第109回薬剤師国家試験(衛生・薬理)(2024.2.17-18)

薬学

衛生と薬理についても解説を行います。
誤っている部分もあるかもしれませんので、参考にしていただき、実際には教科書等で確認することをおすすめします。

物理・化学・生物はこちら

衛生・薬理

衛生

問16 疫学研究手法

5 横断的研究は、疾病と要因の保有状況を同時に調べる疫学研究手法です。
問題文のとおり、「対象集団について、ある一時点における疾病の有無と要因の保有状況を調査し、その関連を明らかにする疫学研究手法」となります。
有病率を調べることができますが、要因と疾病の時間的前後関係は不明であるため、因果関係を知ることはできません。

1 症例対照研究(ケースコントロール研究、患者対照研究)は、ある疾病・問題を持つ群と持たない群に分け、リスク要因を過去にさかのぼって(後ろ向きに)比較する疫学研究手法です。
相対危険度の近似値であるオッズ比を求めることができます。一方で、結果(疾病・問題)を見てから群を分けており、例えば疾患の罹患率や死亡率を求めることはできません。そのため、相対危険度、寄与危険度は計算できません。
4 コホート研究(前向きコホート研究、要因対照研究)は、ある要因を持つ群と持たない群に分け、疾病の発生頻度を将来に向かって(前向きに)比較する疫学研究手法です。
相対危険度や寄与危険度といった指標を算出することができます。

疫学研究手法を分類すると、大きく観察研究と介入研究に分けられます。その中で、観察研究の中に横断研究と縦断研究が含まれ、縦断研究の中に症例対照研究、コホート研究が分類されます。
疫学研究の分類については下図のとおりです。

問17 子宮頸がんのリスク要因

4 ヒトパピローマウイルス(HPV)は、子宮頸がんの患者の90%以上で見つかることが知られています。
子宮頸がんの予防として、HPVワクチンの接種が推奨されており、小学6年生〜高校1年生の女の子に対して3回接種することが予防接種法上の定期接種(A類疾病)に位置付けられています。
HPVワクチンは不活化ワクチンであり、2価ワクチン(サーバリックス)、4価ワクチン(ガーダシル)、9価ワクチン(シルガード9)の3種類があります。価数は異なりますが、いずれもHPVの中で子宮頸がんをおこしやすい種類であるHPV16型と18型の感染を防ぐことができるとされています。

その他の選択肢は子宮頸がんとは別に性行為感染症の原因となる病原体です。
1 ヒト単純ヘルペスウイルス(HSV)は性器ヘルペスウイルス感染症、2 梅毒トレポネーマは梅毒(薬屋のひとりごとの鳳仙もなっている病気)、3 クラミジア・トラコマチスは性器クラミジア感染症、5 淋菌は淋病の原因となります。

問18 労働者に対する特殊健康診断

特殊健康診断は、特定の業務に従事する労働者に対する健康診断です。労働安全衛生法において、事業者は、労働者に対して1 石綿(アスベスト)業務を含む下記の特殊健康診断を行うことが義務付けられています。また、他には、じん肺法において粉じん作業、除染電離則において除染業務において特殊健康診断が義務付けられています。

1.潜函工法等の高気圧室内業務、水中において行う業務
2.放射線業務
3.特定化学物質や製造禁止物質等の製造・取扱い業務
4.鉛業務
5.四アルキル鉛等業務
6.特定の有機溶剤の製造・取扱い業務
7.石綿(アスベスト)等業務
8.歯やその周りに有害な物質に関わる業務

問19 食事摂取基準の指標

2 推奨量は、ある対象集団に属する人のほとんど(97〜98%)が必要量を満たすと推定される摂取量です。推定平均必要量を用いて算出されます。
1 耐容上限量は、対象のほとんど全ての人が過剰摂取による健康障害のリスクがないとみなされる習慣的な摂取量の上限です。
3 目安量は、対象がある一定の栄養状態を維持するために十分な摂取量です。十分な科学的根拠が得られず、推定平均必要量が算定できない場合に算定されます。
4 推定平均必要量は、対象の50%が必要量を満たすと推定される摂取量です。
5 目標量は、生活習慣病の予防を目的として、現代の日本人が当面の目標とすべき摂取量です。

