数日前から読んでいた「未来」という小説を、ようやく読み終えた。
著者は湊かなえ。
前回は同じ著者の「夜行観覧車」という小説を読んだので、引き続いて同じ著者の作品を読んでいた。
この物語は、小学生だった佐伯章子が、30歳になった章子と名乗る人物からの未来からの手紙を受け取ることから始まる。
その手紙は誰が書いたのか。
そしてなぜ書いたのか。
その手紙を起点にして、4人の異なる登場人物の視点から一つの物語を描いていく。
主人公の佐伯章子。
その章子とクラスメートだった須山亜里沙。
小学校で二人の担任だった篠宮真唯子。
そして章子の父親である佐伯良太。
複数の視点から一つの物語世界を構築するというのは「夜行観覧車」と構成的には似ている。
このような作品構成が、この著者は得意なのかもしれない。
色々な視点で描きながら、それぞれの人物同士が、そして過去と現在が徐々に繋がっていく。
あまり希望のない暗い物語ではあったのだけど、そのような物語は嫌いではなかった。
その物語の「終章」で、章子は、亜里沙と、あるテーマパークに向かう。このテーマパークは物語において重要なキーワードとなる。
その開園を待つ列に並ぶ中で章子は、自分の未来に向かって、ある行動をとる。絶望の中でも、何とか希望を見出そうとする。
それは、主人公である章子の人としての成長を描いていた。
絶望の中にある希望。
登場人物の人としての成長。
このような物語も、私は嫌いではなかった。