0から始める著作権

  このブログでは著作権について解説していきます。

超「商品流通社会」と、著作権(6)

前回では、著作物は仮想空間内でダイレクトで授受されるので、権利が権利を生む社会はネット空間の中で無限に拡大していくという話をしました。

20世紀モデルでは、著作物が化体した商品(書籍、レコード、放送番組など)が流通するので、その商品を製作・流通・販売する会社が著作権の処理を行っていて、著作権が前面に現れることはなかったのです。著作者は商品を取り扱う会社に著作権の管理を任せてしまい、会社に従属するかたちで著作物の創作を行ってきたのです。

これからは違います。物理的な商品が仮想空間内のモノに置き換わり、著作権がIT技術やAI技術によって目に見えるようになったとき、著作物の創作者と、その著作物を鑑賞する者やそれを下敷きにして新たな創作を行う者がダイレクトに繋がる、そういう世界になるのです。

 

IT技術やAI技術のような情報テクノロジーは、コンピュータ・サイエンスなどの最新科学の応用であり、極めて高度な情報化社会を実現するものです。それは情報革命と言うべきものです。

情報革命、・・・この言葉を用いた未来学者がいました。アルビン・トフラーです。彼は、今から45年前に、情報革命による情報化社会の到来を大きな視点で捉えました。

 

トフラーは、1980年に出版された著書「第三の波」(英語:The Third Wave)により、脱工業化社会として情報化社会を位置付けました。Wikipediaでは、次のように説明されています。

トフラーは本書の中で、人類はこれまで大変革の波を二度経験してきており、第一の波は農業革命(略)、第二の波は産業革命と呼ばれるものであり、これから第三の波として情報革命による脱産業社会(情報化社会)が押し寄せると唱えている。 ・・・本書の中でトフラーは、電子情報機器を装備したエレクトロニック・コテージにより在宅勤務が可能になることを予言した。また、これまでの消費者から、生産(produce)と消費(consume)が同時に行われる「プロシューマー」(prosumer)が農業革命時のように復活し、経済構造を変化させることを唱えた。

 

この解説をいま読むと、「在宅勤務」「プロシューマー」という語が光り輝いていますね。ちなみに、プロシューマー(生産消費者)はトフラーの造語であり、生産を行う消費者のことです。例えば、3Dプリンターを活用して独自に製品を作る消費者や、仮想空間内に独自のアバターを作るユーザーも、広義のプロシューマーに含まれるでしょう。彼の予言は、実際に在宅勤務をしている我々にとってとても示唆的です。

 

トフラーは、情報革命や情報社会について大局的に見ており、農業社会や工業社会と、情報化社会とを比較しました。トフラーの段階的社会モデルを図式化すると、以下のようになります。

第一の波 農業革命 → 農業社会

第二の波 産業革命 → 工業社会

第三の波 情報革命 → 情報社会

 

ここで更に踏み込んで考えてみたいことがあります。

農業革命は農業社会を実現させただけではなく、農業社会を効率よく運営する社会システムを生み出したのではないか、という視点です。

同様に、産業革命は工業社会を実現させただけではなく、工業社会を効率よく運営する社会システムを生み出したのではないか。

そして、情報革命(含:IT技術やAI技術)は、情報社会を効率よく運営する社会システムを今まさに生み出しているのではないか・・・

 

新しい技術の発達により、これまで人類は段階的な発展を遂げてきました。いま我々が目にしているIT技術、AI技術などの情報テクノロジーの急激な進歩が、ごく近い将来にどのような社会システムを生み出すことになるのか、トフラーのように大局的に考えていく必要があります。

その新しい社会は、従来の資本主義社会とは異なる超「商品流通社会」である可能性が高いです。次回以降、その全貌について考えていきましょう。

 

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