これらは、目標量を除いて概念図に示すことができます。
順番は、左から「すすめたい」です。
推定平均必要量が対象の50%なので左側に来ること、「め」は目安量であることに注意が必要です。
す(推定平均必要量)→す(推奨量)→め(目安量)→たい(耐容上限量)

問20 食品の保存法

3 くん煙(燻煙、燻製)は、煙で食品を燻すことで煙に含まれているアセトアルデヒド、ホルムアルデヒド等の殺菌・静菌成分を食品に浸透させ、保存性を高める方法です。
1 乾燥、2 塩蔵(塩漬)、5 糖漬は、いずれも食品の水分活性を低下させることで静菌する保存法です。
5 冷蔵、他に冷凍は、低温により静菌する保存法です。
食品の保存法としては、その他、pHを低下させる酢漬(静菌)、加熱処理(殺菌)、殺菌料の低下といった方法もあります。

問21 シモン反応

シモン反応(Simon反応)とは、脂肪族第二級アミンの呈色反応であり、薬物の検査としては覚せい剤のメタンフェタミン、麻薬・幻覚剤のMDMAの定性反応として用いられます。
1 メタンフェタミンは、シモン反応で確認できる薬物であるため、こちらが正解です。
2 アンフェタミンは、覚せい剤ではありますが、窒素原子へアルキル基が1つしかついていない第一級アミンですので、第二級アミンに特異的な反応を示すシモン反応は陰性となります。第一級アミンと反応するp-ニトロベンゼンジアゾニウムクロライドにより確認されます。
3 モルヒネ(麻薬)は、アルカロイド試薬、ヨウ化白金酸カリウム試薬、FeCl3反応により確認されます。
4 コカインは、チオシアン酸コバルト試薬、アルカロイド試薬によるマルキス反応により確認されます。
5 テトラヒドロカンナビノール(THC)(麻薬)は、ガムロイ試薬、ジアゾ化スルファニル酸試薬、ファーストブルーB塩酸塩により確認されます。

問22 遺伝毒性発がん物質のリスク評価

3 実質安全量(VSD)は、閾値が存在せず、後述するNOAELやTDIを設定できない時に、ヒトが一生涯にわたって摂取しても危険度が一般に10万分の1の確率(10-6)にとどまる量として設定されます。
1 許容一日摂取量(ADI)は、ヒトが一生涯にわたって摂取しても、健康への悪影響がないと考えられる1日当たり、体重1 kg当たりの物質の摂取量です。食品添加物や農薬等の有用性があり意図して使用される物質について算出されます。
2 耐容一日摂取量(TDI)は、ヒトが一生涯にわたって摂取しても、健康への悪影響がないと推定される1日当たり、体重1 kg当たりの物質の摂取量です。ダイオキシン等の環境汚染物質のように意図的に使用されない物質について算出されます。
4 急性参照用量(ARfD)は、ヒトの24時間かそれより短時間の経口摂取で健康に悪影響を示さないと推定される体重1 kg当たりの摂取量です。農薬等がヒトに急性影響を与えるかどうか考慮するために設定されます。
5 無毒性量(NOAEL)は、ある物質について何段階かの異なる投与量を用いて行われた反復毒性試験、生殖発生毒性試験等の毒性試験において、有害影響が認められなかった最大の投与量のことです。様々な動物試験において得られた個々の無毒性量の中で最も小さい値を、その物質の無毒性量とします。

