パナソニックホールディングス(HD)は9日、2025年3月期の連結純利益(国際会計基準)が前期比30%減の3100億円になる見通しだと発表した。
液晶子会社の解散に伴う税効果が前期の純利益を押し上げた反動が出る。電気自動車(EV)市場の停滞によりEV電池の供給は伸び悩むが、生産性の向上などで電池事業の営業損益は増益を見込む。
会社計画の純利益は直近の市場予想の平均(QUICKコンセンサス、3362億円)を下回ったものの、実現すれば5年ぶりの最高益となった前期に次ぐ過去2番目の高水準になる。
売上高は1%増の8兆6000億円、営業利益は5%増の3800億円になる見通し。
家庭用エアコンや電設資材の販売が海外で堅調に推移する。
セグメント別の営業利益は家電事業が103億円、サプライチェーン(供給網)管理などを手掛けるシステム事業は339億円、それぞれ前期より増える。
今期は重点投資領域に掲げるEV電池の市況が踊り場を迎える。
米EV大手テスラの世界販売が伸び悩んでいることなどが響き、電池事業の売上高は8770億円と前期に比べ389億円減少する。一方で、生産現場の改善と原価低減を進め、営業利益は2割増の1090億円を計画する。
今期は米国のインフレ抑制法(IRA)に関連する補助金が、前期実績とほぼ同額の870億円営業利益を押し上げると試算する。
ただ、秋に予定する米大統領選で共和党の候補が勝利すれば、新政権がEV関連企業に手厚い補助金政策を見直す公算が大きい。24年の米大統領選はパナソニックHDにとって業績のリスク要因になる。
岩井コスモ証券の清水範一シニアアナリストは「EV電池は出荷が当初の想定以下で推移しているようだ。先行きも見通しにくく、投資計画が後にずれる可能性もある」と指摘する。
EV電池に次ぐ投資領域に位置づけるヒートポンプ暖房は欧州各国の補助金政策の見直しで需要が落ち込んだ。
パナソニックHDは本格的な市況の回復まで数年かかるとみる。梅田博和副社長グループ最高財務責任者(CFO)は9日、「今期はヒートポンプ暖房で大きな販売増を見込んでいない」と話した。環境分野の商材の苦戦は誤算だ。
パナソニックHDは25年3月期までの3年間に6000億円の投資枠を設け、EV電池やヒートポンプ暖房、供給網管理システムの3分野に重点的に投資する計画を公表している。
中でもEV電池は、米国カンザス州で主にテスラに供給する電池の2つ目の工場の建設を進めるなど、投資枠の大半を振り向ける方針を示してきた。
投資資金を捻出するために選択と集中を進めているが、足元の事業戦略については見直す可能性もある。
9日発表した24年3月期の連結決算は、売上高が前の期比1%増の8兆4964億円、純利益は67%増の4439億円だった。25年3月に米投資ファンドへ売却する車載機器の事業が好調だった。