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「面前DV」を受けて育った子どもはどうなる?面前DVの定義と子どもへの影響

監修者:弁護士 渡辺秀行 法律事務所リベロ(東京都足立区)所長弁護士

監修者:弁護士 渡辺秀行

 法律事務所リベロ(東京都足立区)
 所長弁護士

配偶者が日常的に子どもの前で私を罵倒したり、暴力を振るっていたけれど子どもに良くない影響を与えていたのではないか・・・

このように、子どもに直接暴力や暴言を振るってはいなかったけれど、家庭内にDVモラハラがあった場合、子どもの精神への影響や将来的に及ぼす影響を心配される方が多くいらっしゃいます。

また、子どもの前で激しい喧嘩を繰り返してしまう夫婦もいるでしょう。子どもがいる前でDV・モラハラに該当する行為を行うと、それは面前DVとみなされ子どもの心身の発達に悪影響を及ぼす危険があります。

このコラムでは、面前DVの特徴や、子どもへの心身、脳への影響について解説していきます。

面前(めんぜん)DVとは

面前DVの定義

面前DVとは、子どもが親や家族間の暴力・暴言を目撃したり、耳にしたりする状況を指します。面前DVは2004年の児童虐待防止法の改正で、「心理的虐待に該当する」と認定されました。

児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力…その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。

児童虐待の防止等に関する法律 第二条

たとえ子どもが直接的な暴力を受けていなくても、面前DVは子どもの健全な成長や将来的な社会生活にまで大きな影響を及ぼすことが知られています。

面前DVの例

  • 子どもの前で暴力を振るったり、物を壊したり、人格を否定するような発言をする
  • 子どもの前で夫婦喧嘩をする

夫婦喧嘩も面前DV?

面前DVで注意したいのが、「夫婦喧嘩」も面前DVであり、心理的虐待であるということです。大人はつい「どこの家でも夫婦喧嘩くらいある」、「それだけ感情をお互いぶつけられることは仲がいいということじゃないか」と思ってしまいがちですが、子どもにとっては、大人の言い争いは非常に恐怖を感じるものです。また、恐怖心に加え、「仲良くして欲しいのに自分は何もできない」といった無力感や、「自分のせいで両親が喧嘩をしているんだ」という罪悪感など、子どもの心に大きな傷を残してしまいます。

子どもが「直接」見ていなくても面前DV?

「うちは子どもが寝た後に喧嘩するから大丈夫」「相手がキレそうになったら子どもを別室に逃がすから大丈夫」と思っていませんか?直接子どもの目の前で喧嘩や暴力が起きていなくても、面前DVに該当する場合があります。

なぜなら、子どもは寝た後でも両親が喧嘩をしていたら起きます。大きな音や大きな声には、敏感です。聞き耳をたてて、何かが割れる音や、怒鳴り声や脅し、ドアを思い切り閉める音の中、ビクビクしながら過ごしています。別室にいて、親が暴力を振るわれている間、「なんとかしたいけど怖くて出られない」と思いながら、ドアの近くで見張っています。

家で喧嘩や暴力が起こったとき、子どもがは大人が思っている以上に状況に敏感になり、観察力が鋭くなります。子どもが喧嘩や暴力について話さないからと言って、暴力に気づいていない、子どもに影響はない、と楽観視することには注意が必要です。

面前DVが子ども達に及ぼす影響は?

昨今では面前DVが子どもの心身の発達に悪影響を及ぼすことが問題視されています。では具体的にどのような影響を与えるのでしょうか?

子どもの行動に与える影響

  • 暴力で問題解決しようとする子になる
  • 怒りの感情が抑えられなくなる子になる
  • 強者が弱者を支配することは当たり前だと考えるようになる
  • 友人とうまく付き合えない

子どもの心の発達に与える影響

  • 自己肯定感の低下
  • 親が暴力を振るわれているのは自分が原因だと思ってしまう
  • 他者を信頼できなくなる
  • 安心感や安全感が育たない

面前DVを目撃すると、子どもの心に深い精神的トラウマが残ります。このトラウマは、子ども自身の「感情をコントロールする力」に影響を及ぼします。その結果、小さなことでも過剰に恐怖を感じたり、怒りや悲しみといった感情を適切に処理できなくなるケースが見られます。また、「守ってもらえなかった」「自分に存在価値がない」というような慢性的な自己否定感を抱え、生きづらさを感じることも少なくありません。

