手形・小切手はいつから廃止?
「紙の手形や小切手って、まだ使われているの?」
ビジネスシーンで耳にすることはあっても、実際に目にする機会が減ってきた手形・小切手。特に個人事業主の方や中小企業の経営者の方にとっては、取引先から「手形で支払います」と言われた場合や、小切手での支払いを検討する際に、その仕組みや今後の動向について知っておくことは重要です。
この記事では、手形・小切手がいつから廃止されるのか、その背景や理由、代替手段について解説します。これを読めば、手形・小切手に関する疑問が解消され、今後の取引に役立つ知識が得られるでしょう。
手形・小切手の廃止に向けた動き
2026年度末を目途に、紙の手形・小切手の利用が全面的に禁止される方向で、現在、政府や関係機関が具体的な取り組みを進めています。これは、経済取引の効率化と、より安全な決済手段への移行を目的としたものです。
具体的には、全国銀行協会が2024年3月に、手形・小切手の取扱いを2026年度末までに終了するよう、会員銀行へ要請しました。また、主要なメガバンクも、2025年9月末までに紙の手形・小切手の発行を全面的に停止することを発表しています。
紙の手形・小切手はいつできたのか?始まりは?
手形・小切手の歴史
手形・小切手の歴史は、意外と古く、その起源は中世ヨーロッパの商取引にまで遡ります。
手形・小切手の起源
日本の手形取引の起源は、江戸時代にまで遡ることができます。特に「天下の台所」と呼ばれた大坂(現在の大阪)を中心に、商人たちが現金の代わりに手形を利用する習慣が生まれました。これは、当時、治安や金融システムが十分に整備されていなかったため、多額の現金を持ち歩くリスクを避けるための、安全な取引手段として発展しました。当時の日本経済の基盤は米であり、米の流通が経済を回す上で重要な役割を果たしていた背景も、手形による決済が広まった要因の一つと考えられます。
現代の日本における手形・小切手制度は、明治時代以降に整備されました。日本で最初の為替手形条例が制定されたのは明治15年(1882年)であり、これは手形取引を奨励するための法的根拠を与えるものでした。その3年後の明治12年(1879年)には、大阪に日本初の手形交換所である大坂交換所が設立され、その後、明治20年には東京にも手形交換所が設置され、全国各地へと広がっていきました。
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紙の手形が廃止になるメリットとデメリットは?
手形廃止のメリット
紙の手形の発行や管理には、印紙税や郵送費、保管コストなど、さまざまな費用がかかります。電子化により、これらのコストを大幅に削減できます
手作業による手形の作成や処理は、時間と手間がかかります。電子化によって、これらの事務作業を効率化し、人的ミスも減らすことができます
電子記録債権などの代替手段は、手形よりも分割や譲渡が容易なため、中小企業などの資金調達を円滑化する効果が期待できます
紙の手形は、紛失や盗難、偽造のリスクがありますが、電子化によってこれらのリスクを軽減できます
手形廃止のデメリット
手形は、中小企業にとって重要な資金調達の手段の一つでした。代替手段への移行がスムーズに進まない場合、資金繰りに影響が出る可能性があります
電子記録債権を利用するためには、新たなシステムの導入や操作習熟が必要です。特に、IT化が遅れている企業にとっては、導入コストや教育コストが負担になる場合があります
長年、手形取引を行ってきた企業にとって、その慣行を改め、新たな取引方法に慣れるまでには時間がかかることがあります
紙の小切手が廃止になるメリットとデメリットは?
小切手廃止のメリット
小切手は、現金化までに数日かかる場合がありますが、電子決済であれば、より迅速な決済が可能です
小切手の発行や管理には、手数料や保管コストがかかります。電子化により、これらのコストを削減できます
小切手は、紛失や盗難のリスクがありますが、電子決済はセキュリティが高く、これらのリスクを軽減できます
電子決済は、取引履歴がデータとして残るため、取引の透明性が向上します
小切手廃止のデメリット
電子決済に不慣れな高齢者やIT弱者にとっては、新たな決済手段への移行が難しい場合があります
子決済システムに障害が発生した場合、決済が滞る可能性があります
手形・小切手がデジタルへ?
電子記録債権(でんさい)とは
手形・小切手の代替手段として注目されているのが、「電子記録債権(でんさい)」です。
でんさいは、手形と同様の機能を持つ電子的な債権で、インターネットを通じて取引を行います。紙の手形と比べて、以下のようなメリットがあります。
- 手形の発行や振込の準備などの事務負担が軽減される
- 手形の搬送コストが削減される
- 印紙税が課税されない
- 支払手段の一本化で効率化が図れる
- 紙の手形などの現物が不要なことから盗難や紛失のリスクの低減が挙げられる
- 電子化によって郵送の遅れによる配送遅延リスクも回避できる
- 債務者と債権者のどちらも利用登録していなければ活用できない
- 貸し倒れリスクは回避できない
- 決済や譲渡など、使用のたびに各種手数料が発生する
- 小規模な取引では効果が限定的である
- 手形や売掛債権を利用する頻度が少ない企業では、導入コストに見合わないケースもある
まとめ
手形・小切手は、2026年度末を目途に廃止される方向で、現在、その代替手段への移行が進んでいます。
手形・小切手の廃止には、コスト削減や事務効率化、安全性向上などのメリットがある一方、中小企業への影響やシステム導入の負担などのデメリットも考えられます。
代替手段としては、電子記録債権(でんさい)が有力ですが、ファクタリング、ビジネスカード、電子マネー、QRコード決済など、さまざまな選択肢があります。
企業は、自社の取引状況やニーズに合わせて、最適な決済手段を選ぶことが重要です。
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参考資料