がん末期のおうちかいご 後編

 前編はこちら。後編は4分くらいです。

 ある日、医師からがんであることを告げられ、そこからがん患者とその家族としての生活が始まります。治ったと言っても過言ではなくなるような場合もあれば、告知からわずか数日で亡くなってしまう場合もあります。ですから、一口にがん患者の介護といっても、内容は千差万別です。

 がん末期。医師から余命を告げられたり、もう治療はできないなどと言われれば、否が応でも「残された時間」ということを考えてしまうでしょう。人生の清算をする時期となってくると思います。
 訪問看護師osenbeは、できるだけ思い残すことなく、やり残しもなく、充実感をもって最期の時を迎えてほしいと思っています。患者本人と介護するご家族の双方に。では、おうちかいごはどうしたらよいでしょうか。

 それは、ありきたりですが、できること、やりたいこと、やらなければいけないことはすぐやる。周囲の人は、そのお手伝いをする。会いたい人がいれば会うようにし、伝えたいことは今、伝える。聴きたい音楽、食べたいもの、飲みたいもの、見たいもの、思い出話。できることはやりましょう。一つ一つ実際の例を挙げてお伝えしたいですが、それは長くなるのでいずれ改めて。

 また、当たり前といえばそうなんですが、お顔拭きをしたり歯磨きをしたり、普段のお世話を続けることも大事です。もちろん無理のない範囲で。その中で、表情を見たり、話をしたり。人は誰でも死ぬわけですが、その最終局面を共に過ごす、同じ時間を過ごす、ということも、とても大事なことです。もし、全身の体拭きや着替え、陰部洗浄など、大変なことがあれば、それは専門のケアスタッフに託しましょう。プロに任せる、というのも大事なおうちかいごですよね。ご家族の方の話だと、リップサービスもあると思いますが、がん末期の利用者さんは、介護や医療サービスのスタッフが来てくれることを楽しみにしてくれていることも多いです。
 ケアスタッフはそれを、漫然とした作業にならないように心がけてほしいです。最後の大事な時間を共有している感覚です。家族であれば、当然そういう感覚になると思いますが、ヘルパーさんや看護師などのケアスタッフは、意識的に「貴重な時間を共有させていただいてありがとうございます」という気持ちを持つと、良いケアになると思います。osenbeの押しつけっぽいですが。最後のその人らしさに触れてください。リハビリも大事です。リハビリのイメージがosenbeのおうちかいごとずれていると「?」かもしれません。

 このようにして過ごすと、精神的に豊かな状態で最期の時を迎えられるように感じています。そして、遺族の方も貴重な時間を過ごせた、と感じられることが多いと思います。ただ、そのためには肉体的な苦痛があってはいけません。痛い、苦しい、だるい、などです。医療者、特に医師はそういった苦痛症状を緩和することに注力します。現在は、がんの終末期にのみ使える薬などもあり、かなり症状緩和が図れるようになってきています。訪問看護師やケアマネジャーは苦痛の少ないケア方法を知っているかもしれません。我慢せず、どんどん訴えてください。訴えてくれないと、緩和も図りにくくなってしまいます。どんどん訴えることが肝要です。ご家族はその様子をしっかり医療者へお伝えください。そこがおうちかいごの大事なところです。

 また、末期の時期だとわかったら、できるだけ早く本人を交えた遺産相続のことなどを進めてください。縁起でもないことだし、今は考えたくもない、という気持ちはよくわかります。が、本人がいつ正常な判断ができなくなるような意識状態になるかはわかりません。突然そのようになってしまうこともあります。特に現役世代の方が末期の場合。
 葬儀の準備もしてください。具体的には、葬儀会社の選定とプランの目星です。葬儀もその時がきたときに慌てて問い合わせをすると、時間がないことがたたって、納得できる判断ができなかったり、考えていたような葬儀ができなかったりと、後悔が残ることにもなりかねません。その時(死亡診断書を書いてもらった時)が来たら、業者に亡くなったことを伝えて、あとはこれまでのお願い通りでお願いします、と言えるような状態にできているといいです。経験のある訪問看護師はタイミングを見て、このような話もすると思います。不快に思わず、考えていただければ幸いです。
 (訪問看護は制度上、基本的にお看取りの対応をもって終了となります。なので、お墓や葬儀のことなどについては対応することはなく、詳しくありません。葬儀会社の方にアドバイスをいただくのがよいと思います)

 がん患者さんのおうちかいごについては、他にもいろいろお伝えしたいことがあるので、順次書いていこうと思います。

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