ヴァイオリンの譜読みは難しい?ダウン・アップの記号に込められた意味を徹底解説!
ヴァイオリンを難しく感じてしまう理由の一つに、
譜読みが難しい
があると思います。
なぜなら、
楽譜に
音やリズムだけでなく
ボウイング(弓の上げ下げ)
も書いてあるから!

え、ボウイングも含めて譜読みなの?

そうですね。富士山に例えると、リズムと音を読めただけでは、頂上までだいぶ遠いです(五合目までも行ってないかも)。
ボウイングのダウンとアップは何が違う?
ヴァイオリンの弓の動かし方には、ダウンとアップの2種類あります。
ダウン | 下げ弓(自分から見て右側に動かす) |
アップ | 上げ弓(自分から見て左側に動かす) |
ダウンの記号はこれ。

アップの記号はこれ。

楽譜はこんな感じで、音符の上に記号を書きます。


ダウンとアップはなにが違うの?

その場所に応じたテンション、ほしい音色、フレージングによって、ふさわしい方を選びます。

どんな違いがあるの?

簡単に言うと、水中で息を吐くか吸うかの違いみたいなものです。

間違えたら命取りじゃん!

・・・ヴァイオリンのダウンアップを間違えても命には関係ないけど(笑)
ボウイングと呼吸はとても関係が深いんですよ。
ボウイングと呼吸は似ている?
ヴァイオリンのボウイングは、呼吸と非常によく似ています。

ダウンは息を吐く感じ、アップは息を吸う感じに似ています。

そう言えば、アップの記号は息を吸うマークと同じ形だ!
弓の動きと呼吸をリンクさせると、生き生きした演奏に近づけることができます。

時には、曲の雰囲気まで変えてしまうこともあるよ。
ヴァイオリンは息を使わなくても音が出る楽器ですが、ボウイングと呼吸は大いに関係があるんですね。
ボウイングの決め方は世界共通?
ボウイングの組み合わせは無限です!

ダウンとアップの2種類しか無いのに…汗
人によって違う所もあるし、全世界共通な所もあります。
ベートーヴェンの「運命」を例にとります。
あの有名な1楽章冒頭は、たぶん世界共通で、このボウイングなんじゃないでしょうか。

- 2小節目の1拍目(フェルマータのEs)に音楽的な重みがあるので、逆算してダウンになるように設計。
- 出だしを揃えるカギを握るのは、冒頭の8分休符の感じ方。
2楽章冒頭は、少なくとも2パターンあって(動画内でバイオリンで弾いてるのでト音記号表記にしてます)

「アウフタクトだからアップから始める」って考え方と、

「アップで始めると1拍目のCをダウンにできるが、音楽的にEs→Asの付点リズムのほうに重きを置きたいし、Cは決してアクセント気味にしたくない」等の理由から、アウフタクトをダウンで始めて一弓で弾くやり方。
4楽章の終わりも、おそらく全世界共通で全部ダウンでしょう。この曲の終わりにふさわしい感じの、重み要素が欲しいし。


言い切りと主張のカタマリみたいだね!

ためしに全部アップでやってみたら、すごいフワッとした腑抜けな雰囲気になりました。笑
ボウイングは楽譜によって違う
ボウイングは、同じ曲でも、楽譜によって違います!
有名なメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲(メンコン)の1楽章を見比べてみましょう。

Durand版は、アップ始まり(強弱記号なし)。次はAis→H→Fis→G→A→Eの6音を一弓で。

Fischer版は、ダウン始まり(強弱記号はmf)。次はAis→H→Fis→Gの4音を一弓、A→Eの2音を一弓。

Simrock版も、ダウン始まり(強弱記号はp)。次はAis→H→Fis→Gの4音を一弓、A→Eの2音を一弓。最後の1音にスタッカートあり。

すごい!こんなに違うんだね!

楽譜によっても違うし、人によっても違うから、YouTubeでいろんな人の演奏を見比べると面白いよ。
(昔の人はレコードを擦り切れるまで聴いて、指使いやボウイングまで聴き取ってたらしい・・・!!!!!)
ダウン・アップはいつ読む?ちゃんと決めたほうがいいの?
弓順のダウンアップは、
リズムや音と、同時に読みます!

えー、まず音とかリズムを片付けたいよ!

ヴァイオリンの曲は音の数が多いから、気持ちはよくわかる。
でも、ダウンアップも、リズムや音と同時に処理したほうがいいよ!
二度手間になるから。
レッスンしていると、時々こういう方に出会うんです。

あ、ボウイングですか?
まだ決めてないです。

まず音とリズムだけ読んできました!
ボウイング?あーよく見たら書いてあった。
全然見てなかった。
こういう方は、残念ながら、
ほぼ100%どこかでツマづいておられます。


なんでかな~?

おそらく、右手の動きや呼吸には意識が向いてないんじゃないかな。
結果的に毎回違う動きをすることになるから、体で覚えるサイクルにならなくて、練習が蓄積していかないんだよ。

だから全然身についた感じがしなかったのかぁ。
時間ムダにしてた・・・・・・。
ボウイングは連続した動き!1音ずつでなく、フレーズ単位で読もう
ヴァイオリンのボウイングは、単なる上下動ではなく、
上げて下げる(下げて上げる)一連の動きの繋がりです。
単体で練習せず、フレーズなど長い単位の中を止まらずに弾く練習も必要です。
先ほどのメンデルスゾーンなら

H→G→Dis→E
↓
止まる
↓
Ais→H→Fis→G→A→E
↓
止まる
E→D→C→A→D
↓
止まる
↓
C→H
ではなく。
H→G→Dis→E
↓
弓返したらすぐ
↓
Ais→H→Fis→G→A→E
↓
弓返したらすぐ
↓
E→D→C→A→D
↓
弓返したらすぐ
↓
C→H
という感じです!

文字だとややこしいね!笑
ていうか、Ais→H→Fis→G→A→Eのところ、6音も続けて弾けないよ!

ピッチがだいぶ変でもかまわないので、いっぺん続けて弾いてみることも必要です。
体の動かし方は掴めると思います。

そっかぁ。やってみる!
ヴァイオリンのダウン・アップには、呼吸や世界観を変えてしまうほどの意味があります。
最初の譜読みの時から気にかけましょう!
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ソルフェージュの先生、ヴァイオリンの先生、時々オーケストラと室内楽。
ヴァイオリン弾きのソルフェージュ講師はわりと珍しいようです。指導経験は延べ100人以上。茨城県立水戸第三高等学校音楽科、Y. A. ミュージックアカデミー等で指導にあたる。都立芸術高校・東京藝大をヴァイオリンで卒業後、東京藝大院修士ソルフェージュ専攻を修了。
「音大受験の1科目」としてのソルフェージュではなく、実際の演奏に結び付くもの、音楽をより楽しめるものを目指しています。あらゆる楽器の生徒さんに対応していますが、得意とするのはヴァイオリンをはじめとする弦楽器。ヴァイオリンを学ぶ人に必要かつ不足しがちなことを、自身の実体験をふまえてレッスンしています。
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