前回までで、賃金制度のうちの月例給与部分についての解説は一通り完了しました。今回は賃金制度を構成する二つ目の賃金である賞与について考えます。
賞与とは、一般的に毎月の月例給与とは別に、年2~3回に分けて支給される臨時の賃金のことで、支給基準は企業によって大きく違います。「ボーナス」や「期末手当」などと呼ばれることもあります。
賞与は月例給与と違って法律上支給が義務付けられているものではありませんが、支給基準の定め方次第では社員のモチベーションを喚起することが期待できますので、ぜひとも上手に活用したいものです。
先ず、一般的な賞与の支給時期としては、夏(6月)と冬(12月)に支給されることが多いでしょう。この時期には、商業施設などでバーゲンセールを実施したり、金融機関が優遇金利の商品を提供したりと賞与支給を意識した商戦が繰り広げられます。夏、冬の他に、3月決算の業績次第では期末に追加で支給されることもあります。
次に支給基準としては、基本給に支給月数を乗じて算出されるケースが多いでしょう。基本給は原則として上位等級者ほど高く、同じ等級であっても号俸が上位の者ほど高くなりますので、月例給与の差がそのまま賞与の額に影響することになります。
元々賞与は、月例給与だけでは賄いきれない生活上の出費の補填の目的や、年間の人件費の調整弁として賃金の後払い目的の意味がありました。しかし、このような消極的な目的では、業績悪化により支給額が減った際に不満が大きくなります。特に成績が優秀な社員ほどその傾向が強くなります。
そこで、賞与の支給総額は増やさずに、その配分の仕方を変えることで積極的な支給目的とし、企業の業績と個人の成績を重視した制度でモチベーションの喚起につなげる仕組みとしましょう。仮に業績悪化で支給額が減ったとしても、成績優秀な社員には最大限の配慮をした支給であることが明確に示せるようにすることでモチベーションを維持します。
月例給与の額は職能等級や役割等級に応じて機械的に決定する仕組みになりがちですが、賞与についてはより柔軟な仕組みとすることが可能です。
次回以降、具体的な賞与支給の仕組みについて展開します。