問23 放射線の感受性が高い組織

放射線の感受性は、①細胞分裂の頻度が高い組織、②長期にわたって細胞分裂を続ける組織、③形態的・機能的に未分化である組織ほど高いことが知られています。これを、ベルゴニー・トリボンドーの法則と呼びます。
2 造血組織が選択肢の中で最も放射線に対する感受性が高いです。
続いて、3 皮膚組織は中程度の感受性があり、1 神経組織、4 筋肉組織、5 脂肪組織は低感受性となります。

問24 光化学オキシダントに関与する非電離放射線

電磁波は、電離放射線、非電離放射線に大別されます。
非電離放射線には、紫外線、可視光線、赤外線、電波(電子レンジのマイクロ波や、ラジオのラジオ波)が含まれます。
さらに、紫外線は波長の長さによってUV-A、UV-B、UV-Cに分類され、それぞれ地表への到達具合や作用が異なります。
地上部での光化学オキシダントの生成に関与する主な非電離放射線は4 UV-Aです。5 UV-Cも地上部に届けば関与する可能性もありますが、UV-Cの大部分はオゾン層に吸収されるため、光化学オキシダントの生成への寄与は小さいとされています。
1 遠赤外線、2 近赤外線の赤外線と3 可視光線の寄与は小さいとされています。

問25 典型七公害の種類別公害苦情件数

典型七公害(典型7公害)のうち、近年では4 騒音の苦情件数が最も多いです。
令和3年度では、苦情件数が多い種類から順に、①騒音、②大気汚染、③悪臭、④水質汚濁、⑤振動、⑥土壌汚染、⑦地盤沈下です。
典型7公害は、環境基本法において公害と定義されているものであり、ゴロ合わせは、
「水・土は待機。自分と握手を送信。」
です。なんで中途半端な水曜日と土曜日なのか、なんで意味不明送信を行うのかとつっこみどころが多いゴロ合わせです(ゴロ合わせって大体そういうものだと思いますが。)。

水・土は待機自分と握手を
水質汚濁土壌汚染大気汚染地盤沈下悪臭騒音振動
典型7公害のゴロ合わせ

薬理

答えとなる選択肢は詳細に解説し、他の選択肢はさらっとにしようと思います。

問26 禁煙補助薬

4 バレニクリン(チャンピックス)は、ニコチン性アセチルコリン受容体部分作動薬であり、禁煙補助薬として使用されます。
詳細な作用機序として、脳内のα4β2ニコチン受容体への拮抗作用により、ニコチンを遮断して喫煙による満足感を抑制します。一方で、同時にニコチン受容体の部分刺激により少量のドパミンを放出させ、禁煙に伴う離脱症状やタバコに対する切望感を軽減します。
すなわち、タバコを吸ってもあまり満足感は得られず、タバコをやめても離脱症状が少ないという薬剤になります。
なお、添付文書上では「患者が禁煙を開始する日を設定すること。その日から1週間前に本剤の投与を始めること。」とされており、服用の期間や用量についても細かく設定されています。

1 シアナミド(シアナマイド)は、アルデヒド脱水素酵素(ALDH)阻害による嫌酒薬です。
2 ナロキソンは、オピオイドμ受容体拮抗による麻薬拮抗薬です。
3 ニコチン(ニコチネル)は、タバコに含まれる物質であり、貼付剤が禁煙補助薬に使用されますが、部分刺激薬ではなく単に刺激薬です。
5 フルマゼニル(アネキセート)は、ベンゾジアゼピン受容体拮抗によるベンゾジアゼピン薬剤拮抗薬です。

問27 自律神経節遮断薬の効果

自律神経には交感神経と副交感神経があり、各種臓器はその2つの二重支配を受けており、ある臓器ではどちらかの神経による支配が優位になっています。
基本的には、交感神経優位の臓器として血管、汗腺があり、それ以外は副交感神経が優位となっています。
自律神経節は、交感神経でも副交感神経でもニコチン性アセチルコリン(NN)受容体が存在しています。自律神経節遮断薬はNN受容体を遮断し、普段優位となっている神経による作用を抑制する方向にはたらきます。
つまり、副交感神経優位である心臓、瞳孔、唾液腺、消化管、膀胱等について、自律神経節遮断薬により抗コリン効果を受けたような作用が生じます。

