素人は、プロ中のプロには届かない
NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」第11回「富本、仁義の馬面」が3/16に放送された。今回、いつものようにダラダラ書きたいところなれど、諸事情により短く終わります。ポンコツは確定申告のインパクトの前には恒例の病院行きは免れず、まあまあ回復したものの、パソコン前に座っていると家族の視線が痛い。
次の日曜日には1日がかりのちょっとしたイベントがある。そのどこかで倒れたら・・・また介護タクシーで帰ることになっては大変なので、今からの体力温存を家族から厳命されてしまった。
ではまず、公式サイトからあらすじを。
≪あらすじ≫ 第11回「富本、仁義の馬面」
『青楼美人合姿鏡』が高値で売れず頭を抱える蔦重(横浜流星)は、親父たちから俄(にわか)祭りの目玉に浄瑠璃の人気太夫・富本豊志太夫/午之助(寛一郎)を招きたいと依頼される。りつ(安達祐実)たちと芝居小屋を訪れ、午之助に俄祭りの参加を求めるが、過去吉原への出入り禁止を言い渡された午之助は、蔦重を門前払いする。そんな中、鳥山検校(市原隼人)が浄瑠璃の元締めだと知った蔦重は、瀬以(小芝風花)のいる検校の屋敷を訪ねる。
今回は、幼い頃から廓で育つが故に、外へは芝居を見に行けない女郎たち(下手したら一生😢)を慮る蔦重の優しさが突破口を開いた感がある。安定した稼ぎ口を得て、これからの蔦重の耕書堂も発展していくんだろう。
また、瀬川改め瀬以の夫・鳥山検校の蔦重への嫉妬が怖い💦全てお見通しなだけに。今後も彼女と蔦重の仲はスリリングに繋がっていきそうだ。それから、尾美としのりがとうとうカメオ出演じゃなくて画面に大きく出た。全然売れないという「青楼美人合姿鏡」を絶賛するオタクぶりが面白かった。
それで・・・えーと、非常に失礼なことを、見出しからして書いている。ごめんなさいね。全然浄瑠璃の知識も無く、無礼の極みかもしれない。でも、感じたことは正直に書かせてもらう。
今回の話のカギになるのは、浄瑠璃の富本節の若手人気太夫だという富本午之助の声がめっぽう美声だという事。その美声と粋で艶のある節回しの巧みさは江戸中の人気で、熱狂的なファンが居たそうだ。
ドラマの中でも、美声を聞いた吉原の花魁や、振袖新造かをりたちの涙を誘うほど。さらに、鳥山検校(浄瑠璃の元締めだそうで)が瀬以の願いで午之助の声を聞きに行き、名跡襲名を一発で認めるほどだった。
そして、花魁たちの涙に心動かされた午之助が蔦重の願い(吉原の俄祭りへの出演と、耕書堂による富本節の正本の出版)を叶えることになり、特に後者の富本正本が今後の蔦重の耕書堂の業績を安定させることになる訳で・・・。
つまり、午之助の「美声」はドラマであっても揺るぎないものであってほしかった訳ですよ。まさに人を一瞬にして惹き付けてやまないほど魅惑的な、それぐらいの声が聞けるかと、勝手にかなり期待を抱いていた。
昨年の「光る君へ」では、紫式部役の吉高由里子始め役者さんたちが、稽古を重ねて自ら筆を執って書をしたためていた。殊に清少納言役のファーストサマーウイカの手慣れた美文字は感動もので記憶に残っているし、藤原道長、公任らF4は、馬に乗っての打毬なんて珍しい競技までやって見せてくれていた。
「べらぼう」も、癒しの次郎兵衛兄さん(中村蒼)は仕事はそっちのけでしょっちゅう蔦屋で三味線をかき鳴らしているし、今回は忘八親父どもも集団で三味線を弾いていた。安達祐実もチビノリダーも、蔦重が「ほんの少しで良いから富本節を聞かせて」と午之助に依頼した際には、三味線で参戦し伴奏してみせたくらいだ。
要するに、最近は演じる側が吹き替え無しで取り組むことが称賛される向きがあるんだろうね。その傾向は、基本的には良い事だと思っている。
でも・・・でもやっぱり・・・今回は、技術で抜きんでている時代の寵児の役柄なのだから、少なくとも当代一のプロの声が聞きたかった。たとえ素人が練習しても、上手になっても、プロ中のプロに届きはしないはずだから。
浜ちゃんの格付けチェック番組でも、玄人はだしの素人さんが素晴らしい演奏や歌で騙してくれる場面があることは認めるけれど、それはレアケース。普通は訓練を重ねてきたプロに軍配が上がる。安定感があって、フラフラしない。危うさが無い。
