2022年から世界中で話題となった「ChatGPT」。アメリカの「OpenAI」という人工知能の研究開発機関が開発した対話型AI(人工知能)です。GPTとは「Generative Pre-trained Transformer」の略で、「生成可能な事前学習済み変換器」を意味します。
ChatGPTの優れているところは、主に下記の点です。
〇まるで人間のように自然な対話形式
〇回答精度の高さ
〇誰でも使えるシンプルな設計
〇無料で使用が可能
では、一つ一つを見ていきましょう。
まるで人間のように自然な対話形式
ユーザーの問いかけに対して、事前学習した情報をもとに自然な日本語を生成して、まるで会話をしているかのように回答することができます。
回答精度の高さ
ChatGPTは、ネット上に存在する過去の情報を学習しています。そのため、歴史的な出来事やプログラミング、数学などの知識が回答できます。小説の続きや台本の作成といった文章生成や、テキストの要約・翻訳も可能です。そのほか、インターネット検索で調べられる内容全般について回答できます。
誰でも使えるシンプルな設計
使い方はとてもシンプル。公式サイトからアカウントを登録し、チャット画面に質問や文を入力するだけで、AIが回答を自動生成してくれます。
無料で使用が可能
OpenAIはChatGPTを無料で提供することで、多くの人々がAI技術を利用し、AIの可能性を広めることを目的としています。そのため、自社のAI技術をオープンソースとして公開し、誰でも自由に利用できるようにし、AIの発展について多くの人々が知識を深め、AI技術の倫理的な問題についても議論できる環境を作ろうとしています。
日本の教育機関での動き
さて、ChatGPTはインターネットの登場以来のインパクトと言われ、利用者が2カ月で1億人を突破するなど破竹の勢いで広まる一方、イタリアのように個人情報の保護などを理由に使用を一時禁止したり、フランスやドイツなど規制を検討する国も出ています。一方の日本は、欧米に比べると比較的寛容な姿勢ですが、大学など教育機関では使用を規制する動きもあるようです。
大学等の論文作成やレポートについては、学生本人が作成することを前提としているので、生成系AIのみを用いて作成することはできないと思います。また、AIによる文章作成には誤った情報が含まれるリスクがあり、自ら「文章を書く」ことに伴う重要な検証プロセスが欠けています。個人的にも国語科教師として学生には、時間をかけてじっくりと自分の文章を練り上げる習慣を身に付けてほしいと願っています。
ところが、「1人1台タブレット」が普及している小中学校ではどうでしょうか。一律に禁止することはしない方針で、すでにChatGPTを活用している小中学校もあります。ある問いに対して生徒が回答し、ChatGPTの回答と比較するという形で授業に採り入れている事例もあります。
また、読書感想文や作文などの宿題をChatGPTに書かせるといったケースもあります。各教育の現場では、ChatGPTに論文や作文を書かせ、子ども自身が考えることをしなくなっています。
そして、ここからが一番の課題だと思っているのが、教員側の評価です。
国語科教員から生成AIを活用した文章を評価すると、あまり良い評価を与えることはありません。
一方で、文章量だけを見ている教師がいたり、文章表現の間違いや違和感に気づけない教員がいることも事実です。
生徒から、話を聞いたところ、教員の能力を見てChatGPTを使う授業と使わない授業を区別してるそうです。生徒の意見は当然のことだと思います。自分で考えなくても一瞬で文章を作成して、その文章をしっかり評価できない教員がいて、A評価をたやすく与えている現状があるならば生成AIに頼ったほうが効率的です。そういった文章の違和感に気づけない教員に問題があるのはもちろんですが、そこを改善するのは大変難しい課題があると思います。
多くに人が「これまでの教育を続けていると、“いずれ仕事がなくなる人”を育てることになる」と警告しています。現代社会で「インターネットには危険があるから使うな」では生活が成り立たないのと同じことが、AIの分野でも起こっていくのでしょう。教育においても、対話型AIの利用を禁止するより、どう使いこなすのかを考えた方が建設的だと思います。