大手の非破壊検査会社の新入社員、人材派遣会社から非破壊検査会社に派遣された人、小さな検査会社に入社したらそのまま大手の検査会社に派遣された人など、どんな形であれ非破壊検査の現場に仲間入りしたら、まずは作業の補助を経験します。

 

この補助をする人のことを「先手(さきて)」と呼んでいました。

「補助者」と呼ぶことはほぼ無かったですね。

「〇〇さん先手で」みたいな。

 

正直、先手の人次第で効率良く仕事が出来て早く作業が終わるのか、それとも効率が悪くて時間が掛かってペアの人をイライラさせるのかどうかが決まります。

なので、ペアの人によって多少やり方が異なるのですが、先手の主な仕事について書きます。

 

PT

  • 荷物持ち
  • 前処理
  • 物の受け渡し
  • (浸透~除去~現像~判定)
  • 記録取り、写真撮影
  • 後処理
繁忙期にしか来ないタイプの派遣会社から来た人には監視人と荷物持ちくらいしか任せないですが、それ以外の年中現場に居る人には新人さんだろうとちゃんとやってくれそうな人にはやり方を教えて目の届く範囲で一緒に作業をしていました。
判定はさすがに自分の目で見ていました。
「白かけたら置いといて~」みたいな。
 
物の受け渡しは、脚立に乗っての作業とか狭い場所での作業中に、例えば洗浄液とウエスを持った手をスッと伸ばしたら丁度良い位置に先手の人の手があって受け取ってくれて、現像剤のスプレー缶をそのまま使える向きでスッと手渡してくれるという感じで、何も言わなくても次使う物をすぐに使える状態で用意してくれる人がついてくれた時は「お!」と思いました。
そういう事の積み重ねで作業のスピードが変わってきますし、そういう気が利く人は可愛がってもらえると思います。
もちろん最初は右も左も分からないのでそんな事は出来ません。
徐々に出来るようになったら良いと思います。
 
記録取りや写真撮影は任せられる人にだけ任せていました。
PTの記録取りって、配管の溶接部なんかだと指示模様が出た場合に自分たちで指示模様が出なくなるまで削って全部合格にするパターンと、槽内なんかで「こんな指示模様が出ました!」って感じでサイズや位置の記録を取るパターンがあります。
前者だと「何番から何番、何月何日、誰々、PTOK」みたいなのを記録するだけで良いのですが、後者だと人に任せるのは怖いので自分でやるか一緒にやっていました。
もちろん任せたとしても最後は自分でチェックしました。
 

面探、原発以外のUT

  • 荷物持ち
  • 後処理
基本は1人作業なのですが、もし先手の人が居る場合はこれくらしか任せる事が無かったですね。
だって、現場に到着したら探傷者が画面を見ながらシャカシャカシャカシャカ探触子を動かすだけですから…。
それに自分で記録を取った方が早いですし。
 

原発のUT

  • 罫書き
  • 荷物持ち
  • 記録取り
  • 後処理
  • 型取り
ですかね。
罫書きは罫書き専門の日があって現場確認ついでに全員で全箇所一気に罫書きをしたり、あるいは罫書き部隊が居たり色々ですね。
原発って、原子炉周りの配管に関しては溶接部に余盛が無くて平らなんですよ。
なので、溶接のセンターから○mmの所にポンチという刻印があって、それを頼りにまずセンター出しをしてマーカーでセンターラインを引いて、あとは30°ピッチで線を引きます。
で、いざ探傷をしたら明らかにおかしくて確認したらセンターラインが10mmも20mmもズレているということがありました。
「おぉーーい!!!」っていう案件です。
 
荷物持ちは、建屋内にある資材を置いている部屋と探傷現場の間のわずかな距離のみです。
1日の物量も非常に少ないです。
その代わり記録することがいっぱいありますので、先手の人は探傷者が言った数字を復唱してどんどん記入していきます。
 
型取りというのは、型取りゲージというものを使って溶接部の形状を記録します。
その記録した形状をもとに事務所でCADを使って作図して解析するわけです。

 

UM(超音波厚さ測定)

  • 記録取り

定点肉厚測定でプラント内をひたすら歩き回って上り下りして行う場合は、予めプロットプラン(プラント内の機器配置図)を見て、測定して回る順路を決めて記録用紙をその順番に並び替えて、測定者の前を歩いて誘導します。

「次コレのココでーす」みたいな。

もし先手が2人居る場合は、1人は測定箇所の板金のネジを外して測定窓を開けたり閉めたり等をします。

 

「この範囲、○mmピッチで○方向測定」みたいのばっかりで1日に何百点とか千点超えの測定をする時なんかは、ひたすら測定者が言った数値を復唱して記録します。

そういう時は大体全部同じような値なので、1の位は言わなかったりします。

3.5だったら5しか言わなかったり、「5が7個、6、5が3個」とか言ったりもします。

まともに書いていたら追い付かない場合は、いちいち全部書かずに5と書いて矢印をビーっと引いて「ここまで5」というのが分かればそれで良いので、そんな感じで工夫が必要です。