もしも、午之助役の寛一郎の語りが吹き替えだったとして、吹き替えを頼まれた浄瑠璃の若手が評判をかっさらえば、これまた良い売り出しのチャンスにもなっただろう。業界の活性化にもつながったはず。
三味線指導は清元斎寿さん。歌舞伎役者の尾上右近の実兄だとか。ご指導の方が吹き替えする方向で、もうちょっと頑張ってくれたら良かったな。「少しは上手にできてもね、人を感動させるレベルなんてものは、そんなに一朝一夕でできるもんじゃないよ。プロの仕事を甘く見ないでくれ」って、遠慮せず制作側に言ってほしかったなー。
受けの演技が皆さん良かったので(つまり、美声に感動している側の演技)、見ているこちらは、自分の耳の反応が間違っているかと戸惑ってしまったよ。ほんの座興のつもりだったのにと、女郎たちが泣き始めて午之助らも戸惑っていたけれど。
「公暁」よりも「実朝様」が良かったな(大変失礼)
寛一郎といえば、「鎌倉殿の13人」では悲劇の公暁を演じていた。鎌倉二代将軍・頼家の子だ。雪の降る鶴岡八幡宮の階段で、叔父の三代将軍・源実朝(柿澤勇人)を刺し殺していた。
殺された側の実朝役の柿澤勇人は、ミュージカルスターとしてそれこそ美声を響かせてきた。和田義盛に「お前に罪はない!」と叫ぶところとかね、清らかな声が通っていたね。彼は確か、そちら方面で人間国宝の祖父と曾祖父を持つと聞いたことがある気がして、ウィキペディア先生で確認した。
祖父の清元榮三郎は三味線奏者、曾祖父の清元志寿太夫は浄瑠璃の語り手で、ともに人間国宝であり(柿澤勇人 - Wikipedia)
やっぱり。この家系のおかげで、カッキーの発声には天性の素晴らしさがあるのかも・・・浄瑠璃の家系でミュージカルスターだなんて、この上ない。なぜ柿澤勇人に午之助役をオファーできなかったのだろう。もしかして、同じ浄瑠璃とはいえ、流派が違うから逆に手を出しちゃいけないしがらみでも存在したのだろうか。しかしなあ、惜しいことだ。
Xを見てみたら、私と同じご意見の方が居た。どうしたって寛一郎のディスりになってしまうので、あまりそうはっきり書いている人はいないかなと思ったが、やっぱり。しかも、柿澤勇人推しのところまで一緒だった。
今日の大河べらぼう
— シャイニ (@shaminame) March 16, 2025
浄瑠璃とか富本節の太夫が出てきて寛一郎さんが演じていましたが
ちょっと柿澤勇人さんに演じてもらいたいなぁとか思いました🤭
(公暁の寛一郎さんにも鎌倉殿のご縁感じた)
今年の大河ドラマはオタクの心に刺さるエピソードが盛り込まれていて今を感じる☺️面白く見ています♪
しかし、寛一郎は「馬面太夫」という歴史に残る人気者を演じるには、ビジュアルでは完璧だ。彼の父・佐藤浩市や、祖父・三國連太郎のご両人はそんなに面長でもないから少々不思議だが、鱗形屋相手の決めぜりふは父や祖父のようにカッコよく決まっていた。そういう意味ではぴったりなのに・・・。
鱗形屋:(芝居小屋で待つ。太夫が来る)太夫、太夫!富本のためにも、どうかお考え直しを!耕書堂は市中の本屋と諍いを起こしております!あやつに任せれば、市中に売り広めできなくなるのですよ!
太夫:らしいねえ。だったら、なおさらあいつを助けてやりたいねえ。
鱗形屋:え?
太夫:それが、男ってもんだろ?(微笑んで去る)
「男ってもんだろ」をマッチョに強張って見せるのでなく、サラリと穏やかに言って見せたのが、まるで佐藤浩市。とても良かった。やっぱり、浄瑠璃の語りのところだけ、吹き替えにしてくれないかな・・・。
ちなみに、がっかりした鱗形屋にも恋川春町(小島松平家内用人・倉橋格)が微笑んだ。
恋川は「当家の家老は、そなたにまことにひどいことをした。それを忘れるなど、男のすることではない」と偽板で鱗形屋が調べを受けた際に、小島松平家家老が全面的に罪を擦り付けたことを居住まいを正して言い、鱗形屋を感激させた。
太夫も春町も、どちらも「男」を本質的な部分で言っている。力に頼らず、威張らず大声も張らず、だった。いや、女だってだよ?とは言いたくなるがね。わざわざ性別を強調しなくたっていいじゃないか。「人」でいいんじゃないかね、今どき。
今回、ロクに書けなかったし調べ物もできなかったので、他人様のものではあるが、記録のためにも素晴らしい解説のURLを張っておこうと思う。プロの仕事だよね。では、これで失礼。
(ほぼ敬称略)