こんな夫婦は離婚する。新婚の時点で分かるサイン

誰しも結婚生活が末永く幸せであってほしいと願うものですが、現実には多くの夫婦が離婚を選択しています。

特に結婚後5年以内の離婚率は高く、統計によれば約3組に1組が別れを迎えていると言われています。

では幸せな結婚生活を続けるカップルと、破綻を迎えるカップルの違いはどこにあるのでしょうか?

そして、その「離婚しやすい夫婦」は新婚の時点で見抜けるのでしょうか?

実はこの問いに科学的な答えを示した有名な研究があります。

結婚や夫婦関係の研究で有名な心理学者ジョン・ゴットマンらによる長期の追跡調査です。

これによると結婚直後の新婚カップルの「話し方」や「態度」だけで、将来の離婚を高確率で予測できることが明らかになっています。

新婚時の会話に出るサインで離婚を予測する

この研究では結婚後6か月以内の新婚カップル95組にインタビューを行っています。

インタビューでは夫婦が出会ったきっかけや交際期間、結婚式、楽しかった思い出、困難な時期など、二人の関係の歴史を語ってもらいました。

また、夫婦の結婚観や、両親の結婚と自分たちの結婚を比較した意見なども尋ねています。

このインタビューの特徴は単に「話の内容」を分析するのではなく、「話し方」に注目する点にあります。

例えば、パートナーについて語る際に愛情や誇りを感じさせる表現を使うか、あるいは批判や不満を口にするか、といった語り口が評価の対象となりました。

これらのデータを基に研究者たちは夫婦の絆を数値化しました。この数値で考えたとき、離婚する可能性が高いと予測できる夫婦は7組いました。

そして5年後に確認したところ、7組のうち6組が離婚していました。全体のうち離婚したのは7組でしたから、かなりの高精度で予測できたといえるでしょう。

ちなみに9年以内に離婚した夫婦は16組でしたが、そのうち13組が事前に予測されていました。

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こんな会話をしている夫婦は離婚する

では実際のところ、離婚した夫婦は新婚の時点でどんな会話をしていたのでしょうか?

研究では新婚期の夫婦における「認知の歪み」や「コミュニケーションの特徴」が、将来の離婚リスクと密接に関連していることが示されました。

以下では特に離婚を予測する上で有効だった5つのサインについて詳しく解説します。

1. パートナーへの否定的な見方が強い

インタビュー中に批判的なコメントやネガティブな感情を多く表現した夫婦は高い確率で離婚することが確認されました。

特に、パートナーの性格や行動に対して「最初から無神経だった」「本当に頑固で扱いにくい」といった批判的な評価を繰り返すケースでは離婚率が顕著に高まりました。

また、否定的なコメントの頻度だけではなく、感情の強度も重要な指標となりました。

例えば、軽い不満の表現よりも、怒りや軽蔑を込めた発言が多い夫婦ほど、早期に関係が破綻するリスクが高いことが判明しています。

2. 「私たち」より「私」が強調される

夫婦関係における一体感は結婚の安定性を左右する重要な要素です。

研究ではインタビュー中に「私たち」「一緒に」「二人で」といった一体感を感じさせる表現を多用する夫婦は結婚生活が長続きする傾向があることが示されました。

逆に、「私が」「彼が」「彼女が」といった個人を強調する表現を多く使う夫婦では相互依存性が低いことが示唆され、関係性が脆弱であることが示されています。

例えば、「私は頑張ったけど、彼は何もしてくれなかった」といった発言はパートナーシップよりも個人の視点に偏っていることを意味し、将来的な摩擦の要因となります。

3. 過去のポジティブな出来事を思い出せない

人間関係において、ポジティブな記憶を大切にすることは関係の維持に役立つことが知られています。

研究でも、夫婦が過去の良い出来事をどれだけ鮮明に思い出し、積極的に語れるかが、結婚の安定性に影響することが示されました。

インタビューの中で、「最初にデートした日のこと」「プロポーズの瞬間」「一緒に過ごした楽しい時間」など、ポジティブなエピソードを詳細に語れる夫婦は結婚満足度が高い傾向がありました。

一方で、ネガティブな出来事ばかりを強調する夫婦は関係に対する幻滅が強く、離婚率も高くなることが確認されています。

例えば、交際時の思い出を語る際に「最初から問題ばかりだった」「ケンカが多かった」といった発言が目立つ場合、結婚生活に対する肯定的な認知が欠如している可能性があります。

4. 混乱と不安定さが目立つ

結婚生活の安定感も、離婚を予測する重要な指標です。

研究では結婚生活が「予測不能」「常に混乱している」と感じている夫婦は関係性が不安定であることが多く、結果として離婚に至る確率が高いことが判明しました。

特に、「結婚してから問題が増えた」「常に何かがうまくいかない」と感じている夫婦はストレス耐性が低く、衝突をうまく解決できない傾向が見られました。

また、経済的な不安や家庭内の役割分担など、日常的な混乱が積み重なることで、関係が徐々に悪化していくことも多いです。

5. 苦難を「乗り越えた経験」と語れない

結婚生活には困難や試練が訪れますが、重要なのはそれをどのように捉えるかという点です。

研究では困難を「二人で乗り越えた経験」として肯定的に語る夫婦は、強い絆を築く傾向があることが確認されました。

逆に、困難を「ただ耐えただけ」「うまくいかなかった」と否定的に語る夫婦では、結婚に対する満足感が低く、長期的な安定性も欠けていることがわかっています。

例えば、「あの時は本当に最悪だった」「彼女は全然助けてくれなかった」といった発言が多い夫婦は離婚率も高くなることが判明しました。

「離婚のサイン」を「改善のシグナル」と捉える

ゴットマンらの研究が示したように、夫婦がお互いをどう認知し、どう語るかが結婚生活の安定性に深く影響を与えます。

そして、この認知や態度は固定されたものではありません。

今は不適切なものだったとしても、意識的な努力や適切なコミュニケーションを通じて、夫婦関係は改善できます。

日常的に感謝の言葉を伝えたり、肯定的なフィードバックを意識する、といったシンプルな行動が夫婦関係の質を高めることが多くの研究で示されています。

また、定期的にお互いの気持ちを話し合う「感情のメンテナンス」の時間を設けることも、関係の安定性を高める鍵となります。

夫婦間の「ポジティブ感情の貯金」を意識することも重要です。

これはちょっとしたことでも日常のポジティブな心のやり取りを積み重ねることで、将来の衝突や困難に耐える力を蓄えるという考え方です。

ポジティブ感情の貯金が多ければ多いほど、トラブルが起きたときに関係性が崩れるリスクを減らせます。

会話中に「離婚のサイン」が見えても、「終わり」を示すものではなく「改善の必要性」を示すシグナルと捉えましょう。

重要なのはそのサインに気づき、夫婦で話し合い、必要な対策を講じることです。

参考文献:Carrere, S., Buehlman, K. T., Gottman, J. M., Coan, J. A., & Ruckstuhl, L. (2000). Predicting marital stability and divorce in newlywed couples.