さいごのかぎ / Quest for grandmaster key

「TYPE-MOON」「うみねこのなく頃に」その他フィクションの読解です。
まずは記事冒頭の目次などからどうぞ。

FGO:置換魔術で置換されうるもの(私たちとは何か)

2023年10月15日 12時15分44秒 | TYPE-MOON
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FGO:置換魔術で置換されうるもの(私たちとは何か)
 筆者-Townmemory 初稿-2023年10月15日


 FGO(Fate/Grand Order)に関する記事です。

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●置換魔術とは何か

「オーディール・コール 序」という場面に、「置換魔術」というものの説明があります。

 作中の説明によれば、置換魔術とは、「よく似た二つのものは、距離をまったく無視して入れ替えが可能である」という魔術理論。

ダ・ヴィンチ
「だろうね。
 魔術世界には置換魔術というものがある。」
ダ・ヴィンチ
「たとえば、ここにゴルドルフくんAと
 ゴルドルフくんBがいたとして、」
ダ・ヴィンチ
「彼らがまったく同じ構成・情報量である場合、
 どんなに離れた場所でも入れ替える事ができる。」
ダ・ヴィンチ
「なぜか? それはもちろん、第三者から見て
 『なんの違いもない』事だからだ。」
ダ・ヴィンチ
「置換された者にしか『入れ替わった』事は分からない。
 いや、場合によっては本人たちでさえ分からない。」
ダ・ヴィンチ
超常的な事が起きたというのに世界に異常はないんだ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 こういう条件の時、魔術はとてもよく働く。」
『Fate/Grand Order』オーディール・コール 序



 作中では、この魔術理論を使って、
「カルデアス(地球のコピー)の表面と、真の地球の表面が入れ替えられたのではないか」
(地球表面が一瞬にして白紙化されたのはこのためではないか)
 という推測が語られていました。

 これはおもしろい理屈で、いろんなところに使えそうだと思いました。

 いや、使えそう、というか、「この理屈を使っておもしろい展開を導く」ということがプランされていて、その準備として説明されているのかなと感じます。

 なので、
「この物語上で、何と何を入れ替えたら、いちばんドラマチックになるだろうか」
 ということをボワーと考えていました。そしたら、ひとつ思いついたことがあります。

 それは、

「この物語の主人公(ぐだお/ぐだ子/藤丸立香)と、私たちプレイヤーは、入れ替えが可能そうだな」


●ぐだではない私たち

 わたしたちプレイヤーの大半は、自分のことを「ぐだ」だと思い込んでゲームをプレイしているものと思います(基本、私もです)。

(注:藤丸立香という名前をあんまり好まないので、以下、物語上の主人公のことを「ぐだ」と呼称します。ちなみに「ぐだ」とは、「グ」ランドオー「ダー」をつづめたもので、ユーザー内で自然発生したあだ名)

 だけど思い返してみると、この物語には、「プレイヤーとぐだは別人ですよ」ということをほのめかす情報がしっかり置かれています。

 それは、まさにFGOの冒頭。
 FGOは、私たちプレイヤー(らしき人物)が、カルデアの正面ゲートで自動化された検問を受けるところから始まります。

アナウンス
「―――塩基配列  ヒトゲノムと確認
 ―――霊器属性  善性・中立と確認」
アナウンス
「ようこそ、人類の未来を語る資料館へ。
 ここは人理継続保証機関 カルデア。」
アナウンス
「指紋認証 声紋認証 遺伝子認証 クリア。
 魔術回路の測定……完了しました。」
アナウンス
「登録名と一致します。
 貴方を霊長類の一員であることを認めます。」
アナウンス
「はじめまして。
 貴方は本日 最後の来館者です。」
アナウンス
「どうぞ、善き時間をお過ごしください。」
『Fate/Grand Order』第一章 プロローグ ※下線部は引用者による



 どうやら、この時代のカルデアは、人理保証を達成したカルデアの事績を記念する資料館のようなものになっているもようです。
(引用部5行目にある通り、「ここは資料館でござい」とアナウンスで言っていますものね)

