第4話 ラベルからワインを見極める。「新世界ワイン」と「旧世界ワイン」の選び方

さてさて、第4回ワイン講座まできました。

少しずつ、ワインに対する興味も上がって来たのではないでしょうか?

ワインの豊かな風味と洗練された香りは、何世紀にもわたり、人々を魅了し続けています。

ワインは私たちの食事を豊かにし、特別な瞬間を祝うための伝統的な飲み物でもあります。

そして、この魔法の液体は、その生産地域によって大きく異なる特性と風味を持っています。

しかし、その歴ゆえ、数多くのワインが世の中に出回っており、パッと見ただけではそれがどんなワインか判断することができません。

ということで、第4回では、ワインボトルのラベルでどんなワインかを判断する方法を伝授します!

ぜひご覧ください。

目次

ワインの歴史

ワインは、紀元前の古代文明から存在しており、古代エジプト、ギリシャ、ローマで広く消費されました。

古代のワインは、一般的に甘みがあり、水で薄められて飲まれることが一般的でした。

しかし、中世になると、ヨーロッパでワイン生産が発展し、様々なブドウ品種とスタイルが確立されました。

そして、15世紀にはじまった大航海時代に、アメリカ大陸や南アフリカ、オーストラリアなどにヨーロッパから多くに人々が移住し、それに伴いワインの産地も新たな地域へと広がっていきました。

『旧世界ワイン』と『新世界ワイン』の選び方

ワインは、その土地でワイン造りが始まった時代によって、『新世界』と『旧世界』に分けて語られる事があります。

それぞれのワインに特徴があり、どちらも素晴らしくておいしいワインがたくさんあります。

まずは、新世界と旧世界について見ていきましょう。

新世界とは

古くからワイン造りが行われてきたヨーロッパを中心とした国々に対して、大航海時代にワインが伝わり、新しくワイン造りを始めた国の事が、こう呼ばれます。ニューワールドとも言ったりします。

主な国としては、アメリカ、チリ、アルゼンチン、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ等で、日本もこちらに含まれます。

新世界と呼ばれる国々

・チリ
チリは、新世界の代表です。16世紀半ば、スペインのカトリック伝道者がブドウ栽培を持ち込み、1818年に独立してからは、経済の発展と共にワインも発展しました。その後20世紀末頃から単一の品種を使った、分かりやすい味わいで成功しました。現在は、複雑味のある高品質のワインを目指す生産者も増えており、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シャルドネを使い、恵まれた日照を生かした力強いワインが多く造られています。カルメネールという固有の品種も使っています

アメリカ合衆国
アメリカ合衆国は、カリフォルニア州、ワシントン州、オレゴン州などでワインを生産しています。カリフォルニアのナパ・バレーは、カベルネ・ソーヴィニョンやシャルドネの高品質なワインで有名です。アメリカ合衆国では、多くの地域で多様なブドウ品種が栽培されており、新しいスタイルのワインが生まれています

オーストラリア
オーストラリアは、シラーズ、シャルドネ、カベルネ・ソーヴィニョンなど、国際的に評価の高い品種でワインを生産しています。特にバリ・クリーク・ワインズのシラーズは、世界的に有名です。

ニュージーランド
ニュージーランドは、ソーヴィニョン・ブランやピノ・ノワールなど、爽やかでフルーティーなホワイトワインとレッドワインで知られています。マールボロ地域のソーヴィニョン・ブランは、高品質なワインの代表です。

南アフリカ
南アフリカでは、シラーズやチェンバリンなどの品種でワインが生産されており、多くの新しいワイナリーが急速に台頭しています。南アフリカワインはリーズナブルな価格帯でも高品質なものが多いため、国際市場で人気です。

・日本
日本は、以前はあまり個性が感じられず、薄い味わいのものが多かったのですが、造り手の努力と技術革新により、この30年余りで品質は飛躍的に向上してきており、甲州やマスカットベリーAなどの日本独自のブドウをはじめ、国際品種からも高品質のワインが造られています。

どの業界でも新参者への風当たりという問題がありますが、ワインの世界も同じで、以前は新世界で造られたワインは、レベルが低く見られていました。

しかし、現在では素晴らしいいワインも沢山造られています。

また、新世界のワインは歴史が浅い分、古い伝統にとらわれることなく、新しい技術をどんどん取り入れ、単一のブドウ品種で造ることが多く、ラベルは生産地域やブドウ品種などが分かりやすいものが多いです。