瞳孔では、普段は副交感神経優位であるため瞳孔括約筋収縮により縮瞳の方向にあります。自律神経節遮断薬により、瞳孔括約筋が弛緩し、2 散瞳が生じることになります。
他の選択肢について、自律神経節遮断薬を使用した場合、
副交感神経優位:1 心拍数は低下ではなく増加(頻脈)、3 消化管運動は促進ではなく低下、4 排尿は促進ではなく抑制(膀胱排尿筋の弛緩)
交感神経優位:5 発汗は促進ではなく低下
となります。

問28 リスペリドンによる高プロラクチン血症の機序

リスペリドン(リスパダール)は、セロトニン・ドパミン拮抗薬(SDA)であり、D2受容体と5-HT2A受容体を遮断します。
統合失調症の陽性症状を抑制するためには、中脳辺縁系のD2受容体の遮断が有効であり、定型抗精神病薬やSDAのような非定型抗精神病薬はこれをターゲットにしています。
一方で、どこにあるD2受容体も遮断してしまうことから、主作用として目的とする場所以外での遮断により副作用が生じることになります。

5 下垂体(漏斗-下垂体系)でのドパミンD2受容体遮断により、高プロラクチン血症や乳汁漏出症の副作用を生じる可能性があります。
なお、SDAはセロトニン5-HT2A受容体を遮断することにより陰性症状にも有効です。従来型抗精神病薬よりも高プロラクチン血症や錐体外路症状の副作用は少ないとされていますが、非定型抗精神病薬の中ではD2受容体遮断が比較的強く、MARTA等よりはそれらの副作用が起こりやすいです。
1 線条体(黒質-線条体)でのD2受容体遮断は、錐体外路症状の原因となります。

問29 アバタセプトの標的分子

抗原提示細胞(APC)表面に発現するCD80/CD86は、T細胞表面に発現するCD28に結合し、共刺激シグナルを発生することで免疫作用を発揮しています。
アバタセプト(オレンシア)は、リウマチ治療に用いられるT細胞共刺激阻害薬であり、3 CD80/CD86に結合し、1 CD28を介したT細胞活性化、サイトカイン放出を抑制します。

2 細胞傷害性Tリンパ球抗原(CTLA-4)は、アバタセプトにおいてCD80/CD86と結合するために付けられているリコンビナント蛋白(組み換え蛋白)です。アバタセプトはCTLA-4とIgGのFc 部分を融合したものです。つまり、アバタセプトはCD28の代わりにCD80/CD86にくっついて邪魔をしていることになります。
4 IL-6受容体は、トシリズマブ(アクテムラ)の標的分子です。
5 TNF-αは、インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ等の標的分子です。

問30 オステオカルシンのグルタミン酸残基のγ-カルボキシル化

1 メナテトレノン(グラケー)は、骨基質のオステオカルシンのグルタミン酸残基のγ-カルボキシル化(Gla化)を促進し、オステオカルシンへのカルシウム沈着を促進し、正常な骨代謝を維持する骨粗鬆症治療薬です。
なお、メナテトレノンはビタミンK2であり、ビタミンK依存性血液凝固因子の生合成を促進するため、止血薬としても使用されます。これは、新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症の予防に適応があり、多くの病院で新生児に対して「ケイツーシロップ」として処方されています。