 ようは、物語がすべて終わったあと、「主人公と仲間たちはこんなにすごいことをしたんだ」ということを広く人類に伝える施設になっているっぽい。

 このあと、入館手続きの完了まで180秒の待ち時間が発生し、その間、「模擬戦闘でマスター体験をお楽しみください」ということになり、最初の戦闘シーンになる。

 その戦闘シーンがおわると、私たちの視点はぐだのものとなり、カルデアの廊下でぶったおれていたところをマシュに見つかる。

 そういう流れでした。

 なので、まずひとつめの大前提として。
 私たちプレイヤーの本当の立場は、人理保証が成立したずっと後の時代に、人理保証資料館をおとずれた無名の人物である。
 ということになる。
 少なくとも、そう強く推定されることになります。


●なぜ我々は自分をぐだだと思ったのか

 前述のとおり、カルデア資料館に入館した我々は、自分がぐだになって、人理焼却直前のカルデアでぶったおれているという状況にあることを発見します。

 この時点で、我々は自分をぐだだと思い込み始め、そのまま現在でも物語が続いて行っています。

 なぜこのような視点のすりかわりが発生したのか。
 それは、このカルデア資料館が、
「世界を救ったぐだの事績とまったく同じものをバーチャル体験できるという施設」
 だからだと思います。

 さきほどの(FGO冒頭の)引用部の続きはこうなっています。

アナウンス
「……申し訳ございません。
 入館手続き完了まであと180秒必要です。
アナウンス
「その間、模擬戦闘をお楽しみください。」
アナウンス
「レギュレーション:シニア
 契約サーヴァント:セイバー ランサー アーチャー」
アナウンス
「スコアの記録はいたしません。
 どうぞ気の向くまま、自由にお楽しみください。」
アナウンス
「英霊召喚システム フェイト 起動します。
 180秒の間、マスターとして善い経験ができますよう。」
『Fate/Grand Order』第一章 プロローグ



 このように、英霊召喚シミュレーターが起動して、模擬戦闘体験ができるという仕掛けになっている。

「どうぞ気の向くまま、自由にお楽しみください」なんていうのは、およそマスター候補生に対して言う言葉ではないように思います。もっと気楽な立場の人への言葉、いうなれば観光客向けのような言葉です。

「スコアの記録はいたしません」とアナウンスが言っているところにも強く注目します。

 今回はスコアの記録をしない、ということなのですから、通常時にはスコアの記録をしているということになります。
 では通常時とは何か。
 それはこの資料館のメインコンテンツだろう。
 もっと複雑で難易度の高い模擬戦闘シミュレーターがあり、そちらではスコアを記録していて、リザルトを他人と比較できるようになっているのだろうと推測できます。

 そして、この施設のメインコンテンツは、単に戦闘を疑似体験できるというだけにはとどまらないだろう、とも推測できます。

 なぜなら、我々は、入館直後にはすでにぐだになりきっていたのだからです。
 これを、「ぐだシミュレーター」が提供している疑似体験だと考えることにするのです。
 単に戦闘を体験できるということにとどまらず、ぐだの境遇をまるごと全部追体験できる、というのがこの施設の趣向だと思います。

 単に戦闘がすごかったんだ、という側面を体験させるだけでなく、ぐだがどんな人間関係を築いたか、どんな場所にいって、どんな経験をしたか、そこでどんな思いをしたのか。
 そういうことを自分のことのように体験してまるごと知ってくれ、ということが、この資料館では意図されている。

 つまりこのFGOというゲームは、ぐだシミュレーターによって提供されている、英雄ぐだの足跡を、我々が疑似体験しているものだ……というふうに考えられるのです。


●カルデア資料館の真の目的

 さて。
 未来のカルデア資料館が、「ぐだの足跡を大勢の人に疑似体験させる」という性質のものである場合。

 ぐだと同等の能力を持ち、ぐだとまったく同じ経験を経ており、自分のことをぐだだと思い込んでいる人物、が、この世に大量に存在していることになります。

 そこで置換魔術の話になる。

 ぐだとまったく同等の能力と経験と記憶をそなえた人物は、ぐだ本人との入れ替えが可能そうだ。
 資料館の真の目的はそれではないのか。

 もっとはっきりいうと、ぐだシミュレーターを装備したカルデア資料館は、「ぐだのスペアを大量に確保する」という裏の目的をもって設置されてはいないか。


●無限残機による人理保証

 ここからは大きく推測が入ってきますが、おそらく、
「ぐだが死んだり、途中で心が折れてリタイアしたりして、物語を完走しない場合、人理保証は絶対に成功しない」
 という大条件があるのだと思います。

