- ゲーミングPC買う時、CPUクーラーは空冷と水冷、どっちがいいの?
- 空冷と水冷、冷却性能ってどのくらい違うの?
ゲーミングPCを買う時に、CPUクーラーを水冷にアップグレードしたほうがいいのかな?と悩んでしまう人もいるのではないでしょうか。
最近では簡易水冷CPUクーラーのラインナップも充実してきて、見た目のスタイリッシュさも相まって水冷の人気が出てる印象です。
その一方で、価格も安い空冷も根強い人気があります。
ゲーミングPCには、空冷と水冷、どちらが適しているのでしょうか?
本記事では、私が実際に使っているゲーミングPCでの検証結果も交えながら解説していきます。
ちなみに私は大学院で伝熱工学を専攻し、熱の伝わり方やCPUクーラーの仕組みにはかなり詳しいです。
そのあたりの専門知識も少しだけ交えつつ、初心者の方にも分かりやすく解説していきます!
結論:基本的には空冷クーラーがおすすめ
まず最初に結論から述べておくと、ゲーミングPCのCPUクーラーは基本的に空冷で問題ありません。
理由についてはこの後詳しく説明しますが、一言でまとめると冷却性能的に空冷で十分だからです。
ただ、最近ではPCメーカーやインフルエンサーが水冷を推していることもあり、水冷を選ぶ人も多くなっています。
ここからは、私がゲーミングPCに空冷クーラーをおすすめする理由について、3つ解説します。
安い空冷クーラーでもで十分な冷却性能がある
まずゲーミングPCのCPUに必要な冷却性能ですが、基本的に空冷で冷却性能は十分です。
(ただしサイドフロー型の場合です。詳しくは後述します)
CPUが100W(ワット)の電力を消費すると、電気が100Wぶんの熱に変わります。
この熱をそのままにしておくとCPUがアチアチになって、CPUの不具合や故障のもとになるので困ります。
そこでCPUクーラーがこの100Wの熱を吸い上げてCPUの外に排熱することで、CPUが冷却され、温度を適切に保ってくれるわけです。
CPUの消費電力よりもクーラーの冷却性能の方が高ければ、CPU温度を適切に保つことができます。
使用するCPUにも寄りますが、基本的にPCゲームで使用されるCPUの消費電力は私の今までの経験や検証結果から、60~140W前後です。
私のゲーミングPCではそこそこ消費電力大きめのCPUであるIntel Core i7-12700Kを使っています。
定格で125W、MAXで負荷をかけると190Wまで電気を食う、つまりそれだけ熱くなるCPUです。
CPUクーラーはDEEPCOOL製の空冷クーラーAK400(約3500円)を付けています。
このPCを作った時にCPUクーラーの冷却性能を検証しました。
CPUに175Wまで負荷が掛かってもCPU温度は75℃前後で安定することを確認しています。
(一般にCPU温度は80℃以下に抑えるのがベターです)


であれば、60~140W程度の負荷しかかからないゲーム中であれば空冷クーラーで余裕で冷やせるわけです。
実際にゲームで空冷の冷却性能を検証してみた
ここまではあくまでゲーム外で実験的に確認した時の話。
実際のゲーム中にきちんと冷えていることが重要なので、いくつかの人気ゲームで検証してみました。
- エーペックス・レジェンズ
- マーベル・ライバルズ
- モンスターハンター・ワイルズ(ベンチマーク)

いずれも高いフレームレートが求められたり、高グラフィックで処理が重いゲームです
検証に使用したPCはこんな感じ。
- CPU:Intel Core i7-12700K(定格125W、MAX190W)
- GPU:RTX 4070 Super
- RAM:32GB(DDR5-5200 16GB×2)
プレイ中のCPU消費電力と温度をARMORY CRATEでモニタリングして、結果をまとめたものが下表です。
ゲーム | プレイ画質 | CPU消費電力 | プレイ中のCPU温度 |
---|---|---|---|
CPU-Z (ベンチマーク時) | ー | 175W | 73℃ |
エーペックス・レジェンズ | フルHD(1920×1080) 200fps | 約100W | 60℃前後 |
マーベル・ライバルズ | フルHD(1920×1080) 140fps | 110~140W | 65℃~75℃ |
モンスターハンター・ワイルズ(ベンチマーク) | フルHD(1920×1080) 平均128fps(フレーム生成) | 100~130W | 60~70℃ |



