銅建値の上昇は伸銅品価格にも波及している
銅の国内価格の上昇が鮮明だ。相対取引の目安となる建値は3月に最高値を約2年ぶりに更新し、その後も上昇が続く。
中国の需要増期待を受けた国際価格の高騰や円安が波及している。銅地金を加工した製品の価格も上がっており、インフラ、家電といった幅広い産業のコストを押し上げる。
国内で指標となるJX金属の銅建値は25日現在、1トン156万円。3月19日には139万円と2022年4月につけたこれまでの最高値(137万円)を更新していた。年初からの上昇率は25%に達する。
銅建値は国際指標であるロンドン金属取引所(LME)の価格と円相場の動向に影響を受ける。LMEの銅3カ月先物は22日、一時1トン9988ドル(約155万円)と22年4月以来の高値圏まで上昇。年初からの上昇率は17%に達した。
銅相場の上昇には需給逼迫への警戒感が影響しているとの見方が多い。
国際銅研究会(ICSG)の需給見通しによれば、24年の世界の銅需給は46万7000トンの供給過剰が予想されていた。同年3月に中国の大手製錬会社が協調減産で合意したと伝わり、供給リスクが意識されるようになった。
米ゴールドマン・サックスは3月28日付のリポートで中国での再生可能エネルギーや送電網向けの堅調な需要や、同国での製錬会社の減産による生産制約などが銅相場を支えると指摘する。
4月12日には米英両政府がウクライナ侵略を続けるロシアへの追加制裁を理由として、国内取引所でロシア産の銅とアルミニウム、ニッケルの取引を禁止すると発表した。非鉄相場の波乱要因として意識されているとの見方も多い。
外国為替市場では米連邦準備理事会(FRB)の早期利下げ観測が後退し、日米金利差の拡大を見込んだ円売り・ドル買いが続く。
25日には1ドル=155円台後半を付けた。23年末の140円台から大きく円安に振れており、円建ての建値上昇に拍車をかけた。
銅地金や銅合金を板、棒などに加工した伸銅品の卸値も、建値の上昇を受けて上がっている。
水栓金具や自動車部品に使う黄銅丸棒(25ミリ)の4月下旬時点の流通事業者間の取引価格(問屋仲間価格)は、1キログラム1273円前後と年初比で約2割高い。
半導体リードフレームや自動車用の端子・コネクターに使う銅条や、エアコンなどに使う銅管価格も足元で上昇基調となっている。
4月時点の銅条(1.5×100ミリ)が1キロ1642円前後、銅管(50×5ミリ)は同1853円前後。それぞれ3月の水準から約3%上昇した。
伸銅品の卸値は、銅建値をベースとした原料価格と加工賃(ロールマージン)で決まる。加工賃は電力代に影響するエネルギー価格の動向などが焦点となる。
黄銅棒大手のサンエツ金属は足元の製品需要は旺盛とは言いがたく、直ちに加工賃の引き上げを検討している状況ではないという。
その上で「今後エネルギー価格がいっそう高騰した場合、値上げも視野に入れなければならない」との見方を示す。
銅建値は電気自動車(EV)や太陽光発電に使う銅電線の値決めにも反映される。関連する分野の裾野は広く、銅建値の上昇が続けば消費者が購入する最終製品にも影響が及ぶ公算が大きい。(山田周吾)
日経記事2024.04.27より引用