他の選択肢もいずれも骨粗鬆症治療薬です。
2 エルカトニン(エルシトニン)は、破骨細胞のカルシトニン受容体に作用し、骨吸収を抑制します。
3 カルシトリオール(ロカルトロール)は、ビタミンD製剤であり、腸管でのCa吸収促進、腎臓でのCa再吸収促進により血中Ca濃度を上昇させ、パラトルモン(PTH)分泌抑制により骨吸収を抑制します。また、骨芽細胞に作用して骨形成を促進します。
4 テリパラチド(フォルテオ、テリボン)は、PTH製剤であり、間欠的(1日1回や1週間に1回)に投与することで、骨芽細胞の分化促進、アポトーシス抑制作用により、骨形成を促進します。
5 イプリフラボンは、イソフラボン製剤であり、エストロゲン様作用を示すことで骨吸収抑制や骨形成促進作用を示しますが、エビデンスが乏しく使用頻度は低いです。

問31 可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激

4 リオシグアト(アデムパス)は、可溶性グアニル酸シクラーゼを刺激することでcGMPの産生を促進し、血管拡張作用を示します。慢性血栓塞栓性肺高血圧症や肺動脈性肺高血圧症に使用されます。

1 アルプロスタジル(パルクス、リプル)は、プロスタグランジンE1製剤であり、PGE1受容体刺激によりアデニル酸シクラーゼを活性化し、血管拡張作用や抗血小板作用を示します。
2 シルデナフィル(レバチオ)は、ホスホジエステラーゼ5(PDE5)を阻害することでcGMP量を増加させ、血管拡張作用を示し、肺動脈性肺高血圧症に使用されます。なお、バイアグラの成分でもあり、勃起不全に適応があります。
3 ベラプロスト(ドルナー、プロサイリン)は、プロスタサイクリン(PGI2)誘導体製剤であり、PGI2受容体刺激によりアデニル酸シクラーゼを活性化し、血管拡張作用や抗血小板作用を示します。
5 マシテンタン(オプスミット)は、エンドセリンET1受容体、ET2受容体に拮抗することにより、血管拡張作用を示します。

問32 プラスミンのフィブリン結合阻害

3 トラネキサム酸(トランサミン)は、体内でイプシロンアミノカプロン酸となり、プラスミノーゲンやプラスミンのリジン結合部位に結合し、プラスミンによるフィブリンの分解を阻害することで、止血作用をしめします。なお、抗プラスミン作用によりブラジキニンの酸性も抑制するため、抗アレルギー作用、抗炎症作用を示します。

1 フィトナジオン(カチーフ、ケーワン)は、ビタミンK1製剤であり、ビタミンK依存性血液凝固因子の生合成を促進するため、止血薬として使用されます。
2 プロタミンは、強塩基性物質であり、強酸性であるヘパリンと複合体を形成して中和するため、ヘパリン過量投与時の中和に用いられます。
4 ヘモコアグラーゼ(レプチラーゼ)は、蛇毒から分離された酵素製剤であり、トロンビン様作用によりヘパリンに拮抗されずに止血作用を示します。
5 カルバゾクロムスルホン酸(アドナ)は、血管透過性抑制作用、血管抵抗性増強作用があります。

問33 メフルシド作用機序

4 メフルシド(バイカロン)は、チアジド類似薬であり、遠位尿細管のNa+-Cl共輸送体を阻害することでNa+の再吸収を阻害し、利尿作用を示します。同様の作用をもつチアジド類似薬として、インダパミド(ナトリックス、テナキシル)があります。
チアジド系利尿薬とチアジド類似薬は構造が異なっており、チアジド類似薬は非チアジド系利尿薬と呼ばれることもありますが、臨床上は同等のものとして用いられています。

1 心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)受容体を刺激する薬剤としては、カルペリチド(ハンプ)があります。
2 バソプレシンV2受容体を遮断する薬剤としては、トルバプタン(サムスカ)があります。
3 上皮性Na+チャネルを遮断する薬剤としては、トリアムテレン(トリテレン)があります。
5 Na+-K+-2Cl共輸送体を阻害薬剤としては、フロセミド(ラシックス)等のループ利尿薬があります。

問34 ウメクリジニウム作用機序

ウメクリジニウム(エンクラッセ)は、4 アセチルコリンM3受容体遮断により気管支収縮を抑制します。なお、β2受容体刺激薬と配合吸入剤となっているアノーロエリプタもウメクリジニウムを有効成分としています。