これらの結果を見ても分かる通り、12世代Core i7のKモデル(消費電力の多い高性能モデル)でも十分に冷却できています。
もちろん使用するCPUによって消費電力は変化しますが、市販のゲーミングPCでよく使われるCore i7未満のグレードのIntel製CPUや、RyzenのCPU全般はIntel Core i7-12700Kより省電力です。
ほとんどのゲーミングPCは空冷クーラーで余裕で冷却できるでしょう。
空冷クーラーは「サイドフロー型」がおすすめ
ただし、ここまで解説した「空冷クーラーで十分です」というのは、「サイドフロー空冷クーラー」を使うことが前提です。
空冷クーラーには「サイドフロー型」と「トップフロー型」の2種類がありますが、冷却性能が高いのはサイドフロー型です。
トップフロー型はコンパクトですが、ヒートシンクが小さいものが多く、熱をマザーボード側に吹き戻してしまうので冷却効率が悪いんですよね…

画像引用元:株式会社サイズ

画像引用元:株式会社サイズ

ゲーミングPCにはサイドフローがおすすめです。
水冷よりも寿命が長くて管理が楽
私が空冷クーラーをおすすめする2つ目の理由は、空冷クーラーの方が圧倒的に寿命が長くて管理も楽だからです。
空冷クーラーは構造が単純で、普通に使えば5年以上長ければ10年使うこともできます。
(壊れる前にマザーボードの規格が変わるパターンの方が多い)
壊れるパーツがファンしか無いので、ファンさえ交換すれば使い続けられるのがメリットです。
一方、水冷クーラーは空冷よりも故障や劣化が多く、普通に使っていても寿命は2年とされています。
いくつか要因はありますが、よくあるのは内部の冷却液が漏れや揮発で減ってしまい冷却性能が下がること。
他にも水を循環するポンプが故障するケースもあります。
前述のとおり、冷却性能も十分ですしね。
価格が安い
空冷クーラーをおすすめする最後の理由は価格です。
空冷クーラーはちゃんとした性能のものが3000円台から買えますが、水冷クーラーはまともな品を買おうと思うと1万円からといった感じです。
前述のとおり寿命も短いため、単純にコスパの観点でもおすすめしにくいのが私の本音。
わざわざ水冷クーラーにするくらいなら、その予算をメモリ増設などに回した方がPCの使い勝手は良くなると思います。
ベンチマーク系動画の弊害
ゲーミングPC初心者の方が、「水冷クーラーにした方がいいのかな…」と迷ってしまう原因に、YouTube等に上げられているベンチマーク系動画の弊害があると私は思っています。
最近は自作PC系インフルエンサーがCPUやクーラーの性能を検証するためのベンチマーク動画などをたくさん上げていて、「このCPUは爆熱だ!」とか「空冷じゃ全然冷えない!」みたいに煽っていることも多いです。
しかしベンチマークの動画を真に受けて水冷クーラーを選ぶのは良くありません。
ベンチマークとゲームではCPUの稼働状況が全く違うからです。
ベンチマークとはCPUの性能を最大限引き出すために、常に100%やそれ以上電力を与えて長時間で働かせます。
超ブラック企業状態なわけです。
それに対してゲーム時のCPUは常に100%の状態で稼働することは基本ありません。
よほどCPU性能が不足していなければ50~80%くらいです。
ゲームのロード時など瞬間的に100%近くになることもありますが、大抵の時間は余力を残して働いています。
そのため、ベンチマークでは確かに爆熱でも、ゲームするときは空冷で十分冷えるわけです。
その証拠は、私が先ほど書いた通りですね。
そもそもベンチマークで爆熱になるのは当然なんですよ。だって限界突破して爆熱になるまで負荷をかけてるんだから。
私もベンチマークをやる側の人間なので分かりますが、ゲームに限らず、普通にPCを使っていてCPUずっと100%で働き続けるなんてことはありません。
ベンチマークの時とゲームの時ではCPUの稼働状況が全然違うことは覚えておいてください
「水冷=冷却性能が高い」の落とし穴
確かに水冷クーラーの方が空冷クーラーより冷却性能が高いことは事実です。
しかし、「水冷の方がよく冷える!」と安直に飛びつくのは早計です。
ここからは、「水冷=冷却性能が高い」の落とし穴について解説します
水冷クーラー、思われてるほど冷却性能高くない
確かに一般的には空冷クーラーよりも水冷クーラーの方がCPUはよく冷えます。
しかし、空冷よりも2倍も3倍も冷却性能が高いかというとそんなことはありません。
製品にもよりますが冷却能力はせいぜい1.3~1.5倍といったところです。
なぜかというと、そもそも水冷クーラーでも冷却性能は250W前後が限界だからです。
私がよく勉強させていただいてる清水貴裕さんの動画が分かりやすかったのでご紹介。
この動画(17:47~)では、200Wで検証した時に360mmファンを搭載したガチの水冷クーラーであってもCPU温度は85℃を超えていることが分かります。
【性能比較付き】CPUクーラーの選び方は?空冷や水冷のタイプ別に特徴や違いを解説&検証!
簡易水冷もピンキリなので冷却性能が高いものもありますが、消費電力が200Wを超えるとより品質が良いものを選んだ方がいいと思います。
空冷クーラー、実はかなり優秀
水冷クーラーがいかに冷えるかをアピールする例えとして、「熱いフライパンを冷ますとき、風を吹きかけるより水に浸した方が早く冷えるよね!」というものを耳にします。
確かにフライパンの場合はその通りなのですが、CPUクーラーの例えとしては致命的な勘違いが含まれています。
空冷クーラーは風だけでフーフーと冷やしているわけではありません。
空冷クーラーにはヒートパイプという部品が組み込まれており、これがものすごいスピードでCPUから熱を吸い上げています。
ぶっちゃけ熱の伝達速度だけ見ると水冷よりもこのヒートパイプの方が早いです。

