今回ご紹介するギターは TAMA 3563S です。TAMAの輸出用4桁シリーズ、35の4桁で始まるアコースティックギター は、1974年頃から1976年頃まで製造されたとのことですが、私は今まであまり興味を持ちませんでした。
その理由として、音はいいもののサイドバックが合板という認識だったからです、しかし、今回のギターはTGシリーズと同じ割れ止めが側板にあり、何とオール単板モデルです。
4桁の末尾にSの付くシリーズは、トップ単板の意味とのことですが、ペグもゴールドのグローバーであることなど、1975年のドイツのカタログと比較してもやはり同じものはありません。更に、サウンドホール内にTAMAの焼き印などはなく、シリアルも8桁なので、材やブレイシング、割れ止めから見れば、むしろ一般的なTG-120とほぼ同じです。
また、このモデルは見た目の美しさもありますが、音もTGシリーズよりの素晴らしさで、ある意味TAMA の中でも最上級クラスと呼べるギターでしょう。
(画像1)全体的に洗練されたデザインです。また、このインレイは、エレキギターIbanez 2681 に継承されています。
(画像2)重量は2.4キロあり、TG-120と比べると200gほど重いです。やはりインレイなど貝をふんだんに使っているせいでしょうか。
(画像6)白蝶貝の見事なヘッドインレイです。ちなみにトラスロッドの調整穴は、ナットの下にあるので、後期のモデルではないかと思われます。
(画像7)指板のインレイも素晴らしいですが、ボディーバインディングは、ヘリンボーンで、カタログなどにあるセルロイドバインディングとは違います。
(画像8)グローバーのゴールドペグです。
オリジナルだと思いますが、TAMAでは初めて見ました。
(画像10)シリアルは3563とは読めませんが、カタログから言っても間違いないかと思います。
(画像11)今回から内部も撮影しています。割れ止めもしっかりあり、作りも素晴らしいです。
(画像12)ブレイシングは、部分的に少し削られていますが、TG-120とほぼ同じで太くしっかりしています。
(画像13)あまり弾かれていなかったのか、状態が良く、リペア痕がないことが分かります。
《まとめ》
今回のTAMA 3563S は、他に例を見ないプロトタイプギターで、TG-120への移行期のギターともいえるモデルではないでしょうか。当時はたぶん合板と単板の差をあまり無い時代だったと思いますが、いずれにせよこのギターは、探しても2度と手に入らない1本であることには、間違いありません。
TAMAの海外向けギターには、こんな想定外のギターがあることも踏まえ、4桁シリーズに限らず、今後も新たな発見と価値の可能性ある個体に出会えればうれしいです。
今更ながら思うに、本当にTAMAのギターは、奥が深く、興味を注がれる素晴らしい個体が多いです。それを考えるともう少し国内でもその価値を評価されてもいいのではないかと思うのは、私だけでしょうか。
《おまけ画像》
(画像14)全体像も美しいです。
(画像15)トップは、膨らみや打痕もなく美しいです。
(画像16)バックも綺麗です。
(画像17)白濁はありませんし、本当に50年前のギターとは思えないほど綺麗です。3563をTAMAの最高峰ギターと称する方もいますが、世界中探してもそう簡単に出会えるものではありません。私は偶々見つけましたが、TAMA のコレクターとして、この出会いに本当に感謝しています。
【参考動画】
Tama "Tree of Life" acoustic guitar, Ibanez Jem's Daddy? Renaissance 3563