JRと私鉄は駅名の外国語併記の際、日本語の発音/呼称を表わさない中国漢字を使うのではなく、表音文字ピンインで表記すべきだ

駅名の外国語併記に中国漢字が使われている。しかし中国漢字は日本語の音を消してしまう。この大欠点をなくす代替策を提言する。

中編その2 日本語音を消してしまう中国漢字は駅名の外国語併記に使うべきではない

2023年11月25日 | 社会問題
第6章:中国漢字による駅名併記がもたらす残念な現実

駅名併記の現状を見てみよう。例えば東京の原宿駅では”原宿”という簡体字が使われている(この場合日本漢字と同じ)、これでは中国語話者は [ yuansu 2声と4声] としか読まない。 小田原駅は [ xiaotianyuan 3声と2声と2声] のように発音されることになり、池袋駅は [ chidai 2声と4声] と読まれてしまう。
同じ併記駅名であるラテン文字駅名とハングル駅名に比べると、この現状は見過ごせません。
なお駅という日本漢字は簡体字では 站 という字体で表記される、このような漢字字体の違いのことはここでは当テーマから外れるので、この場ではそのままにしておきます。

当ブログ前編に載せている【はじめに】の中に、ほとんどの日本人が認めるであろう大前提を掲載しています。この場でそれを再掲載しますので、確認してください。
「駅名の外国語併記の主目的は、第一に鉄道やバスに関して外国人利用者の便宜を図る、利用を助ける、ことであり、第二に外国人利用者に日本語での駅名を、正確ではなくてもいいからできるだけ知ってもらう、そのように発音してもらうことにある、と理解してもいいでしょう。」
この2つは他言語(外国語)による駅名併記をするレゾンデートル(存在理由)となっている。
なお、それでも第二の点に疑問を呈する人がいるかもしれませんので、傍証をあげておきます。


第7章:駅ナンバリング方式を考える

現在、首都圏の JRの駅には数字と記号を組み合わせた駅番号が付けてありますね。JR東の2016年4月付け公告をネットで探した。以下はそれからの引用です:
訪日外国人旅行者の方をはじめ、すべてのお客さまによりわかりやすく、安心して鉄道をご利用いただくために、首都圏エリアへ「駅ナンバリング」を導入します。多くの路線が乗り入れる駅については、それぞれの路線記号や駅番号とは別に、アルファベット3文字からなる「スリーレターコード」を表示します。 ー以上で引用終わり。

例えば新宿駅は SJK(コード)及び JY17(路線記号と駅番号) と付けてある。仮に駅名の日本語の発音が大して意味を持たないのであれば、ラテン文字などによる複数言語・文字併記を止めて、外国人向けには全てこの駅ナンバリング方式に統一した方が、すっきりし且つ効果的なはずだ。
しかし駅ナンバリング方式実施から7年近く経った今でも、複数言語併記は変わらず表示されている。

一体鉄道・バスの外国人利用者はどの程度駅ナンバリングを参照しているのだろうか?  どう考えても、外国人の間ではもっぱらラテン文字やハングル表示の駅名の方を参照・利用している割合がずっと高いだろうと推測される。駅ナンバリングだけを参照する外国人乗客もいるだろうが、少数派だと推測される。

なぜなら人は無味乾燥なこの種の数字記号よりも、馴染んだ自国の地名の調子とは異なるために覚えにくいが、それでも具体的な地名の方を好むからです。こういう好み・傾向はどの国の人たちでも変わらないとみなしてよいだろう。
だからこそ、具体的な駅名における、日本語風の発音が大切なのです。

〈ラテン文字表記の駅名を読む場合〉
ラテン文字表記を見て、各外国人はそれぞれの母語に備わったアクセント、音韻を反映しながら発音するまたは頭の中でその音を確かめるのだ。

当ブログの【序論】に書いたように、駅名に併記されたラテン文字の読まれ方においては、日本人が期待するようにはまず発音してもらえない。しかし外国人が読む際に基となる音は日本語音であることから、彼らの発音はその日本語音と全く違った別音にはならない。

日本語を知らない外国人によるラテン文字の読まれ方に関しては、当ブログ開始と同時に掲載した【序論】の中で、多くの例をあげて細かに説明してありますので、是非ご覧ください。