味の特徴:新世界ワイン
  • 果実味の強調
    新世界ワインは、しばしば果実味を強調し、熟している間はフレッシュでフルーティーな味わいを持ちます。
    これは、暖かい気候で育ったブドウから生まれる特性になります。
  • 飲みやすさ
    新世界ワインは、一般的に飲みやすく、若いうちから楽しむことができます。
    熟成を待たずに楽しむことができるため、ワイン初心者にも適しています。

旧世界とは

旧世界というのは、古くからワイン造りを行っているヨーロッパの国々です。

主な国としては、フランス、イタリア、ドイツなどが挙げられます。

旧世界と呼ばれる国々

・フランス
フランスは旧世界の代表です。生産量の多さもそうですが、北部を除くほぼ全域でブドウが栽培され、様々な種類のワインが造られています。特に赤ワインの有名な産地ブルゴーニュ地方とボルドー地方に加え、シャンパーニュ地方のスパークリングワインは群を抜いて有名です。フランスの国内でも各産地によって、昔から使われている品種に違いがあり、それぞれの個性を守る為、ワイン法によって統制がされています。その為、産地・格付け等で品質が推測できる利点と、法に縛られて保守的になってしまう短所もあります。

・イタリア
また、イタリアも旧世界の代表格です。1861年に統一されるまで、いくつもの国家に分かれていた為、州ごとに様々な個性を見せてくれるのが、イタリアの醍醐味だと思います。そんなイタリアで最も有名なのは、トスカーナ地方のキアンティと、ピエモンテ地方のバローロ、バルバレスコというワインでしょうか。イタリアもフランスと同じくワイン法が整備されていますが、産地の規制や格付けの枠を外れたものにも優れたワインが数多く存在する為、格付け、ラベルを見ても品質が分からない所が難しいのですが、面白さでもあるようです。


旧世界では、複数のブドウ品種を使ったブレンドワインが多いため、品種でワインを選ぶことは難しいです。

これらの地域は、長い歴史とワイン製造の伝統を持っており、長い歴史を経た、食事に合わせやすい落ち着いたスタイルのワインが広く知れ渡っています。

一方で、歴史の中で培われてきたルールがかえって足かせになっている、という短所もあります。

味の特徴:旧世界ワイン
  • 地味な複雑性
    旧世界ワインは、しばしば繊細で複雑な風味を持ち、年数を重ねることで熟成が進むことがあります。
    例えば、ボルドーのワインは熟成に適しており、時間が経つほど風味が深まります。
  • テロワールの影響
    旧世界のワインは、土壌や気候の違いによって異なるテロワール(土地の特性)を反映しています。
    これが、同じブドウ品種でも地域ごとに異なる味わいを生み出す要因です。
    中には、一度は耳にしたことがあるような「ロマネ・コンティ」のような超高級ワインもあります。

『新世界ワイン』と『旧世界ワイン』のラベルの違い

新世界ワインと旧世界ワインは、生産地域、気候、土壌、ワイン製造のスタイルなど多くの要因に影響を受けて異なる味わいを持っています。

その違いは、ボトルのラベルにも表れ、ラベルによってある程度それがどんなワインか見極めることができます。

ここからは、その見極め方を紹介しましょう。

ラベルの見極め方:旧新世界ワイン編

新世界は「品種」を見極める

まずは、簡単なチリ、カルフォルニア、日本など、新世界のワインから見ていきましょう。

新世界のワインは、説明してきた通り、「単一」品種のワインが多いです。

品種の名前がボトルにはっきりと書いていることが多いので、それを見て好みのワインを探すことができます。

好みのワインの見つけ方は、上の記事を参考にしてみてください!

好みのワインが見つけられたら、あとはどれだけ値段をかけるかによって、より「わかりやすくておいしい」ワインに出会える確率が上がります。

ワイン初心者はこれさえ覚えてればOKです。

ラベルの見極め方:旧世界ワイン編

旧世界は「産地」を見極める

次は、新世界よりも少しややこしい旧世界のワインです。

旧世界ワインは「品種」よりも「産地」が重要で、ワイン自体に、野球の1軍、2軍、3軍のような階級も存在しています。

代表的なのが、フランスワインの「A O C」という階級制度です。

一見、難しそうな言葉ですが、大したことはありません。

AOCとは「どの土地の条件をクリアしているか」という証明書で、土地の範囲が狭くなるほどワインとしての格が上がり、品質も値段も上がります。

AOCについてちょっと詳しく見る。

「AOC」とはフランスで施行されている「原産地統制呼称制度」の総称で、簡単に言えば、国から正式にその土地へ「お墨付き」が与えられる、といったものです。
ワイン大国フランスでは各地域でそれぞれ独自の栽培方法、製造方法を取っていて、それがそれぞれのワインの個性になっています。「AOC」ではそれらを知的財産として国で登録し、保護する目的があります。
日本で言うなら、「夕張メロン」や「近江牛」などがそれにあたります。「夕張メロン」とは夕張市で生産されたメロンのみを指すものですし、「近江牛」は滋賀県内で最も長く飼育された黒毛和種しか指しません。それと同じものがフランスではワインにも適用されているというわけです。
これによって生産者が守られるのはもちろんのこと、私たち消費者も簡単に本物を見極められるというメリットがあります。

