6299777190465681 朝のこわばりについて | 感染症・リウマチ内科のメモ

朝のこわばりについて

リウマチ・免疫

関節の硬直や機能障害など関節リウマチ(RA)の特有の症状は朝から午前中に最も重くなることが多いです。関節の「朝のこわばり」も問題となることが多い症状の一つで、これは健康関連の生活の質(HRQoL)にも悪影響を及ぼします。
RAを拾いあげる診断としての朝のこわばり(1 時間以上続く)は、1987年の米国リウマチ学会によるRA の分類基準の1 つでしたが、2010年の米国/欧州リウマチ学会の新分類基準からは削除されました。これはRAに対する特異性の欠如を指摘する報告と、疾患活動性との関連性についての相反する報告によるものとされています。このように朝のこわばりは分類基準には含まれなくなりましたが、この症状は依然患者にとってやはり重要です。

朝のこわばりとは

朝のこわばりの定義:morning stiffness (J Rheumatol. 1999 May;26(5):1052-7.)
ずっと寝ていて起き上がるとき、または同じ姿勢に長時間留まった後に、動き出すときの関節の動きの遅さや困難さで、これは体の両側にみられ、動くにつれて改善するもの 

入浴や着替えなどの日常生活活動を妨げ、関節リウマチ患者が時間通りに仕事に行くことが困難になるため、早期退職の最も一般的な理由として挙げられている(Rheumatol Int. 2015 Nov;35(11):1791-7.)
英国人口ベースの調査は、RA における朝のこわばり持続時間の増加が 健康関連の生活の質(HRQoL)の悪化と関連していることを示していた(J Med Econ. 2012;15(6):1192-200.)
関節リウマチ患者の朝のこわばり持続時間の改善を目標とする医療介入にて今後の費用対効果分析に適用できるかもしれない

朝のこわばりの病態

関節形成術を受けた RA患者での組織学的特徴を調べた研究では、滑膜組織における好中球およびフィブリンの存在は、朝の1時間以上のこわばりと有意に関連していた。滑膜に沿い好中球浸潤したフィブリン沈着物の線溶障害が朝のこわばり持続に関連している可能性がある。(Arthritis Rheumatol. 2020 Apr;72(4):557-564.)
このフィブリン沈着がさまざまな炎症状態に共通の所見であり、強直性脊椎炎や乾癬性関節炎など、他のリウマチ性疾患における朝のこわばりにおいても関連しているかもしれない

実験研究と遡及データにより、多くの炎症過程が概日周期性を示すことがわかってきている。夜間に骨髄から好中球が放出され、早朝にピークがあり、日中は徐々に脱顆粒が起こることが報告されている。これが滑膜組織に補充され、特に午前中に関節の硬直を引き起こす局所的な炎症に寄与しているのかもしれない。

臨床的意味

例えば関節症状の患者で朝のこわばりを訴える患者では、関節滑膜炎症が増している可能性を考える
朝のこわばりは炎症性関節炎のスクリーニングツールに含まれており、炎症性関節炎と変性関節炎を区別するために今でも日常的に使用されている
炎症性と非炎症性の関節炎を見分けるシンプルな自己判断ツール(J Rheumatol. 2013 Apr;40(4):417-24.)としての項目に、より若い年齢、男性の性別、こぶしを作るのが難しい、関節リウマチといわれたことがある、乾癬の診断、とともに 朝のこわばりの存在 がある

RA患者において、朝のこわばりは疾患活動性よりも、機能障害や痛みとの関連性が高い
・初期の関節リウマチ患者における朝のこわばりの程度は、関節数やESRなどの従来の炎症マーカーよりも、機能障害とより強く関連していた。朝のこわばりはMDHAQの機能障害スコアおよび他の患者の自己申告データと有意に関連していた。(J Rheumatol. 2004 Sep;31(9):1723-6.)
・RAでの朝のこわばりの持続時間、朝のこわばりの重症度、起床時の痛みの強さと疾患活動性との相関を調べた研究では(Arthritis Care Res (Hoboken). 2015 Sep;67(9):1202-1209.)、朝のこわばりの重症度または起床時の痛みの強さとDAS28またはACR20スコアとの間には中程度の相関、朝のこわばりの持続時間と疾患活動性の測定値との間には弱い相関があった
・RA活動性の評価における朝のこわばりの持続時間の役割の評価では(J Rheumatol. 2009 Nov;36(11):2435-42.)、こわばりの持続時間は、痛み、健康評価アンケート、および一般的な健康状態(GH)と中程度の相関関係を示した。こわばりの持続時間は、RA 活動性が異なる患者間で有意に異なった。この存在が臨床的に疾患の活動性を示している可能性がある。

抗リウマチ薬による治療は、RA患者の朝のこわばりの持続時間を短縮するのに効果的であることが示されている
グルココルチコイドの夜間投与は朝のこわばりを緩和することが示されており、朝の関節こわばりの重篤な症状があり日常生活活動を妨げられている患者には検討される。
DMARDリウマチ治療に低用量プレドニゾンの徐放(MR)製剤による時間療法の追加による有効性の報告(Ann Rheum Dis. 2013 Feb;72(2):204-10.)、朝のこわばりの減少、疾患活動性スコアの大幅な低下、身体機能の大幅な改善がみられた。

まとめ

関節リウマチの患者は一般に朝のこわばりを経験する
朝のこわばりは、リウマチ以外の炎症性関節炎疾患でも認めうるためRA診断的な特異性が高いわけでもなく近年の分類基準からは外されているが、例えば非炎症性関節炎との区別診断においてまだ大いに参考になる所見の一つである
こわばりの重症度は疾患活動性との相関があるかもしれないが、その度合いは客観的に測定や評価しにくい、重症度の定量化も困難である。よく使用されているのが朝のこわばりの持続時間であるがこちらは、疾患活動性よりは疼痛、一般的健康状態、生活機能障害と相関があるようである
こわばりは生活・社会的に重要であり、これは労働障害と関連しうる
朝の関節こわばりの重篤な症状があって日常生活活動を妨げられている患者には、低用量プレドニンの時間療法が検討される

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