔、一緒に働いてたとき、ユウスケさんの料理のセンス、マジですごかったじゃないですか。俺、ずっと覚えてますよ。あの時、ユウスケさんが考えた新メニュー、めちゃくちゃ評判良かったですよね?」

「……そんなこともあったな」
 

確かに、20代の頃は料理に全力を注いでいた。
メニューの開発も好きだったし、お客様に喜んでもらえるのが何より嬉しかった。

だが、現実は厳しかった。

飲食業界の過酷な労働環境、安月給、長時間労働……。それが嫌になって、俺はこの世界から離れた。

それなのに、今になってまた戻るのか?
 

「運命の輪は回り続ける」

ふと、タロットカードのことを思い出した。

俺は「塔」ではなく、「運命の輪」のカードを引いた。

つまり、これは「新しい流れが生まれる」ことを示していた。

「……どうする?」

心の中の俺が問いかけてくる。

再び飲食の道に戻るのか? それとも、また別の未来を模索するのか?

俺は、静かに目を閉じた。
 

「自分の人生を再編集しろ」

あの老人の言葉が、頭の中でこだました。

料理人としての道を諦めたのは、過去の俺の選択だ。

でも今、目の前には新しい可能性がある。

「……給料はどれくらいだ?」

俺がそう聞くと、ナオキはパッと顔を明るくした。

「やってくれるんですか?」

「話だけ聞かせてくれ」

「ありがとうございます! 具体的には、月給◯◯万円で……(※詳細省略)」
 

ナオキは熱心に条件を説明してくれた。

正直、めちゃくちゃ良い待遇とは言えないが、57歳の無職に舞い込んだ話としては、悪くない。

何より、俺の腕を信じてくれる人間がいる。

「……よし、やってみるか」

俺はそう呟いた。

ナオキの顔が、子供みたいに嬉しそうに輝いた。
 

「お前の未来は、まだ何も決まっていない」

あの老人の言葉が、俺の胸の中で確信へと変わった瞬間だった。