通りすがりの〇〇なホラーブログ

自作のオリジナル怪談がメインのブログです。短編のホラー小説や世にも奇妙な物語のような話の作品も書いていきたいです。一人で百物語ができるだけの話を作っていきたいと思います。

【通りすがりの怪談】怪其之五十九 〜月光~

怪談 ~月光~ 男は一人山奥にいた。今日は満月のはずだが、生憎空は厚い雲で覆われ一筋の月の光も見られない。足場の悪い中、男は必死にスコップを使い穴を掘り続けた。やがてポツポツと雨が降り始めたと思ったら、あっという間に大雨となった。ずぶ濡れに…

【通りすがりの怪談】怪其之五十八 〜時をかける~

怪談 ~時をかける~ 幼い頃、陸生の母はある日突然姿を消した。誰にも理由は分からず、警察にも捜索願を出したが、母が見つかることはなかった。 時は流れ、陸生は40代となっていた。ある日、ふらりと入った喫茶店で店員を見て驚愕した。その女性は失踪した…

【通りすがりの怪談】怪其之五十七 〜無限~

怪談 ~無限~ 真夏の暑い公園、蝉の鳴き声だけが異様に響き渡る。ベンチに座る男、健太の額には脂汗が滲んでいた。その目の前には、異様な二人の姿があった。一見親子のようにも見えるその二人は髪の長い女と少年。しかし、その女は真夏だというのに黒いコ…

【通りすがりの怪談】怪其之五十六 〜彼~

怪談 ~彼~ 私は、この山奥の村でたった一人の生徒として、小学校に通っていた。四年生になった時から、私は一人だった。寂しい?最初はそう思っていた。でも、すぐに慣れた。だって、私には『彼』がいたから。『彼』は、私にしか見えない友達。いつも一緒…

【通りすがりの怪談】怪其之五十五 〜事故物件~

怪談 ~事故物件~ 街中にある古びた一軒の不動産屋。その異様な雰囲気に惹きつけられ若い男は入口のガラスの扉を開けた。店の中にいたのは奥の事務机に座っている痩せこけた店長だけだった。「いらっしゃいませ」嗄れた声が、人気のない店内に響く。若い男…

【通りすがりの怪談】怪其之五十四 〜悔恨~

怪談 ~悔恨~ カウンター席しかないバーで、オカルト好きの常連客3人がアポカリプティックサウンドの真偽について議論していたが、議論が尽きたのか、次第に口数が少なくなってきた。そんな時、常連客の一人、40代くらいの身なりの良いスーツ姿で、皆から「…

【通りすがりの怪談】怪其之五十三 〜応報~

怪談 ~応報~ 周囲を見渡すと、無数の同じ顔がひしめき合い、蠢いている。奴らは皆、無表情で目的も分からず、ただひたすらに歩き続けている。その異様な光景に俺は言いようのない嫌悪感を覚えた。「俺は違う。お前らとは違うんだ」心の奥底から叫びが込み…

【通りすがりの怪談】怪其之五十二 〜鏡像~

怪談 ~鏡像~ 夜中、保晴は突然の悪寒に襲われ、目を覚ました。普段は一度眠ると朝まで起きることなどないのに、今夜は異様な気配がまとわりつき、眠気は完全に消え失せていた。喉の渇きを覚え、保晴は重い体を引きずって台所へと向かった。冷蔵庫から冷え…

【通りすがりの怪談】怪其之五十一 〜シミ~

怪談 ~シミ~ 大和の働く会社は、築40年を超える古い雑居ビルの中にあった。 時代に取り残されたようなその建物は、昼なお薄暗く、淀んだ空気が漂っている。 会社の中もまた、外観に違わず陰鬱な雰囲気を纏っていた。大和は、そんな会社の中でも特に嫌悪感…

【通りすがりの怪談】怪其之五十 〜予定外~

怪談 ~予定外~ どこだかわからない、深い霧に包まれた場所。足元はぬかるみ、冷たい空気が肌を刺す。若い男は、自分がなぜここにいるのか、全く理解できなかった。最後に覚えているのは、橋の上から川の流れを見下ろしていた時の目も眩むような高さと、そ…