1 ホスホジエステラーゼを阻害する薬剤は、テオフィリン(テオドール)、アミノフィリン(ネオフィリン、アプニション)、プロキシフィリン(モノフィリン)等のキサンチン誘導体です。
2 アデノシンA1受容体を遮断する薬剤は、上記のようなキサンチン誘導体です。
3 アドレナリンβ2受容体を刺激する薬剤は、サルブタモール(ベネトリン)等です。
5 エラスターゼを阻害する薬剤は、ウリナスタチン(ミラクリッド)がありますが、気管支喘息等の呼吸器疾患には適応がなく、膵炎や急性循環不全に用いられます。エラスターゼは、エラスチンを分解する酵素で、膵臓から分泌されるため膵がんや膵炎の検査マーカーとして使用されます。

問35 トリメブチン作用機序

トリメブチン(セレキノン)は、5 オピオイドμ受容体を刺激することで腸運動の調節作用を示す過敏性腸症候群(IBS)治療薬です。腸管が運動亢進状態の時には、副交感神経終末のオピオイドμ及びκ受容体に作用して、アセチルコリン遊離を抑制し、消化管運動を抑制します。一方で、腸管が運動低下状態の時には、交感神経終末にあるμ受容体に作用してノルアドレナリン遊離を抑制し、副交感神経終末からのアセチルコリン遊離が増加し、消化管運動を亢進させます。
つまり、腸管が動き過ぎているときは抑制し、運動低下のときには消化管運動を亢進するといった調節作用を有しています。

1 ドパミンD2受容体を遮断する薬剤は、メトクロプラミド(プリンペラン)、ドンペリドン(ナウゼリン)等です。
2 (アセチル)コリンエステラーぜを阻害する薬剤は、アコチアミド(アコファイド)であり、機能性ディスペプシア(FD)に適応があります。
3 アセチルコリンM3受容体を刺激する薬剤は、アセチルコリン(オビソート)、ベタネコール(ベサコリン)等です。
4 セロトニン5-HT4受容体を刺激する薬剤は、モサプリド(ガスモチン)です。

問36 ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質阻害薬

ミクロソームトリグリセリド転送タンパク質(MTP)を阻害する脂質異常症治療薬は、3 ロミタピドです。ジャクスタピッドの商品名で、ホモ接合体家族性高コレステロール血症に適応があります。MTPは小胞体内腔に存在する輸送タンパク質であり、ロミタピドは、MTPに結合して脂質転送を阻害し、肝臓細胞でのVLDLや小腸細胞でのカイロミクロンの形成を阻害することで血中LDL濃度を低下させます。

1 エゼチミブ(ゼチーア)は、小腸壁細胞のNPC1L1を阻害することで、食事や胆汁からのコレステロール吸収を抑制します。
2 エボロクマブ(レパーサ)は、LDL受容体分解促進タンパク質(PCSK9)に対するモノクローナル抗体であり、PCSK9のLDL受容体への結合を阻害することで血中LDLの肝細胞への取り込みを増加させます。
4 アトルバスタチン(リピトール)は、HMG-CoA還元酵素を阻害し、血中LDLの肝細胞への取り込みを増加させます。
5 ペマフィブラート(パルモディア)は、肝細胞等の核内にあるPPARαに結合して活性化し、標的遺伝子の発現を調節することで、β酸化の促進、血中リポタンパク質内のTG分解の促進、HDLの増加等の作用を示します。

問37 ソマトスタチン受容体刺激薬

1 オクトレオチド(サンドスタチン)は、持続性ソマトスタチン誘導体であり、先端巨大症・下垂体性巨人症、消化管ホルモン産生腫瘍(VIP産生腫瘍、カルチノイド症候群の特徴を示すカルチノイド腫瘍、ガストリン産生腫瘍)等に適応があります。
ソマトスタチンは成長ホルモン放出抑制ホルモンであり、ソマトスタチン受容体が刺激されると、成長ホルモン(GH)や血管作動性腸管ペプチド(VIP)の産生を抑制します。

