超音波厚さ測定シリーズです。
超音波厚さ測定って、グリセリンをピッと付けて探触子をポンッと押し付けたら出来ます。
簡単なのですが、初めてやる人にとっては意外と難しいと感じることもあります。
厚さ計の使用方法
- 探触子を拭く
- 電源を入れる
- 校正
- 測定、記録(本体に記録させる場合)
探触子を真っ直ぐに当てる
真っ直ぐというか、測定箇所に対して垂直に、探触子がベタっと接地するように当てなければなりません。
手袋に付着したグリセリン、変な姿勢、手元が見えない、手元は見えるけど奥まった所に手を突っ込んで測定等、色んな要因によって意外と真っ直ぐに当てるのが難しい場面があります。
探触子の向き
厚さ測定で使用する探触子は基本的には二振動子のものを使用します。
二振動子っていうのは、超音波を出す場所と受け取る場所が分かれている探触子と言えば良いのでしょうか。
非破壊検査の現場に居る人であれば探触子をひっくり返して見てみてください。
半円が2つくっ付いたような感じで真ん中に線があると思います。
片方が超音波を出す側、もう片方が返ってきた超音波を受け取る側です。
それは良いとして、測定する時はその真ん中の線が配管や機器の周方向に向くように当てます。
長手方向や周方向が分からない人は、とりあえず配管の進む向きと探触子の真ん中の線が直行するように当てると覚えたら良いでしょう。
もし、やる機会があればなるべく径の小さい配管で実験してみると良いです。
探触子を当てる向きによって、探触子が接触する範囲が変わってエコー(波形)の立ち方が変わります。
線が周方向に向いた時にエコーが一番ピシッと立ちます。
細かい調整
・ゲイン
分厚いものなんかを測定したら表示されるエコーが低くなります。
そういう時はゲインを上げます。
まぁ、テレビで言えば音が聞こえにくいからボリュームを上げる的なイメージです。
そうするとエコーがピシッと立ちます。
ちなみにUTの試験を受ける人や斜角探傷をする人は「6dB=2倍、14dB=5倍、20dB=10倍」は覚えておいて損は無いです。
・ゲート
例えばゲインを思いっきり上げたら金属の結晶粒界から返ってくる超音波までデカく表示されて画面がブワーってなって、拾ってほしいエコーを拾ってくれず全然違う値が表示されます。
そんな時はゲートをかけて「この範囲のエコーは拾わない」という設定が出来ます。
出来る機種と出来ない機種があります。
ちなみにブワーって出る余計なエコーを「林状エコー」、板厚を測るのに必要な反対の面から返ってくるエコーを「底面エコー」と呼びます。
塗装上からの厚さ測定
現場によっては塗装を剝がさずに、塗装上から測定する場合があります。
私の経験ではタンクの屋根板の測定で、測定点の塗装を剥がす現場と剥がさない現場がありました。
通常の方法で塗装上から測定すると、超音波を出してから返ってくるまでの時間で計算した値が表示されるので、塗装の厚さの影響で本来の厚さよりも分厚く表示されてしまいます。
そんな時に使うのが、1回目の底面エコーと2回目の底面エコーの時間差から板厚を計算して表示する機能です。
「エコーtoエコー」「多重エコー方式」「B to B」「B1-B2」とか色々な呼び方があります。
それで、そのモードの切り替え方を知らないと戸惑ってしまいます。
本体のボタンも画面も機種によっては英語表記だったりします。
大体「SET UP」か何かを押して弄っていたらどうにかなります。
注意事項
非破壊検査で使用する機器は高いので大事に扱いましょう。
繁忙期なんかはレンタル会社から借りている場合もあるので尚更です。
探触子を変えたら校正し直しましょう。
何か調子が悪いとかで別のものに替えたらテストピースを使って校正し直します。
電源を消してまた使う時は校正した方が良いです。
基本ズレないのですが…。
電池持ちは良いのでプラント内をずーっと歩き回って測る場合、電源はつけっぱなしで良いです。
電源を入れる前には必ず探触子を綺麗に拭きます。
材質が変わったら校正しましょう。
C/S(炭素鋼)を測って回っていて、SUS(ステンレス鋼)を測る場合はSUSのテストピースを使って校正します。
測る材質に合わせたテストピースを使って校正します。
テストピースが無い材質のものを測る場合はC/S等で校正した状態で測って、あとは音速さえ分かれば板厚が算出できます。
グリセリンが入り込まないようにしましょう。
本体、本体とケーブルの接続部、ケーブルと探触子の接続部にグリセリンが入り込むと厄介なことになります。
探触子のケーブルを引っかけないようにしましょう。
意外と足場板の番線とか、足場のクランプとか、色んな所に引っ掛かります。
断線の原因の1つなので気を付けた方が良いです。
温度に注意しましょう。
運転中のプラントでは当たり前のように100℃、200℃、300℃…という高温のものを測定しなければなりません。
測定値の温度補正が必要になりますし、高温用のグリセリンを使っても値が出にくいですし、そうこうしているうちに探触子が超熱くなって持っていられなくなるどころか探触子へのダメージもあります。
探触子のケーブルが高温部に接触すると被覆が溶けます。
大変です…。
まとめ
簡単そうに見えるし、実際簡単なのですが、意外と最初のうちは難しかったりします。
「この値で良いのかな?」と不安になったりもします。
まぁでも、プラントの隅々まで行けたりして面白かったです。