これらの苦痛は、時間が経っても解消されず、大人になってからも対人関係にストレスを抱えやすかったり、健全な人間関係を築くことが難しくなるなどの問題を引き起こすことが多いとされています。

面前DVで脳が変形する

最近の研究では、面前DVが「脳の変形」を引き起こすことが分かってきました。

面前DVが子どもの脳に及ぼす影響

  • 18歳~25歳のアメリカ人男女で、両親間のDVを長期間(平均4.1年)目撃したグループは、そうでないグループに比べて視覚野の容積が平均16%減少していた。
  • 一方、視覚野の血流は8.1%増加しており、この部分が過敏・過活動になっていることを示した。特に11~13歳の時期にDVを目撃した人においては、視覚野にもっとも影響が及ぶという結果がでた。

(友田明美,「子どもの脳を傷つける親たち」,NHK出版,2017年8月)

また、言葉によるDV(「クズ」「バカ」「ゴミ」「お前なんか生まれてこなければよかった」「お前は何をやらせてもダメだな」等)を目撃してきた人のほうが、身体的DVを目撃した人より脳のダメージが大きいことが分かっています。

暴言が子どもの脳に及ぼす影響

  • 面前DVを受けた子どもの脳は、受けてない子どもに比べ、視覚野の一部で夢や単語の認知に関係する舌状回の容積が、身体的DVの目撃は3.2%の減少に対して、言葉によるDVの目撃は19.8%の減少6倍にもなっていた。(Tomoda et al,, 2009)
  • 身体的虐待・精神的虐待とトラウマ反応との関連を調べた研究では、身体的虐待やネグレクトを受けた人よりも、親のDVを目撃し、かつ自分も言葉でののしられた人のほうが、トラウマ症状が重篤であった(Polcari,2014 :Teicher et al.,2006)。
  • 暴言による虐待を受けた子どもの脳は、スピーチや言語、コミュニケーションに重要な役割を果たす、大脳皮質の側頭葉にある「聴覚野」の一部の容積が増加しており、脳に余計な負荷がかかることが考えられる(Tomoda et al,2011)。

面前DVを受けて育った子どもはどうなるか

「支配する・支配される」関係の連鎖

子どもが家庭内で暴力を目撃すると、「強い者が弱い者を支配する」という歪んだ価値観が植え付けられる可能性があります。この考え方は、問題解決の方法として暴力を選択する行動につながりやすくなります。親の暴力行為を模倣し、自身が加害者となるリスクがある一方で、DVの被害を目撃することで「暴力を受け入れることが自然だ」という感覚を覚え、将来の被害者になる可能性も指摘されています。この連鎖を防ぐためには、早期に適切な支援を提供することが重要です。

心の傷が成人後の生活に与える影響

逆境的小児体験スコア(虐待、親の離婚、面前DV、家族のアルコール・薬物乱用、家族のうつ病・精神病、家族の服役等、逆境的な体験をスコア化したもの)が4以上の人は、0の人と比較して、

  • 喫煙・・・4倍
  • 抑うつ・・・4.6倍
  • 自殺企図・・・12.2倍
  • アルコール依存・・・7.4倍
  • 薬物依存・・・4.7倍
  • COPD(たばこの煙などの有害物質が原因の肺の病気)・・・3.9倍

という研究結果が出ています(Felitti1998;Dube2003;Anda2006)。面前DVなどの小児期のトラウマ(心の傷)は、成長後の心のトラブルや、健康にも大きな影響があることが分かっています。

面前DVを防ぐために家庭でできる対策

夫婦間でのコミュニケーション改善

面前DVを防ぐためには、夫婦間の良好なコミュニケーションが不可欠です。日常的に会話を増やし、気持ちや考えを共有することで、互いの理解を深める努力が必要です。言葉そのものに配慮するだけでなく、相手の話をよく聞き受け止める態度を持つことが大切です。特に子どもがいる場面では、感情的な言い争いは避けるべきです。