 そういう条件が、トリスメギストスなりシバなりの計算や、周りで見ていた人たちの実感として、完全に判明したと考える。

 でもこの物語はむちゃくちゃに過酷なので、ふつう、常人には完走は無理。ぐだは常人なので、よくがんばってはいるのだけど、ふつうに考えたら無理。

 そこで、ぐだとの間に置換魔術が成立しうる、ぐだと同等の存在を大量にストックしておく。
 ぐだの心がポッキリ折れたり、死んだりした場合、その直前のポイントで、ぐだ本人と、ぐだスペアを「置換」する

 私たちぐだスペアは、シミュレーターにかかっており、シミュレーターの中の体験を現実だと思っていて、自分のことをぐだ本人だと思い込んで一切疑っていない。
 なので、急に「現実のぐだ本人」と入れ替わったとしても、それに気づかない。置換されて以降は、私たちぐだスペアが「本人」として、物語を走っていくことになる。

 いっぽう、死んだぐだ本人は、ハッと目覚めるとシミュレーターの中にいて、
「ああ、夢か。死んだかと思った」
 そうして、人理保証がはるか過去のことになった未来世界で、「ぐだスペアの」日常に帰っていく。

 そのようなことが繰り返される。「本人」の立場に置き換わった元ぐだスペアがリタイアすると、また別のぐだスペアが送り込まれてくる。

 卑近な言い方をするならば、このアイデアは「無限残機・無限コンティニュー」で人理保証を完遂しようという方式なんですね。

 無限に残機があって、無限にコンティニュー可能なら、どんなに困難なゲームでも、いつかは絶対クリアできます。
 そのような形で、人理を「保証」している。

 資料館カルデアは、資料館となった後でも、「人理継続保証機関」を名乗っています。

アナウンス
「ようこそ、人類の未来を語る資料館へ。
 ここは人理継続保証機関 カルデア。」
『Fate/Grand Order』第一章 プロローグ



 資料館カルデアは、人理の危機に対して「英雄の無限残機」を提供しており、これあるかぎりほぼ絶対に人理の継続は保証されますから、この施設が人理継続保証機関を名乗るのは納得なのです。


●いくつかの傍証

 プロローグ部分で、カルデアの検問は、訪れた我々に対していくつかのチェックを行っています。

 たとえば、ヒトゲノムを確認して人類であることを調べ、属性が善性・中立であることを確認しています(先の引用を参照のこと)。

 これは、「ぐだスペアになりえない個体の入館を阻んでいる」と考えるのも興味深い。

 ぐだは霊長類・人類なので、そうではない入館希望者を拒む。
 たとえば虞美人みたいな、高度な知的生命体ではあっても人類ではない存在をはじく(のかもしれない)。

 ぐだの属性は善性・中立なので、そうではない入館希望者を拒む。
 属性がちがうと、ぐだが選択しないような大きな選択をする可能性があるし、そもそも置換が成立しないのかもしれない。

 そしてカルデア入館検問は、性別を識別しない。ぐだは男性でも女性でもよいからだ。


 ……といったような、「置換魔術によるぐだ無限残機説」は可能かなと思っています。

 この説におけるいちばん大きなポイントは、
「この説では、我々プレイヤーとは何者か、が定義されうる」
 というところです。

 我々はぐだ本人ではないが、いつか何かの拍子に、ぐだ本人とすげかわる可能性のある存在のひとりだ。

 いや、ひょっとしたら、もうすげかわっているのかもしれない。すげかわっているかどうかは本人にもわからないそうですからね。


●追伸・別案

 ここまで書き終わった直後に、ふと思いついたことがもうひとつあったので、追記。

 もう少し大きく捉えて、こうでもいいですね。

・実は、現実世界は人理保証に失敗し(ぐだが敗れて)滅んでいる。
・この世界滅亡を撤回したいと思った何者かが、カルデアスなり並行世界なりに、資料館カルデアを作った。
・大量の人間をシミュレーターに放り込み、ぐだの事績をそのまんま体験させる。
・もしもその中に、冒険に成功して汎人類史の人理を回復する者が出てきたら、「シミュレーター内の世界」と「滅んだ現実世界」を置換する。

(了)

 ちょっとした続きを書きました。
 FGO:続・置換魔術(確率化する私たち)

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