前回値と同じだったら前回値を丸で囲うだけにするとかもしていました。

 

MT

  • 荷物持ち
  • ケーブル関係の段取り
  • 前処理
  • 検査液の補充
  • 欠陥削除、溶接部の整形
  • 記録取り、写真撮影

ちょっとしたMTの場合はポータブルバッテリーを使うこともありましたが、タンクのMTみたいにガッツリやる場合はキャプタイヤの段取りがあります。

とりあえずドラムとかに繋げば良いというものではなく「こういう風に進めていくから、あの構造物のこっち側を通そう」みたいに先を読んで段取りが出来ると完璧です。

 

配管等のちょっとしたMTの場合の前処理はワイヤーブラシでシャカシャカやる感じです。

タンクの場合の前処理は検査範囲のバフ掛けで、欠陥削除と整形は探傷者がチョークで印を書いているのでグラインダーで研削します。

オーバーグラインダーといって、削りすぎてボコッと凹まさないようにしましょう。(加減が分からなかった頃に1回やらかしました。)

 

検査液の補充はタンク等の広範囲に及ぶ検査の場合ですね。

バケツに検査液が入っていて、探傷者の近くにオイラーが複数本あるので、空になったオイラーがあったらバケツから検査液を補充します。

バケツ内の検査液は磁粉が底に沈んでいるので、オイラーを逆さまに入れてしっかりかき混ぜてから補充します。

 

写真撮影がある場合は基本的に先手の仕事です。

探傷者は左手にハンドマグナ、右手にブラックライト+オイラー又はスプレーを持っており、PTと違って両手が塞がっているので写真を撮れません。

どうしても上手く撮れない場合は代わりますが…。

 

RT

  • 荷物持ち
  • 段取り
  • フィルム又はIPの受け渡し

RTで使う物は重たいので、力持ちの人は大歓迎です。

私の場合、ガンマ線の装置の場合はよく左手に線源容器、右手にコントローラ、首に丸めた伝送管を掛けて運んでいました。

それプラス、IPを数十枚入れたベルト付きの折りコンを肩に掛けてヒーヒー言いながら階段を上り下りして運んだこともありましたね…。

だって、あの時は撮影者が腰が痛いとかで軽い物しか入っていないリュックサックしか持たずにどんどん先々行っちゃったんですもん…。

 

あと、大事な仕事としてフィルムにガムテープを貼る作業があります。

溶接部の撮影の場合は配管等にガムテープでフィルムを固定します。

そのガムテープをフィルムに貼った状態で撮影者に渡します。

ガムテープの長さとか貼る位置とか、撮影者によって色々指示があります。


ET

  • 荷物持ち
  • 段取り
  • プローブを入れたり引っ張ったり
ETの先手の経験って、私の場合は1回しか無いといっても良いでしょう。
もうね、何をどこに繋いだら良いかとかも何も分からなかったので段取りは見るだけでした。

ETが始まったら熱交換器にいっぱいある細い管にプローブを入れては抜いてをひたすらやる感じでした。

プローブを奥まで入れて「はい!」と言うと、ペアの人がスイッチを押して「はい!」と返事をくれるのでプローブを引き抜きます。
抜き切ったら「はい!」と言うと、ペアの人がスイッチを押して「はい!」と返事をくれるので、次の管にプローブを入れます。
熱交換器の大きさによるのですが、これを数十回〜数千回とひたすら繰り返します。

スイッチって何なのかというと、スイッチを押すことでデータの記録を始めたり止めたり出来るようになっています。

で、先手の人は引き抜く速度が速いだの遅いだの、チャートがプツプツ切れてるだの言われます。
何メートルも引き抜きますから、左右の手を交互に何回も持ち替えながら引き抜くので、その持ち替える時にプローブが止まっちゃうとチャートが都度途切れます。
疲れてくると引き抜く速度が遅くなってチャートが段々と長くなっていきます。

あれは練習あるのみだと思います。

まとめ

最初のうちは何も分からないし、ペアの人もそれを分かっていますから言われるがままのスタイルで良いです。

どの作業も大体は繰り返し作業ですから、要領が分かってきたら気を利かせられるようになると良いです。

気が利く先手は気に入られますし、上手くいけばベテランの人から指名されるかもしれません。

そうなれば作業の事とかコツとか裏技とか色々教えてもらえるかもしれません。

逆に気が利かない人は、場合によっては荷物持ちだけやらされた後、放置プレイを食らう可能性があります。


非破壊検査業界に入った方、頑張ってください!

先手ばっかりやるのが嫌なら資格を取りましょう!