6299777190465681 関節リウマチの予防と制御のためのライフスタイル:食事編 | 感染症・リウマチ内科のメモ

関節リウマチの予防と制御のためのライフスタイル:食事編

リウマチ・免疫

リウマチ外来をしておりますと、よく受ける質問の一つに“食事の何に注意したらよいのか?”というのがあります。各国や学会からよくでています“健康的でバランスのとれた食事”と答えることが多いのですが、関節リウマチ(RA)における食事や運動、ライフスタイルについて米国リウマチ学会や欧州リウマチ学会から最近ガイドラインがでていました。今回は食事についてRAの疼痛改善や活動性改善に影響はあるのか? エビデンスのあるのはどういったことか。
注意としてはライフスタイルの改善はあくまで治療を補完するものであり、治療に代わるものではありません。またその改善はRAだけでなく全体的な健康上の利点を高めます。

関節リウマチに対する運動、リハビリテーション、食事、および追加の統合的介入に関する米国リウマチ学会ガイドライン2022 年

2022 American College of Rheumatology Guideline for Exercise, Rehabilitation, Diet, and Additional Integrative Interventions for Rheumatoid Arthritis (Arthritis Rheumatol. 2023 Aug;75(8):1299-1311.

RA疼痛の改善のエビデンスが低~中程度あり、身体機能や疾患活動性には差がないことに基づき、条件付きで地中海スタイルの食事の遵守を推奨する
・地中海スタイルの食事では、野菜、果物、全粒穀物、ナッツ、種子、オリーブオイルの摂取と、適量の低脂肪乳製品と魚の摂取を重視し、添加砂糖、ナトリウム、高度加工食品、精製炭水化物、飽和脂肪の使用を制限する
・地中海スタイルの食事以外の正式に定義されている食事療法(例、抗炎症食、グルテンフリー食、ベジタリアン食、ビーガン食、断続的断食食、除去食、など)は臨床的に有意な利点がないことを示す非常に低い~中程度のエビデンスに基づきその遵守を推奨しない。
・食事療法の遵守に伴う負担とコストを考慮すると、地中海スタイルの食事だけが推奨されるのに十分なエビデンスを持っていた

「食べ物ファースト」アプローチ“food first” approach を推奨する
医薬品や栄養補助食品などを使用せずに、まず必要な栄養素を摂取するために高品質の食品を使用することを重視する、多くの患者にとって食習慣の変更が効果的な第一歩となり得る
・RA特有の身体機能、疼痛、または疾患活動性に関して、栄養補助食品を追加することによる一貫した臨床的に有意な利点がないことを示す、非常に低い~中程度のエビデンスに基づく
・RA患者にとって特に重要である骨(ビタミンDなど)や心血管の健康(魚油など)に栄養補助食品が役立つ可能性があることは認識された

確立された食事推奨事項に従うことを推奨する
・米国農務省、米国保健福祉省、および米国心臓協会によって作成されたものを指す

・米国農務省(USDA)及び米国保健福祉省(HHS)、「2021-2025米国民向け食事ガイドライン」:栄養価の高い食品及び飲料の選択、制限内のエネルギー摂取にとどめる、添加糖類、飽和脂肪酸及びナトリウムが多い食品及び飲料を制限、アルコール飲料を制限
・米国心臓協会(AHA)「心血管の健康増進のための食事ガイダンス2021
食事のカロリー摂取量と身体活動のバランスを、野菜や果物を含む多様な食品を食べる、一般的にサプリメントなどから特定の栄養を過剰に摂取するのは勧められない、全粒穀物が使われている食品を、植物性食品(大豆・ナッツ類・マメ類など)、魚などのシーフード、低脂肪または無脂肪の乳製品など、調理油はオリーブ油やひまわり油など植物性のもの、スナックやお菓子、ジャンクフードなどの超加工食品は避ける、糖質が過剰に加えられた飲料や食品はなるべく控える、塩分の少ない食品を、アルコールの摂取量を減らす

・(参考.日本では)厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト
栄養3色(3色食品群)運動で必要な栄養素をバランス良くとることを目指
食事バランスガイド 「主食」「副菜」「主菜」「牛乳・乳製品」「果物」の5つの料理グループ をそれぞれ単位ごとに(sv)とる

リウマチ性疾患および筋骨格系疾患の進行を防ぐためのライフスタイル行動と仕事への参加に関する欧州EULAR 推奨事項 2021年

2021 EULAR recommendations regarding lifestyle behaviours and work participation to prevent progression of rheumatic and musculoskeletal diseases (Ann Rheum Dis. 2023 Jan;82(1):48-56.

健康的でバランスのとれた食事は、リウマチ性疾患患者のライフスタイル改善に不可欠である
・WHOは、高カロリーの食品、特に飽和脂肪やトランス脂肪や糖分を多く含む食品の摂取を控えるよう勧告しています。もっと果物、野菜、豆類を食べ、植物や海洋由来の食品を選びましょう
・リウマチ性疾患を持つ人々は、特定の種類の食品を摂取することが 疾患に大きな利益をもたらす可能性は低いことを知らされるべきである
・一部の食品成分については、より大規模な研究が実施されており(例、OA 患者でのビタミンD、RA での魚油サプリやオメガ3多価不飽和脂肪酸)、臨床的に意味があるとは考えにくい小さい効果量が報告されています (Nutrients. 2017 Jan 6;9(1):42.、Nutrition. 2018 Jan;45:114-124.e4.)

関節リウマチ発症の危険因子としての食事 

Diet as a Risk Factor for Rheumatoid Arthritis(Cureus. 2023 May 20;15(5):e39273.

リスク減少の可能性: 魚、オリーブオイル、カロテノイド(特にβ-クリプトキサンチン)、不飽和脂肪酸(特に不飽和脂肪酸 MUFA/PUFA)、野菜(特にアブラナ科野菜やキノコ)、果物 の摂取
リスク増加の可能性: 甘い飲み物、ナトリウム、乳製品 の摂取
・リスク不明: カフェイン (例: コーヒーや紅茶)、肉(ニワトリを含む)、炭水化物 の摂取

まとめ

食事などライフスタイルの改善はあくまでリウマチ治療を補完するもの
生活習慣病や心臓病向けなどに各国や学会で推奨している食事ガイドラインが基本
それでも近年RA関連文献の増加からエビデンスのある方法もでてきている
地中海スタイルの食事ではRA疼痛改善においてエビデンスがある ほかの各食事療法はいまのところ推奨されない
栄養補助剤を使用するより、食品を使用することを推奨する「食べ物ファースト」アプローチを
ただしビタミンDや魚油などのサプリ補給は役立つ可能性がある
魚、オリーブオイル、不飽和脂肪酸、野菜、果物といった地中海式食事の摂取はRA発症リスクも減らすかもしれない

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