全国常連コーチによる高校サッカー戦術

高校サッカーまたはそれ以下の年代で使える戦術、原則について深堀しています。あくまで私個人の意見です。参考にしていただいたり、意見を頂けると幸いです。

可変システム② 1-4-2-3-1⇒1-3-4-2-1

 選手権が終わり本格的に2025年シーズンが始まりました。各地域、各都道府県では新人戦が行われ、東北大会では昨シーズンプレミアリーグEASTからプリンスリーグ東北へと降格した尚志高校が青森山田高校などを抑えて優勝を果たしました。

 静岡県では全国高校サッカー選手権大会に引き続き静岡学園高校が優勝し、茨城県では、先日の裏選手権で優勝を果たした鹿島学園高校が優勝したようです。

 3月4月から各地域、各都道府県でリーグ戦が開幕するため、それぞれのチーム急ピッチで仕上げていることかと思います。

 

 さて、今回は前回に引き続き、実際に採用した可変システムについての説明をしていきたいと思います。

 

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可変システム① 1-4-2-3-1⇒1-2-3-4-1

 

 第103回全国高校サッカー選手権大会が閉幕し、プレミアリーグEAST所属チーム同士の決勝は、群馬県前橋育英高校が千葉県の流通経済大学柏高校を下して2度目の全国制覇を達成しました。

 また、その裏では通称「裏選手権」が行われ、茨城県鹿島学園が圧倒的な力で優勝をしました。私も鹿島学園の試合を見ましたが、フィジカリティーが高いだけでなく、中盤にはU16日本代表にも選出されている選手がいて、テクニカルな部分も持ち合わせており、それでいてチーム全員がハードワークできる好チームで、2025シーズンは全国大会上位に入ってきそうなチームだなと感じました。

 

 さて、今回は昨年度導入していた可変システムの紹介をしてみようと思います。

 昨年度は多くの可変システムを導入し、あの手この手で相手チームの攻略を図っていました。

 ある試合を見た方には、「アーセナルみたいな配置にしてるね。」と言って頂きましたが、実際は1-4-2-3-1含めて4つ(配列は同じだが、人の動きが違うものを数えると5つ)の可変システムを導入しましたので、試合(相手チーム)によって、または試合の時間帯によって、選手たちの配置が変わっていました。

 あくまでシステムとは数字の羅列であり、その時々に応じて選手がずれることが必要になりますが、目安として選手たちに伝えていました。

 

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降りる式ビルドアップ

 

 12/15に行われた高円宮杯プレミアリーグ・ファイナルで、WEST王者の熊本県大津高校がEAST王者の横浜FCを3-0で倒して日本一の座を掴みました。

 また、各地でプレミアリーグプリンスリーグプレーオフが行われ、来年度のリーグ戦の明暗が別れているかと思います。

 

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【番外編】全国高校サッカー選手権大会を終えて

 

 11月18日に全国高校サッカー選手権大会の抽選会が行われ、1回戦からプレミアリーグに所属する尚志高校(福島県代表)vs東福岡高校(福岡県代表)、前橋育英高校(群馬県代表)vs米子北高校鳥取県代表)が激突することとなりました。一方で夏のインターハイ決勝カードだった昌平高校(埼玉県)や神村学園高校(鹿児島県)、前回大会ベスト4の市立船橋高校(千葉県代表)が地区予選で敗退するといったジャイアントキリングも各地で多発した大会となりました。

 

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球際・切り替え・運動量

 

 タイトルにもある『球際・切り替え・運動量』という言葉を聞いたことがありますか?

 これは毎年プロサッカー選手を輩出している、明治大学サッカー部の三原則と呼ばれるものです。

 サッカーにおいて最も重要なことは、ボールを動かす技術や戦術ではなく、ボールを奪う・奪われないこと、ボールを奪われたらすぐに切り替えて奪い返すこと、それを実現する運動量であり、その上に、技術や戦術を積み上げていく、ということなのでしょう。 

 しかし、現代サッカーにおいて、マンチェスターシティやアーセナルといった、ボールを・試合を支配して勝つことに焦点が当てられています。

 それは、以前の記事にも書いたように、2008年〜2012年のスペイン代表のポゼッションスタイルが世界を震撼させたことが非常に大きいでしょうし、今でもそれが美学である印象は拭えません。

 育成年代において、ボールを動かす技術や戦術を落とし込むべきなのか、ボールの奪い合いで負けない個人・チームを作るべきなのかが自分の中でより明確になったので、今回はそれを共有してみたいと思います。

 

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オフザボールが大事な理由

 

 私が小学校2年生の頃、『オン・ザ・ボール』と『オフ・ザ・ボール』という言葉を初めて聞きました。当時はどこまで説明してくれたかは記憶にありませんが、

 自分がボールを持っている状態=『オン・ザ・ボール』

 自分がボールを持っていない状態=『オフ・ザ・ボール』

 という概念を教えてもらったことだけは確かに覚えています。

 おそらく皆さんも、早い段階からこれらの言葉を知っているのではないでしょうか。

 

 厳密な話をすると、"on"という英単語は単語は"接している"ことを表す単語で、"off" という英単語は"離れている"ことを表す単語なので、人に対してボールが付いているか付いていないか、ということだそうです。

 

 小学生時代から聞きなれた言葉なので、特に意識をしている人はいないと思います。

 

 ですが、なぜ、わざわざ、『ボールを持っているとき』と『ボールを持っていない時』の区別すのでしょうか?

 

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可変の原則と考え方

 

 現在、様々なチームが様々な方法でビルドアップをしています。

 プレミアリーグ絶対王者であるマンチェスターシティはもちろんですが、日本代表の三苫薫選手が所属するブライトン&ホーヴ・アルビオンFCやスペインのラリーガで今シーズンの台風の目となったジローナFC、日本で一時代を築いた川崎フロンターレ、といったように、それぞれがそれぞれの方法で後方からゴール前までボールを運ぶ仕組みを構築しています。

 それらのチームに共通して言えることは、可変システムを導入していることです。

 以前の記事にも書いたように、偽サイドバックや偽センターバック、偽9番といったように、初期位置から選手の配置を変化させることで、数的優位を形成することを目的としています。

soccer-tactics.hatenablog.com

 

 私も、自分のチームで可変システムを昨年から導入していますが、常に同じ形にしているわけではなく、敵の守備ポイントを把握したうえで、可変するよう選手たちに促しています。

 

 そこで、可変をする上での原則や考え方を今日は書いてみようと思います。

 (上の記事では、昨年度実際に取り組んだ可変の仕組みを記していますので、興味がありましたら合わせてご一読ください。)

 

 

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