代表的なAOCワイン

画像素材:pixabay

AOCワインの代表格として有名なのがシャンパンです。シャンパンとは「シャンパーニュ地方でのみ造られるスパークリングワイン」のこと。シャンパーニュ地方では昔から独自の製法で発泡ワインを造っていて、他のスパークリングワインと差別化するために、「シャンパン」という呼称を国で登録しているのです。

またボルドーやブルゴーニュなど有名なワイン産地ではこの「AOC制度」を使用している地域も多く、「シャブリ」や「メドック」などもそれに当てはまります。

AOCは「Appellation(あぺらしおん) d’Origine(どりじーぬ) Controlee(こんとろーれ)」の略で、

このAOCの「O」の「どりじーぬ」の部分に、地名が入ってきます。

例えば、Appellation(あぺらしおん) Bordeaux(ぼるどー) Controlee(こんとろーれ)

という場合は、ボルドー地方全体で栽培されているぶどうを集めて、造っているということになります。

そして、Appellation(あぺらしおん) Medoc(めどっく) Controlee(こんとろーれ)

という場合は、ボルドー地方の中にある、メッドク地区に限定したぶどうをつかったワインになり、より高級なものになります。

さらに、Appellation(あぺらしおん) Margaux(まるごー) Controlee(こんとろーれ)

という場合は、ボルドー地方の中にある、メドック地区のさらにその中にある、マルゴー村に限定したぶどうをつかったワインになり、さらに高級なものになります。

これを日本人向けにわかりやすく例えると、「Appellation 近畿地方 Controlee」よりも「Appellation 大阪府 Controlee」よりも「Appellation 大阪市 Controlee」という方が、さらにいうと「Appellation 難波 Controlee」という方が高級になります。

このように、「より地域が限定されている方が格上」という考え方が、フランスワインの価値を、ラベルで見分ける基本になります。

ちなみに、最近は「AOC」はEUの新しい規定によって、「AOP(Appellation D’origine Protégée=あぺらしおん どりじーぬ ぷろてじぇ)」に徐々に移行し、AOCとAOPが混在していますが基本的な考え方は変わりません。

ラベル表記にルールは無い。

ここまで、ワインラベルの見極め方を説明してきましたが、実はラベル表記にルールはありません。

AppellationもControleeもProtégéeも書いておらず、ただ地域名だけが記名されているワインもありますし、ラベルのどこにも品種名や地域名が書かれていない「謎のワイン」も高確率で現れます。

では、そういうワインに遭遇したらどうしたらいいのか?

答えは、店頭POPを見るか、店員さんに聞いてください。(わからないもんは分かりません。笑)

もしくは、「謎のワイン」を見かけても放っておくことです。

わざわざ、冒険に出る必要はないですからね。

もし買うなら、得体の知れない物への好奇心や、おしゃれなワインボトルを「ジャケ買い」で楽しんでみるのもいいかもしれません。

また、ラベルには「Grand vin de ほにゃほにゃ」と記載されていることもありますが、これはただのキャッチコピーなので気にする必要はありません。

ちなみに、「Grand vin de Bordeaux(グラン バン ド ボルドー)」は「ボルドーの偉大なワイン」 という意味ですが、偉大と自称しているからと言って確実においしい訳ではありません。

新世界ワインも旧世界ワインもどっちも良い!

新世界ワインと旧世界ワインは、それぞれ異なる歴史と味わいを持つ魅力的なワインのカテゴリーです。

旧世界は伝統とテロワールに根ざし、複雑で繊細なワインを提供します。

一方、新世界は革新的で果実味豊かなワインを生み出し、アプローチ可能なスタイルで魅了します。

どちらのカテゴリーも、ワイン愛好家にとって探求する価値があるものであり、食事や特別な機会に楽しむ素晴らしい選択肢です。

新世界と旧世界のワインの違いを探求し、自分の好みを見つける旅に出かけてみましょう。

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