〈ハングル表記の駅名を読む場合〉
ハングル表記の場合はラテン文字表記の比べてより日本語音に近く発音される、なぜなら【前編】に書いたように、ハングルは音を写す点で好適な表音文字であり且つハングルを使うのはほぼ韓国・朝鮮人に限定されるからだ。ハングル駅名を様々な外国人が読むことはない。
【前編】の第1章で、「このことを是非覚えておいてください。」とIntraasia は書きました。そのことは今ここで中国漢字との比較をする際になって、より意味を持つのです。

〈中国漢字で表記の駅名を読む場合〉
一方、簡体字と繁体字で併記された(翻字した)駅名の場合はそうはなりません、つまり日本語音のようには発音されない。翻字された駅名の発音は日本語音とはかけ離れた音になってしまう場合が圧倒的に多い(中には似た音になる駅名もあるだろうが、その割合は非常に低い)。

一般論として、簡体字や繁体字で駅名を翻字することは”地名や氏名や固有名詞における原音の尊重”という原則が失われてしまうのだ。駅名併記に中国漢字の使用を決めた決定権者らは自ら原音尊重を放棄した、これは問題視すべきだと Intraasia は主張します。

〈補助的手段として駅ナンバリングの有用さ〉
なお駅ナンバリング方式が無駄だということを Intraasia は説いているのではない。駅ナンバリングは補助的手段としては良い試みだと思う。例えばスマートフォンの検索で、駅ナンバリングの記号番号を打ち込んで検索するような場合は駅ナンバリングが便利であろう。
また駅名を覚えたり識別する方法として、具体的な名称の頭に駅ナンバリングを付けて覚えるまたは区別する、といった利用法もあるだろう。例えば "JY02 Kanda" (山手線の神田駅)、 "G13 Kanda"(銀座線の神田駅)、

だから駅ナンバリングは外国人の間で今後も鉄道利用における補助手段として使われていくことでしょう。もちろん日本人利用者の中にも、駅ナンバリングを使う人たちはいることでしょう。そこで駅ナンバリングのことをもう少しだけ論じます。

〈駅ナンバリングに関して補足〉
渋谷は東京の有名地の1つですね。幾つもの路線が交差し且つ駅名は同じだが路線によって駅の場所が異なる、渋谷駅を例にする:「明日夕方6時に半蔵門線の渋谷駅の南口改札前で会いましょう」、日本人は一般にこのように言うと思われる。
しかし都内の地理や路線に慣れていないまたはその知識がごく少ない外国人の場合なら、「・・・・Z01 Shibuya の南口改札前で・・・・」と表現した方が、互いに分かり易いと考えられる。

ちなみに渋谷駅には幾つもの「駅ナンバリング」が付与されている:JY20 山手線の Shibuya駅、JA10 埼京線の Shibuya駅、JS19 湘南新宿線の Shibuya駅、Z01 半蔵門線の Shibuya駅、G01 銀座線の Shibuya駅、まだ他にもありますが省略。

なお、東京メトロや首都圏の大手私鉄でも駅ナンバリングを採用している(首都圏大手私鉄の全ての社までは調べていないので、”全て”の表現は控える)。

ところで、京阪神など他の大都市圏でもこの駅ナンバリングを取り入れたところがあるのだろうか?
こういった情報なら知っているよという方は、気が向かれましたら、当ブログのメッセージ機能を利用して情報提供していただければありがたいです。

このブログの目次をここに掲げておきます。
目次
序論 新しくブログに掲載する作品のテーマを導く
前編 はじめに、 第1章、
中編その1 第2章、 第3章、 第4章、 第5章、
中編その2 第6章、 第7章、 第8章、
中編その3 第9章、 第10章、 第11章、
後編 第12章、 第13章、 第14章、 おわりに、

2023年12月末の注記:ブログは新しい記事が先の記事の上に掲載される、つまり古い記事ほど下方になる仕組みだ。しかし当作品は1冊の本を模して書いてあるので、それでは読みにくい。そこで今回上記の目次の順序になるように、それぞれの編を入れ替える/ 移すことにしました。

第8章:駅名併記に用いる文字種は表音文字であるべきだ

傍証及び駅ナンバリングの件は終えて本題に戻ります。
駅名併記の文字についてまとめておこう。ラテン文字は日本語音を、地名によって差はあるが、かなりの程度正確にから間違われない程度に似ているまで、示すことができ、現実に外国人からそのように発音されている。