夫婦喧嘩が勃発しそうになったら、

  • 子どもの前だから・・・と一旦深呼吸する
  • 話し合いは落ち着いたときに改めて行う
  • お互い別の部屋に移り、物理的距離をおく

など気持ちを切り替える行動をとり、子どもの前での夫婦喧嘩は一時休戦するよう心がけましょう。

感情のコントロール方法やストレスの解消法を学ぶ

夫婦間の争いや暴力を未然に防ぐためには、感情のコントロール方法を学ぶことが重要です。ストレスや怒りを感じたときは、深呼吸やタイムアウト(その場を離れて冷静になる時間を作る)などできる方法から始め、冷静さを取り戻す工夫を実践してみてください。

また、定期的に運動や趣味など、自分をリフレッシュさせる時間を確保することが大切です。自分自身の心身をケアし、ストレスを溜め込まない生活習慣を築くことで、家庭内でイライラをぶつけることを回避できます。

面前DVから子どもを守る公的支援と対策

行政の支援サービスと相談窓口

DV加害者は子どもに面前DVをしている自覚はありません。そしてそのような問題を家庭内だけで解決することは非常に難しいと思います。
『子どもが面前DVの被害に遭っているかも・・・』と思ったらお住まいの地域の児童相談所やDV相談窓口へご相談することをお勧めします。

名称ダイヤル詳細
児童相談所 相談窓口189(いちはやく)お近くの児童相談所へ繋がります。
通告・相談は匿名でも可能。内容に関する秘密は守られます。24時間繋がります。
DV相談ナビ#8008(はれれば)各都道府県の配偶者暴力相談支援センターへ自動転送されます。
DV相談+(プラス)
0120-279-889(つなぐはやく)電話・メールは24時間受付。深夜に暴力が起こった時にも電話できます。

相談することをためらわないで

DV被害に遭っている方は、子どもに影響が出ていることに気づきながらも、「相談しても助けてもらえないのではないか」「子どもを守れない自分が責められるのではないか」「自分に落ち度があると言われるのではないか」と、不安や苦しみを抱えてしまいがちです。

相談するのにはとても勇気がいりますが、別居や離婚までは考えていなくても、まずは相談してみることをおすすめします。別居を強要されたり、いきなり児童相談所がやって来る、ということはありません。誰もあなたを責めません。電話相談は、匿名でもできますので、個人情報がバレることもありません。

状況が変わらなくても、第三者に自分の苦しみを打ち明けることで、あなたの心は軽くなり、落ち着きを取り戻すことができると思います。どうしたら良いのか分からなくなっても、一人で考えたり悩む必要はありません。相談すれば、きっと支援員が一緒に考えてくれますので、まずは相談窓口に相談してみてください。

法律事務所リベロの
3つの強み

  • 当事務所はお受けする離婚事件の7、8割がDVモラハラ事件です。豊富なノウハウと実績があります。
  • 離婚事件に携わり17年の所長弁護士が、ご相談からアフターフォローまで責任を持って対応いたします。
  • 遠方の方・お子様がいて来所が難しい方はお電話でのご相談も対応いたします。
    ※ご予約の上、有料相談になります。また、ご相談内容によってはご来所をお願いする場合がございます。くわしくはこちら

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受付時間:平日9:00~17:00

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法律事務所リベロ

所長 弁護士 渡辺秀行(東京弁護士会)

特許事務所にて 特許出願、中間処理等に従事したのち、平成17年旧司法試験合格。
平成19年広島弁護士会に登録し、山下江法律事務所に入所。
平成23年地元北千住にて独立、法律事務所リベロを設立。


弁護士として約17年にわたり、「DV・モラハラ事件」に積極的に携わっており、「離婚」等の家事事件を得意分野としている。極真空手歴約20年。
悩んでいる被害者の方に「自分の人生を生きてほしい」という思いから、DVモラハラ加害者との対峙にも決して怯まない「知識・経験」と「武道の精神」で依頼者を全力でサポートすることを心がけています。離婚・DV・モラハラでお悩みの方はお気軽にご相談ください。

法律事務所リベロ

所長 弁護士 渡辺秀行

  • 東京弁護士会所属
  • 慶応大学出身
  • 平成17年旧司法試験合格

弁護士として約17年にわたり、「DV・モラハラ事件」に積極的に携わっており、「離婚」等の家事事件を得意分野としている。極真空手歴約20年。
悩んでいる被害者の方に「自分の人生を生きてほしい」という思いから、DVモラハラ加害者との対峙にも決して怯まない「知識・経験」と「武道の精神」で依頼者を全力でサポートすることを心がけています。

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