面探というのは超音波厚さ測定の一種です。
超音波厚さ測定は超音波厚さ計を用いて「点」で測定するパターンと、超音波探傷器を用いて探触子を滑らせて「面」で測定するパターンがあります。
面で測定するのは皆「面探(めんたん)」と呼んでいました。
入社して半年くらいは「面探ってなんだよ…」って思っていました。
必要なもの
- 超音波探傷器
- 超音波厚さ計
- 温度計
- テストピース
- コンベックス
- マーキングチョーク
- グリセリンと桶(容器)
- 刷毛
- 水とウエスなど
- スクレーパー
- 図面と記録用紙
準備
・校正
超音波探傷器と超音波厚さ計をテストピースを使って校正します。
予め詰所で行っておいて、現場でも再確認します。
・罫書き
図面の指示に従って測定範囲の境界に線を引きます。
配管の直管部の場合は溶接部からいくらみたいな感じで指示されます。
エルボ部は全面なので罫書きは要らないです。
・ウエスを敷く、巻く
面探は配管や機器の測定範囲の全面にグリセリンを塗ります。
水平部だったらポタポタ垂れますし、垂直部だったら下の方まで垂れていきます。
例えば足場板は足場屋さんのものですからグリセリンでベタベタにするのは良くないです。
ステージにポタポタ垂らしたら機器や配管の中身が漏れていると勘違いされる可能性もあります。
なので、ウエスなんかを敷いたり巻いたりして垂れるグリセリンを受け止めます。
・グリセリンを塗る
刷毛を使ってグリセリンを測定範囲に塗ります。
適量塗ることが大事です。
ケチると上手く超音波が伝わらず追加で塗らないといけなくなるし、大量に塗ると結局垂れるので勿体無いです。
測定
・探触子を動かす
超音波探傷器の画面の数値と波形を見ながら探触子を動かします。
探触子は二振動子の垂直探触子というタイプのものを使います。
測定面に真っ直ぐ当ててそのまま前後とか上下に往復させつつ左右に探触子を進めていきます。
・島の作成
現場や配管等のサイズによって異なるのですが、例えば「公称厚さの2割減肉している範囲、更に2割減肉している範囲…」とか「公称厚さから2mm減肉している範囲、更に2mm減肉している範囲…」を記録しなさいって感じの決まりがあるので、もし減肉していたらその境界にチョークで線を書きます。
線で減肉範囲を囲ったものを「島」と言っていました。
前回データがあるものは前回よりも範囲広がっていたり減肉していたりすると面白かったですし、前回データの無い新規のものは宝探しみたいで楽しかったです。
・最小値、平均値、最大値を求める
「ミニ、アベ、マックス」とか言っていました。
まぁ、平均値に関しては適当というか感覚ですね…。
・最小値の場所を超音波厚さ計で測定する
ここで超音波厚さ計が登場します。
普通は超音波探傷器の値と超音波厚さ計の値の差はゼロか0.1mmズレる程度で収まります。
ところが、超音波探傷器の画面の数字だけを見ているとめっちゃズレます。
波形、感度、ゲート、閾値など色々そういうのを気にしたり調整したりしないといけません。
でも、人生初面探の時にそういう大事なことを誰も教えてくれなかったんですよねー笑
「今日、面探」って言われて、探傷器の使い方すら分からなくて「これどうやるんですか!?」から始まりましたからね笑
そして、面探って基本的に1人作業なので、何でもかんでもすぐに人には聞けません。
まぁ、でもその分「ああでもない、こうでもない」と試行錯誤が出来ました。
自分なりのやりやすいやり方を見つけて慣れてしまえば楽勝です。
・島のサイズや各位置の測定
コンベックスで島のサイズと位置、最小値の位置を測定します。
位置は例えば「溶接線の際(キワ)から○mm」「上から90°側に○mm」みたいな感じで測って現物にチョークで書きます。
・記録
現物にチョークで書いたものをそのまま記録用紙に記録するわけですが、ここで登場するのが展開図です。
配管や機器の展開図が書けないと話になりません。
展開図というのは、配管だったら配管をパカッと開いて平面にした図って言えば良いのですかね。
直管だったら長方形、エルボだったらちょっと丸みの帯びた長方形みたいなの、Tだったら十字架みたいなの、って感じの図になります。
頭の中でパカッと展開して、方位とかもパッと正しく書けるようになる必要があります。
・後処理
ウエス等を使ってグリセリンをしっかり拭き取ります。
必要に応じて水を使って綺麗に拭き取ります。
片付け
探傷器、厚さ計、探触子やケーブル等はグリセリンでベタベタになっていたり、粉塵等で汚れているので綺麗に拭きます。
グリセリンはお湯で濡らしたウエス等で拭くと綺麗に取れます。
報告書の作成
全部PCで作成する現場もあれば、手書きで清書したものを提出する現場もありました。
手書きは本当にセンスが問われます。
火傷した思い出
機器が止まっていて配管そのものは常温だったのですが、配管に巻き付いているスチームトレースという高温蒸気が通っている細い管は生きている状態で面探をしました。
作業中にスチームトレースに触れないように細心の注意を払っていたのですが、スチームトレースによってアッツアツに加熱されたグリセリンが1滴垂れて袖の中に入って腕を火傷しました。
米粒サイズの水膨れが出来ただけでしたが…。
「アッツ!」じゃなくて「痛ってぇ!」って感じでしたね。
魔法の言葉「散在」
目視検査に関する記事にも書いたような気がしますが「散在」という言葉を使っても良い現場は楽でした。
グリセリンの味
作業環境、作業姿勢によっては垂れてきたグリセリンが唇に付くことが稀にあります。
なんか甘いような…なんだろうな…。
まとめ
面探って減肉しまくっていて島がいっぱいあったりすると面倒臭いですが、なんか楽しかったです。