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旅のはじまり
こんなに何も決めずに海外に行くのは初めてだ。
決まっているのは、往復の飛行機の時間と、泊まる宿だけ。
変な先入観もなく、身も心も軽い。
行き当たりばったり、直感のままに動き回ることになるだろう。
出発前の儀式、近所の神社にお参りしてから空港へ向かう。
昼の便なので少しゆっくりできる。
空港から市街地への行き方くらいは今のうちに調べておこう。
エアポートエクスプレスが運行しており、20分くらいで香港中心地まで行くことができるらしい。
チケットはオンラインで買った方が少し安そう。
klookというアプリで往復のチケットを予約。
あとは現地でその都度調べればどこでも行けるだろう(多分)。
今回乗るのは香港エクスプレス航空。
香港のLCC。
機体の紫のロゴ(フォント)がポップで目立つ。
快晴 |
予約する際に、一番後ろの窓側の席を確保していた。
シートピッチ広めで窮屈さは感じない。
隣は香港人と思われる若い男子2人組。
日本人は極めて少なかったと思う。
機内放送のCAさんの英語が全然聞き取れない。
単純に私の英語力の問題もあるが、香港英語は独特な訛りでクセ強め。
これは現地でも英語の聞き取りに苦戦しそうだ。
福岡からはちょうど4時間ほど。
『深夜特急』第1巻、香港・マカオ編を読み返す。
あくまでも短期滞在のつもりだったのに、著者がカジノにどっぷりのめり込んでいき通い詰める様子が描かれている。
そこが特に印象深い。
「大」か「小」、またはゾロ目、どれが出るかを当てるというただそれだけの賭け事だが、ディーラーの手口の法則性を見出だしたり他の客の賭け方を鋭く観察したりと、内容が深いのだ。
自分も確実にのめり込んでしまいそうな気がするので、興味本位でもカジノに行くのはやめておこう。
博打には才能が必要だ。
そもそも現金は4万円分しか持ってきていないから、賭けたら一瞬で擦って終わるだろう。
そんなことを考えていたら香港に到着していた。
入国ではない
何も質問されることなく、あっさり入国。
いや、「入境」。
イミグレの看板も、漢字表記は「入境」だ。
スタンプではなく、小さな紙切れ1枚がパスポートに挟まれて戻ってきた。
これは出境する時にも必要な紙とのことなのでなくさないように注意。
エアポートエクスプレスの乗り場に向かう。
改札が存在せず、そのまま乗り込めてしまった。
空港から乗る場合、チケットの提示が必要なのは降車時だけということか。
車内はガラガラで清潔、快適。
それなりに距離があるはずだが、乗るのはたった2駅だったのでとても速い。
QRチケットをかざして無事に改札から出ることができた。
まずやるべきは現地通貨の調達。
駅の両替ショップで1万円分を香港ドル(HKD)に。
レートはかなり微妙だったが、今ここで香港ドルを入手しておかないと「オクトパスカード」を買うことができないから仕方ない。
オクトパスカード(八達通)とは、交通や買い物、飲食などの支払いに利用できるチャージ式のICカード。
香港で最も幅を利かせているカードと言える。
入手はマストだ。
キャッシュオンリーの窓口で200HKDを支払う。
うち150HKDを使用でき、50HKDはデポジットとなる。
駅の券売機やコンビニなどの店でチャージできる。
ルート検索で宿の近くまで行くバスの番号を調べ、バスターミナルに向かう。
暗闇のターミナル、明かりの付いていないバスが何台も並び、人もまばらで不安になってくる。
こんなときは焦らず、周りの様子や看板などをよく観察する。
数名並んで待機している場所に近付いてみると、ちょうど乗りたいバスの番号だったのでその後ろに続く。
香港のバスは基本的に2階建てだ。
かなり背が高く、存在感の圧が強い。
今回はすぐに降りるので1階で様子見。
運賃の支払いは、前のドアから乗るときにオクトパスカードをかざせばOK。
もちろん現金や、VISAタッチなども可。
カードリーダーに表示されている金額が自動的に支払われる。
乗る路線によって運賃はまちまちなのだろう。
降りるときにはブザーを押して知らせる仕組みになっている。
メインストリートでバスを降り、宿に向かう。
雑居ビルに泊まる
ここは「彌敦道:ネイザンロード」、香港で一番有名な大通りだ。
そんな市街地ど真ん中に位置する宿が、今回の滞在拠点となる。
地図が示す場所(ビル)の前まで来たが、外観から宿の存在を認知できるものは一切見当たらない。
とりあえず入り口らしきところから中に入ってみると、絵に描いたようなアジアの雑居ビルという感じであまりのカオスさに思わず笑えてくる。
会社、宿、店… 一般の住居もあるのだろうか。
壁には大量の看板とポスト。
この雑多なビルの中のどこかに泊まるのか…
強烈やな…
これは面白くなってきた。
しばらく彷徨ってようやく宿の看板を発見し、5階に受付があるという手がかりを得た。
今にも壊れそうなボロッボロのエレベーターに乗ったはいいものの、偶数階にしか停まらないらしく、6階で降りて(でも階段が見当たらず)また地上に戻る。
奇数階に停まるエレベーターを探し当て、どうにか受付に辿り着く。
難易度高し…!!