2 ソマトレリン(GRF)は、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)であり、下垂体GH分泌機能検査に用いられます。
3 ソマトロピン(ノルディトロピン、ジェノトロピン等)は、遺伝子組換えヒト成長ホルモンです。
4 プロチレリン(TRH)は、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)であり、下垂体TSH・プロラクチン分泌機能検査に用いられます。
5 ペグビソマント(ソマバート)は、GH受容体拮抗剤です。

問38 ホスホジエステラーゼ4阻害薬

3 アプレミラスト(オテズラ)は、ホスホジエステラーゼ4(PDE4)を阻害する薬剤です。PDE4は主に炎症性細胞に分布しており、特異的にcAMPをAMPに分解しています。PDE4を阻害することにより細胞内cAMP濃度を上昇させ、IL-17、TNF-α、IL-23等の炎症性サイトカインの発現を制御することにより、炎症反応を抑制し、局所療法で効果不十分な尋常性乾癬、乾癬性関節炎、局所療法で効果不十分なベーチェット病による口腔潰瘍に用いられます。

1 マキサカルシトール(オキサロール)は、活性型ビタミンD3誘導体です。
2 エトレチナート(チガソン)は、ビタミンAの類似構造をもつ合成レチノイドです。
4 セクキヌマブ(コセンティクス)は、ヒト抗ヒトIL-17Aモノクローナル抗体です。
5 ブロダルマブ(ルミセフ)は、ヒトIL-17受容体A(IL-17RA)に対するモノクローナル抗体です。

問39 DNAジャイレース・トポイソメラーゼⅣ阻害薬

DNA ジャイレース及びトポイソメラーゼⅣは、いずれもⅡ型トポイソメラーゼに含まれる酵素です。これらを阻害する抗菌薬は、ニューキノロン系抗菌薬です。
1 はシプロフロキサシン(シプロキサン)であり、キノロン骨格にフッ素が付いたニューキノロン系の構造を持っています。

2はテトラサイクリン系抗生物質のテトラサイクリンであり、細菌のリボソーム30Sサブユニットを阻害します。
3はアミノグリコシド系抗生物質のカナマイシンであり、細菌のリボソーム30Sサブユニット及び50Sサブユニットを阻害します。
4はペニシリン系抗生物質のアモキシシリンであり、細菌のトランスペプチダーゼ(PBP)を阻害します。
5はマクロライド系抗生物質のアジスロマイシンであり、細菌のリボソーム50Sサブユニットを阻害します。

問40 チュブリン微小管重合阻害薬

3 ビンクリスチン(オンコビン)は、紡錘体を形成している微小管のチュブリンに結合することにより微小管の重合を阻害し、細胞周期を分裂中期で停止させると考えられています。白血病、悪性リンパ腫等に適応があります。

1 シスプラチン(ランダ等)は、DNAに架橋を形成します。
2 メトトレキサート(メソトレキセート)は、ジヒドロ葉酸還元酵素を阻害します。
4 フルオロウラシルは、活性代謝物の5-フルオロデオキシウリジル酸がチミジル酸合成酵素を阻害します。
5 ブレオマイシン(ブレオ)は、活性酸素を発生させることで非酵素的にDNA鎖を切断します。

参考

◇薬剤師国家試験
【厚生労働省:薬剤師国家試験のページ】
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/yakuzaishi-kokkashiken/index.html
◇疫学研究
【一般社団法人日本疫学会:疫学用語の基礎知識】
https://jeaweb.jp/glossary/glossary003.html
◇HPV
【厚生労働省:ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~】
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/index.html
◇毒性評価
【食品安全委員会:食品の安全性に関する用語集】
https://www.fsc.go.jp/yougoshu.html

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