台北市は東京23区の半分ほどの広さしかありませんが、そこには台湾人の憧れるエリアが集中して存在します。
その場所を知っているだけで、いつもの台北の街が違った世界に見えてくるかも知れません。
それでは、さっそくご案内しましょう。
台湾人に「天龍國」と呼ばれる台北
台北は不動産価格が年々高騰しており、若年層からは「一生働いてもトイレしか買えない」などと揶揄されています。
いつしかネット上では、人気漫画『ONE PIECE』作中の特権階級に準えて、台北を「天龍國」・台北人を「天龍人」と呼ぶようになり、今ではその表現もマスコミや社会に定着してしまいました。
「天龍國」の超富裕層数は世界第8位
ロンドンの不動産コンサルタントKnight Frank社の2019年度版ウェルスリポートによると、台北には3000万米ドル(約30〜45億円)以上の資産を持つ超富裕層が1519人おり、超富裕層の多い都市として世界第8位でした。
そしてその人数は、現在でも増え続けています。
「天龍人」は外見だけではわからない
台湾の富裕層の特徴として興味深いのは、外見だけでは判断が難しい点。
庶民的な食堂や夜市などにTシャツやサンダル姿で現れるなど、年配の方ほど気取らない傾向にあるようです。ただし、車は高級車です。
若い世代の富裕層はファッションやSNS発信が好きな方も多いため、ブランドアイテムを身につけている率が高いように思います。
台湾人が選ぶ《高級住宅地》ランキング
台湾人が本当に住みたい・住みやすいと思うエリアは、不動産価格だけでは計れない複合的な要素が大きく影響します。
富裕層が集まる地域では下記のようなロジックが働き、その評価も年々アップデートされています。
豊かな緑地、充実した教育機関、文化的施設、評判の高いレストランなどが重視されます。
狭いながらも固い信頼で築かれた富裕層コミュニティが自然と出来上がります。
話題の物件の坪単価は200〜300万台湾ドル(約1000〜1500万円)と驚きの相場です。
それでは実際に、台湾人が住んでみたいと考える高級住宅地ランキングを見てみましょう。
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①士林區(仰德大道)
台湾富裕層の象徴といえば、陽明山の麓にある仰德大道の別荘群です。毎年2〜3月に陽明山の花見シーズンを迎えると、桜の観賞とともに豪邸巡りをする人も少なくありません。
戦後より高級官僚や外国人居留者が多く住む国際色豊かな高級住宅街・天母から陽明山へ繋がる仰德大道には、豪華な別荘が建ち並んでいます。
日本で例えると天母は田園調布、仰德大道は軽井沢といった感じでしょうか。
②大安區(仁愛路〜信義路)
緑の多い文教地区・大安區は兼ねてより住環境の良さで評価の高いエリア。東京で例えるなら渋谷区松濤〜代々木上原といった雰囲気でしょうか。
商業エリアの東區、芸能人や外国人モデルが多く住む永康街〜青田街をおさえ、現在は大安林森公園の周辺が最も注目を集めています。
観光客にも人気の建國假日花市・玉市が行われる建國南路沿いは、仁愛路と信義路をまたがる位置にあり、台北で1、2を争う超高級マンションが建ち並んでいるため、まさに圧巻の眺めです。
③信義區(象山)
台北101をランドマークとした信義区は、数多くの百貨店や外資ホテルが集まるトレンド発信地。新富裕層や富裕層の子女に人気が高く、東京に例えると六本木や麻布といった雰囲気です。
意外にもすぐ近くに台北の街を一望できる標高181mの象山があり、周辺にはかつて軍の射撃場などもあったそうですが、その自然豊かな環境から、高級マンション地区へと変貌を遂げました。
象山駅の北側に広がる行政区画・安康里は非常に閑静な住宅街で、住民の平均所得が高いことでも知られています。
④中山區(大直)
大直は樂群一路、樂群二路(下記マップ囲み内)に高級マンションが集中しており、いずれも基隆河の開放的なリバービューを堪能できる設計となっています。
東京で例えると晴海や豊洲といったベイエリアのような、近年人気急上昇している地域。
エリア周辺には国防医学院や内湖サイエンスパークなどがあるため、居住者には医師や大手IT企業のビジネスマンが多いようです。
⑤松山區(民生社區)
1960〜1970年代、先進的なアメリカ式示範コミュニティとして設計された民生社區(下記マップ囲み内)は、他の住宅地では感じることのできない独特な雰囲気に満ちています。
とくに台湾において「文青(ウェンチン)」と呼ばれるサブカルチャーを愛する層に熱く支持されており、東京に例えると吉祥寺あるいは中目黒のような空気感が漂うエリアです。
なかでも感度の高い富錦街は、新たなカルチャーとライフスタイルの発信地として人気に。
松山空港からも近く、近年日本のガイドブックでも紹介されるようになったので、ご存じの方も多いかと思います。
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台湾における《高級住宅地》の雑学
台湾一の富裕層エリアは台北ではない
県市 | 行政区 | ※万/台湾ドル | 平均所得(1世帯)|
1 | 新竹県 | 竹北市 | 149.5 |
2 | 新竹市 | 東区 | 141.2 |
3 | 台北市 | 大安区 | 138.7 |
4 | 台北市 | 中正区 | 121.9 |
5 | 台北市 | 松山区 | 118.7 |
6 | 新竹県 | 寶山郷 | 115.2 |
7 | 台北市 | 中山区 | 110.2 |
8 | 台北市 | 内湖区 | 108.8 |
9 | 台北市 | 信義区 | 102.8 |
10 | 台北市 | 文山区 | 101.2 |
「109年度綜合所得稅申報初步核定統計專冊」
中華民國財政部より2020年に発表された行政区別「平均所得」のランキングを見てみると、超富裕層が突出している台北をおさえ新竹がトップに並んでおり、この傾向はここ10年ほど続いています。
新竹は世界的なIT関連企業が集まるサイエンスパークがあることから所得の高い層が多く、平均値を押し上げる結果となりました。
18億台湾ドルのゴジラ「陶朱隱園」の今
「佇まいがゴジラに似てる」と観光客も足を止める、話題の超高級マンション陶朱隱園。
施工については日本の熊谷組(現地子会社)が担い、一戸の販売価格が18億台湾ドル(約60〜80億円)、年間管理費200万台湾ドル(約700〜900万円)との報道もあり、国内外で話題となりました。
しかし販売は、選ばれた層のみへの招待制。
一般には内覧も具体的な価格公表もされておらず、その実態は今もベールに包まれたままです。
【番外編】台北の下町エリアとは
龍山寺と周辺を含む萬華区は、東京で例えると浅草のような地域です。
観光客に人気がある反面、台湾では黒社会と呼ばれるヤクザ組織の本拠地として知られ、淡水川を越えた新北市の三重區と合わせて治安が悪いと言われている場所でもあります。
台北市は職業構造の違いからか、中央〜東部エリアよりも西部エリアの方が所得平均値が低い傾向にあるようです。