内部監査は誰がやる?法務が内部監査を担当する場合の9ポイントを担当経験のある元法務が解説!

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内部監査を実施してこなかった企業やIPO準備企業など、初めて本格的に内部監査を実施する場合、社内にリソースがある場合は内部監査担当を配置できますが、リソースがない場合、法務が担当することもあると思います。
法務による内部監査について記載していきたいと思います。

1.法務による内部監査の意義

まず「内部監査」の定義はいろいろありますが、ここでは、監査法人による監査(外部監査)ではなく、また監査役(監査役監査)ではない、社内担当者が監査を行うものを指します。

それでは、内部監査担当にふさわしいのは数字に強い経理でしょうか、それとも法務でしょうか。

私は内部監査体制構築の段階では法務のほうが良いと思います。
なぜなら、会計監査は監査法人のアドバイスを受けることができますが、業務監査は業務が契約書や社内規程にのっとって運用されているかという視点になるからです。

また、内部監査は指摘だけでなく、どのように業務を改善したら自社の業績に貢献できるかというものである以上、業務を全般的に俯瞰できる法務のほうがふさわしいと思います。

もちろん、内部監査は独立性を確保することが重要である以上、将来的には専任の内部監査担当を配置することが必要です。

なかなか内部監査だけを担当する社員を配置することは難しいことが多いです

2.監査役および監査法人との連携

有価証券報告書の「監査の状況」には、だいたい「監査役会、内部監査人、会計監査人(監査法人)は相互に連携を図り」と記載されている通り、監査役や監査法人との連携は極めて重要です。

特に監査法人は多数の企業の会計監査を実施していることから、他社の例を参考に自社がどのような内部監査体制を構築すればよいか、具体的なアドバイスをいただきましょう。

そこに、社内の監査役も巻き込み、内部監査の体制を固めていってください。
その際、監査役の協力を得る代わりに、監査役監査にも積極的に協力しましょう。
取締役会に出席する法務にとっては、監査役の協力は不可欠なので、積極的に協力関係を構築することが大事です。

内部監査に法務が向いているという理由の一つとして、一般社団法人日本内部監査協会が定める「内部監査基準」と「内部監査基準実務指針」があり、これをベースに内部監査体制を構築できるという点もあります。

とはいえ、上記の基準等も抽象的なので、監査役や監査法人と相談して、自社に具体的に当てはまる内部監査体制を構築して欲しいと思います。

監査法人担当者と良い関係を築いて、たくさん質問してアドバイスをもらいましょう!

3.監査計画の作成

まずは、監査計画の作成で、通常は年度の監査計画を指します。
前提として、内部監査の状況を年次の有価証券報告書に記載する建前上、年度内に内部監査は終了していなければなりません。

これを前提に以下の監査日程を計画します。

  1. 各部署の監査日程
  2. 各部署に監査項目を通知する期限
  3. 監査報告書の送付期限
  4. フォローアップ監査の日程
  5. フォローアップ監査報告書の送付期限
  6. 経営層への報告期限

各部署の管理者との調整に時間がかかるので注意です!

4.監査項目の選定①~事業部の監査項目

監査日程が決定したら、次は各部署の監査項目を決定し、内部監査実施前に各部署に通知して、資料を準備してもらいます。

監査項目については悩むポイントだと思います。
ここも監査法人と相談して欲しいのですが、私は基本的には「お金」と「ルール」だと思っています。

売上が適切に登録されているか、経費の支出が社内規程通り承認されているか、業務手順が社内規程やマニュアルに従ったものになっているかが、まずは監査すべき項目になります。

まず、売上を持つ事業部に関しては以下の項目をサンプル調査することが一般的だと思います。

  1. 値引がルール通り承認されているか
  2. 経費の支出が決裁基準通り承認されているか
  3. 契約書の締結が決裁基準通り承認されているか
  4. 与信管理が適切になされているか
  5. クレームを適切に管理しているか

5.監査項目の選定②~管理部門の監査項目

管理部門の監査についても、お金とルールをベースに以下の項目が考えられます。

  1. 経費の支出が決裁基準通り承認されているか
  2. 契約書の締結が決裁基準通り承認されているか

また、管理部門特有の事項として以下が考えられます。

  1. 人員計画や人材育成計画の確認(人事)
  2. 人件費の管理(人事)
  3. 取締役会、監査役会、執行役員会議等の開催状況や議事録(経営企画・総務・法務)
  4. 各種委員会の開催状況や議事録(人事・総務)

社内規程から逆引きして確認することも考えられます。
例えば文書管理規程では、文書を文書管理台帳にて管理すると規定されており、該当の台帳を確認します。
けっこう規程だけで、実際は運用していない建前上の制度もありがちなので、内部監査を契機に社内規程と運用の乖離を解消してください。

経理部門の監査については、監査法人と相談して監査項目を決定すればよいと思います。
固定資産が計上されているかなどの勘定科目の正確性や、各種残高の確認、予算管理の確認、請求書の保管状況等が挙げられると思います。

規程にはあるけど、運用がないものはけっこうありました・・・

6.内部監査の実施

部署の担当者のほうで準備してもらった資料を中心に監査します。
監査の手法は主に①資料のレビューと②管理者へのインタビューになります。

通常の部署の管理者の内部監査に対する気持ちは、めんどくさいな、指摘事項あったら嫌だなというものなので、話しやすい雰囲気をつくるコミュニケーション能力が必要になります。

初期の監査で無理に指摘事項を見つける必要はありません。
内部監査は部署と協力して、内部監査は自社のために業務を改善するためのポイントを見つけていく機会というスタンスが必要になります。

横展開できるグッドポイントの指摘もいいと思います!

7.監査報告書の作成

監査結果をもとに各部署の監査報告書(改善報告書)を作成します。

改善項目がある部署に対しては期限を決めて改善策を提示してもらいます。
いつまでに改善するかの期限も確認する必要があります。
それをもとに以下のフォローアップ監査を実施します。

8.フォローアップ監査の実施

部署から回答のあった改善策に従った改善がされているか、改善期限までの進捗等を確認して、フォローアップ監査報告書を作成し、部署に送付します。

9.経営層への報告

最後に全社の監査報告書を集約して経営層(通常は社長になると思います)に報告し、年次の内部監査は終了です。

経営層への報告は緊張しますが、自社の改善に貢献できる内部監査であることをアピールしましょう。

内部監査の目的は自社の業務改善に貢献することです!

10.まとめ

法務による内部監査の具体的な内容をみてきました。
以下の項目がありました。

  1. 法務による内部監査の意義
  2. 監査役および監査法人との連携
  3. 監査計画の作成
  4. 監査項目の選定
  5. 内部監査の実施
  6. 監査報告書の作成
  7. フォローアップ監査の実施
  8. 経営層への報告

本文でも何度か記載しましたが、内部監査の目的は自社の業務改善であり、内部監査があるからこそ、適切な業務プロセスを遵守する牽制にもなる重要な業務だと思います。
部署の管理者にとっては、内部監査で指摘されたことを理由に前例を改善できるということもあると思います。

法務が内部監査を担当する場合は、契約書や社内規程、決裁基準の遵守という視点など、法務の特性を活かして、内部監査を実施していただきたいと思います。

内部監査は全部署の業務を知ることができる利点があります!

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