超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

アンテナにトンボ

 墓参りに行くと、墓石の前に、死んだ母の、下半身だけが、立っていた。
 おかしいなと思い、墓石のてっぺんのアンテナを見ると、アンテナの先に、トンボが一匹、とまっていた。
 トンボがアンテナにとまっているせいで、死んだ母を、うまく受信できていないのだとわかった。
 私は手を振って、トンボを追い払った。
 死んだ母の全身が、現れた。
 母の目は、飛び去っていくトンボを、追っていた。