とても優しそうなオーナーに連れられて、9階の部屋に案内してもらう。
エレベーターに乗ってきたおばちゃんと顔見知りらしく、狭小空間で広東語弾丸トークが繰り広げられる。
何の話題について喋っていたのかは不明。
![]() |
宿の入り口 良い味出してんなぁ… |
ビルの1室のドアを開けると、そこにはさらにいくつかの部屋があった。
ほかの宿泊者が泊まっているのだろう。
オーナーから簡単な説明を受ける。
やはり英語はほとんど聞き取れなかったが、シャワーを使う時は湯沸かしボタンを押して10分待つこと、チェックアウト時はルームキーを部屋に置いたまま出て行ってOK、という特に重要そうな部分はわかったので多分大丈夫。
部屋は必要最低限、水回りは清潔。
デスク(椅子なし)と壁面備え付けドライヤー。
窓は一応付いているようだが、外が見えないようになっているので開けるのはやめておこう。
やたらとでかいベッドが部屋のほとんどを占めており、wifiはサクサク繋がる。
あんな雑居ビルの1室とは思えないほど(失礼)、私にとっては十分快適に過ごせそうな部屋だ。
妖しい光と熱気
バックパックを置き、夜の街へと繰り出す。
煌めく電光看板がおぼろげにサイバーパンク感を醸し出し、漢字表記がより一層妖しさを引き立たせる。
非現実、異世界…?
しかし生活感、人間臭さも感じるという独特な雰囲気。
これが香港…
人の往来に揉まれながら、流れるようにネイザンロードを北上。
途中で東側の通りに入ってみる。
一帯が夜市(ナイトマーケット)となっており、これもまたいかにも香港といった雰囲気だ。
バッタもんブランドや著作権侵害キャラクターなど、買えば税関で没収されると思われるグッズが所狭しと並ぶ。
そんな露店が軒を連ね、横目でちらちら見ながら通り抜ける。
この辺りは道が碁盤の目状になっていて、まっすぐでわかりやすい。
まずは定番から
今回の旅の最大の楽しみである食。(今回の、というか毎回)
香港での1食目として、点心の有名店の行列に並ぶ。
マレーシアやシンガポールでも食べてきたが、ここは本場なので期待大。
QRコードでメニューを読み込む。
写真を見ながら、蒸し海老餃子と小籠包を注文。
それぞれ小さな蒸籠で蒸されて出てくる。
あまりにも、もちもちすぎる…
そのままでも十分だが、酢醤油のようなタレに付けて食べるとさらに美味しさが増す。
隣のカップル(相席気まずい)が食べていた料理が気になったのでそれも追加注文。
きっと、隣の奴同じの頼んでるじゃんと思われていたことだろう。
しっかり一人で食べきった。
すでに20時を回っている。
店の明かりや電光看板が眩しい。
本屋に寄ったり、食料品店に寄ったり、気軽に入れそうな店にはとりあえず入ってみる。
まっすぐ帰るのがもったいない。
海外で、夜に出歩いていて怖いと感じなかったのは香港くらいかもしれない。
もちろん気を抜いてはいけないが、治安は良い方だと思う。
周囲から発せられている空気に鋭さを感じないというか、尖っていないというか、この感覚ははじめてだ。
本当に独特。
だから外を歩くのが楽しい。
宿に戻り、明日どこに行くかをざっくり考える。
この時間が一番わくわくしているかもしれない。
そして、もうすでに香港という街をかなり好きになっている。
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