ヒートパイプは内部に液体が封入されていて、液体がCPUの熱で気化することで大量の熱エネルギーを奪っていきます。
気化した液体がヒートパイプを通じてヒートシンク全体に拡散し、ファンがヒートシンクに風を送って冷却することで排熱が完了。
熱を運んだ気体は冷却されると液体に戻り、またCPU部分で気化して熱を奪う…を繰り返します。
これが空冷クーラーの仕組みです。
空冷クーラーも、内部では液体を使って冷却しているわけですね。
ヒートパイプは熱工学的にも非常に優秀なパーツで、パソコン以外にもいろんな分野で使われています。
これが、空冷クーラーと水冷クーラーで性能差が意外と小さい理由です。
こんな場合には水冷クーラーがおすすめ
ここまで、ゲーミングPCには空冷クーラーで十分!ということを解説してきました。
しかし、水冷クーラーは不要!というわけでもありません。
条件によっては空冷よりも水冷クーラーの方が適している場合もあります。
ここからは、水冷クーラーを選んだ方がいい場合を3つ解説します。
消費電力が多い高性能CPUを使用している場合
Intel Core i9やAMD Ryzen9などの消費電力が常に高い最上位クラスのCPUを使用している場合は空冷よりも水冷がおすすめです。
空冷クーラーと水冷クーラーの冷却性能は30%程度しか変わりませんが、水冷クーラーの真の強みは冷却水の熱容量が大きいことにあります。
水冷クーラーでは空冷よりも多くの熱エネルギーを冷却水の中に溜めておくことができ、負荷が少ないタイミングに分散して放熱できます。
つまり、水冷の方が長時間・安定的に冷却が可能なのです。
空冷のヒートシンクは熱を溜めておくことがほぼできないため、爆熱に対して短時間しか持ちこたえられません。
そのため、Core i9やRyzen 9などそもそもの定格電力が170W前後の爆熱ハイエンドCPUを使用する場合は、ある程度の時間でも爆熱に耐えられる水冷クーラーの方がいいでしょう。
PCの見た目をおしゃれにしたい場合
水冷クーラーの醍醐味はやっぱり見た目がスタイリッシュなこと。
空冷よりもCPU周りがスッキリしますし、LED装飾されているものや小さいモニターがついているモデルもあるので見た目も綺麗です。
なのでPCの見た目をおしゃれにしたい人は、寿命やメンテナンス性などのデメリットもよく考慮したうえで水冷クーラーを選ぶのも全然ありです。
オーバークロックやベンチマークをする場合
CPUに規格以上の電力を与えて性能を限界突破すること。
一度でもやった時点でCPUがメーカー保証対象外になる諸刃の剣。ただのロマン。
ドラゴンボールでいうと界王拳。
オーバークロックでは通常よりも大きな電力がCPUにかかるので、CPUによっては空冷だと冷却性能が追いつかなくなる可能性があります。
ベンチマークをやる場合もCPUに長時間高負荷がかかることでCPUの劣化を早めるリスクがあるため、水冷CPUの方がいいかもしれません。
まとめ:ほとんどのゲーミングPCは空冷クーラーで十分
- ゲーミングPCなら空冷CPUクーラーで十分
- なんとなく「冷えそう」というイメージで水冷を選ぶと後悔するかも
- Core i9やRyzen9のようなハイエンドCPUを搭載する場合は水冷クーラーがおすすめ
市販されているほとんどのゲーミングPCはミドルクラスのCPUを積んだモデルが多いです。
そのためゲーム程度の負荷であれば、サイドフロー型の空冷クーラーでも十分に冷やすことができます。
MDL.makeではCPUクーラーをカスタム可能
最近SNSで人気のPCショップ「MDL.make」では搭載CPUに応じてデフォルトの状態でも適切なCPUクーラーが搭載されているので安心です。
そもそものPC価格がかなり安いショップなので、同じ予算でより高性能なゲーミングPCを買うことができるのでおすすめのショップです。
