人事労務の「作法」

企業の人事労務課題を使用者側の立場で解決します

048.人事制度の構築(12) 相対評価か絶対評価か

評価ランク決定の方式として、相対評価とすべきか絶対評価とすべきかという選択の問題は常に悩むところでしょう。

相対評価とは、能力や成果について、他者との比較で評価ランクを決定する評価方式です。例えば、上位5%の人がSS、続く20%の人がS、続く50%の人がA、続く20%の人がB、最後の5%の人がCという具合に。

相対評価では、評価ランクの分布を予め設定しておく事で、昇給や賞与の人件費の予算管理がしやすくなります。しかし、所属する組織によっては、好成績な社員が多いか少ないかの違いで当人の評価が左右されることもあります。

一方絶対評価は、能力や成果の基準に対して、個人の達成レベルで評価ランクを決定する評価方式です。例えば、営業部門であれば目標売上に対して達成率が150%以上であればSS、120%以上150%未満はSという具合に。

絶対評価では、個人の頑張りに対して他の人に影響されずに評価に反映できるというメリットがあります。しかし、皆目標を達成すれば、低い評価を付ける要素が無くなり、結果的には人件費が高騰してきます。

日本企業の人事制度で能力主義が主流だった頃は、評価方式は相対評価が中心でした。能力の高さを売上のように客観的に数値で表すことは難しく、他人との比較で序列付けする相対評価が適していたのです。その後成果主義が台頭するにつれ、目標管理制度が盛んとなり、期首に設定した目標に対する達成度を評価軸とすることで、絶対評価に切り替えるケースが増えてきました。

しかし、絶対評価も万全ではありません。成果主義の弊害の一つである、高い目標を掲げなくなったことで、評価が中央に偏った結果となります。

このように、相対評価または絶対評価のいずれかに集約しても上手くいきません。つまりは、二択の問題ではなく両者を併用する事を考えましょう。

一般的に、評価は直属の上司である課長などが一次評価を行い、その後で部長などが二次評価を行う仕組みになっています。一人ひとりの頑張りを近くで見ている課長が一次評価を絶対評価で行い、二次評価で部長が全社的な視点で相対評価を行う流れが最も自然で公正な評価になると筆者は考えます。

 

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