ハングルが日本語音を写す点での長所を持っていることは既に前編で述べた。

参考として:韓国語で使われるハングル文字についてまとめて書いたのは、Intraasia が主宰するツイッターの言語シリーズ【いろんな言語のこと、あれこれ】の第90回(2019年2月17日)から第110回(2019年3月9日)頃までです。

〈音を写す点では一般に表音文字が向いている〉
ラテン文字とハングルの両文字体系は表音文字である。一般に音を写すという点では、表音文字の方が表意文字より適していることは明らかだ。
表音文字の別の例として、ヒンディー語で用いられるデーヴァナーガリー文字で日本地名を書きます。便宜的にカタカナによる発音表記も付記する:
कगोशिमा カゴーシマー、ओसाका オーサーカー、 सेंदाइ センダーイ、 नेमुरो ネムロー、

上記の地名は漢字では 鹿児島、大阪、仙台、根室の順です。ヒンディー語の音韻体系に沿って時に短母音、時に長母音にしているが、日本語音をかなり忠実に写していることがおわかりでしょう。デーヴァナーガリー文字は表音文字の中でもより音を写しやすい文字だと言ってもいいだろう。

なお表音文字はすべからく他言語の音を良く写して駅名の併記に向いている、ということには必ずしもならない。【序章】ではアラビア文字を例に出してその向いていない理由を説明した。

中国漢字は簡体字も繁体字も表意文字である(むしろ表語文字と呼んだ方が良いが)。だから既述したように、日本漢字の音を写すことにはまったく不向きで不適である。
この第8章の記述内容は最重要点です、みなさん、是非注目してください。

〈表音文字のピンインは日本語音を写しやすい〉
中国漢字には”ディスコ”を”迪斯科”と表記するような音訳方式もある、発音は [ dí sī kē ]なので音がよく似ている。しかし現代中国語では意味を取って訳す方式の方が多いそうだ。例:インターネットは 网络 [ wǎngluò ]、コンピュータは 电脑 [ diànnaǒ] 、

結論的に言えば、中国語・華語による日本語地名の音訳は、”迪斯科”式の意味のない中国漢字の羅列よりも、ピンイン(拼音)を使った方がスッキリしてはるかに分かり易い。
なにせピンイン(拼音)は漢字と違って表音文字なのです。
中国語・華語話者に日本の駅名を日本語音で知ってもらう、できるだけそのように発音してもらうには、まさにピンイン(拼音)こそ好適、好都合だ。

前編や中編その1で細かに書いたことの要点をここに掲げましょう。

1. そもそもピンインは中国で半世紀以上前に考案されてその後中国全国に普及した。さらに今や東南アジアの華人界における華語教育でもピンインは圧倒的に教えられているのだ。
台湾人にとってのピンイン(拼音)はどうなのかを、学者・専門家の書籍から引用しておきます:「台湾では伝統的に発音表記にはカタカナに似た注音符号を使っていますが、近年はローマ字表記に大陸と同じピンイン方式を採用しています。」ー 白水社刊 池田巧著『中国語のしくみ』2014年発行から。

2. JRと私鉄の駅名を外国語併記するに際して、中国語・華語の場合はピンイン(拼音)を用いない手はない、いや是非使うべきである。
「ピンインは1977年以来中国語の正式なローマ字表記法として世界的に公認され」ています。

3. そこで上記の駅の例でいえば、原宿は[ ha la ju / zhu ku] 、小田原は [ ou da wa la] 、池袋は [ yi gei / kei bu ke lo] のようにピンイン(拼音)で綴っておけば、それなりに日本語音に近く発音されることになる。

4. なお中国語・華語による駅名併記において、最終的に各駅名をどのようなピンイン綴りにするかは日本人の中国語学者・専門家に決めてもらう。

「最終的に各駅名をどのようなピンイン綴りにするかは中国語専門家に決めてもらう」と書いたのは、日本語単語の音をピンインで写す(音訳する)際、多少のゆれが起きるからだ。そこで日本地名の最も適当と見なせるピンイン綴りは専門家に委ねるということです。

〈ピンイン化するのは駅名だけ〉
誤解なきように念を押しておきます。ピンイン(拼音)化するのは、駅名だけである。鉄道や駅の案内・説明文や注意書きにはもちろん、中国語・華語を用いる。 中国語・華語話者に鉄道や駅からの伝えたい情報・意図を分かってもらうためですから。

中編その3に続く




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