旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

芝桜と秩父神社と天覧山と 西武池袋線・西武秩父線を完乗!

2024-05-07 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

急行の赤い電光表示も誇らしげに、飯能ゆきの10両編成が3番ホームに入ってきた。
この6000系電車は1992年のデビューと云うから、すっかりベテランの貫禄を身につけている。
西武鉄道線を完乗してから9年が経った。このあたりで再び沿線を呑み歩きたい。

最初に旅する池袋線の起点は西武池袋駅、池袋のランドマークとも言える西武池袋本店の1階にある。
このビルは昨年9月に米投資ファンドが買収、売場・ブランドは次々に取り扱い終了となり改装に入っている。
よもやこの青い看板が落ちるようなことにだけはなって欲しくない。。

所沢を出てから、池袋線は緩やかな勾配を直線的に駆け上がってきたのだけれど、
狭山市に差し掛かる頃には、耐え切れず、大きなカーブと急な勾配で狭山丘陵を登る。
途中下車した入間市駅も、そんなカーブと勾配の中にあった。

航空自衛隊の町入間には、旧陸軍航空士官学校跡地に「修武台記念館」という歴史資料館がある。
チャンスがあれば見学会に応募してみたい。今回は敷地外から F-86F-40 をパチリ。

隣接する「彩の森入間公園」では噴水が飛沫をあげ、新緑が木陰をつくっている。
沿線に住んでいたなら、バケットとチーズとワイン、それに文庫本を持って昼寝に出かけたい。

丘陵を登ってきたのは40000系電車、転換するとクロスシートになって座席指定列車として運用される。
FREE Wi-Fi や多目的トイレを設備し、乗って快適な新型車両だ。

入間市駅から3つ目の飯能駅はスイッチバック構造になっている。
ここから向きを変えて吾野方面へは本格的な山登りになるが、特急を除くほとんどの列車は飯能止まりだ。

飯能駅を背に飯能大橋まで来たら、薫風に吹かれて入間川沿いを下流へ向かって歩いてみる。
加治橋の袂に “天覧山” の五十嵐酒造を訪ねる。純米酒を中心に何本か求めたので何れご紹介したい。

旅の続き、西武秩父ゆきの4000系は、ライオンズカラーの2扉セミクロスシート車両。
いわゆる旧国鉄の急行車両のようなタイプ、たっぷりの旅情に車中酒を楽しむにはこれでなくちゃ。
構内コンビニでワンカップを買って準備万端、でも発車間際に駆け込んできたカップルと相席に。残念。

ところがだ、この華人のカップルは呑み人の前で、不埒なほどイチャつき始めるのだ。
しからば止むなく或いは対抗上?ボクはカポッと “秩父錦 金印” を開けるのだ。
コクとキレのある淡麗辛口にアテの “いぶりがっこチーズ” がよく相応う。これって絶品です。

終点ひとつ手前の横瀬駅で降りると、芝桜の丘(羊山公園)は近い。
秩父のシンボル武甲山を背景に、見ごろを迎えて、色とりどりの花じゅうたんが美しい。

芝桜は北アメリカ原産の多年草で別名をハナツメクサという。
数ある種類の中でも、この “スカーレットフレーム” と “多摩の流れ” が好きかなぁ。

横瀬駅を発った4000系が大きなS字を描いて荒川の河岸段丘を下りる。っとそこは秩父線の終点 西武秩父だ。
秩父線は池袋線の事実上の延伸路線なのだけれど、戦前に開通した吾野までの池袋線と区別している。
秩父線(吾野〜西武秩父)が開通した1966年、同時に特急レッドアローが誕生している。

西武秩父駅はフードコート「祭の宴」や日帰り温泉「祭の湯」を併設した駅舎を持つ。
レジャーランドのような駅は、休日ということもあって、家族連れ、グループ、カップルで賑わっていた。

これだけで腹が膨れるのは分かっていながら、どうしても食べたいのが秩父のB級グルメ “みそポテト” だ。
きょうは秩父そばの人気店「立花」を訪ねて、秩父地粉と武甲山の伏流水で打つ二八蕎麦をいただく。
少し豪華に過ぎる天ぷらを持て余しつつも、喉越し良く、二八を一枚、ズズっと啜って美味しい。

世に名高い例大祭 秩父夜祭(ユネスコ無形文化遺産)で知られる秩父の総鎮守 秩父神社を訪ねる。
お元気三猿、子宝子育ての虎 と つなぎの龍(いずれも左甚五郎作)と極彩色の彫刻が施された社殿は、
徳川家康の命により建てられたものというから、その時代の、例えば東照宮の雰囲気に似ていなくもない。

さて、御本殿に奉納されていた菰樽の一つ “武甲政宗” の蔵が、その重厚な佇を残している。
お約束通りに利き酒を楽しんだら、お気に入りの純米酒を求めてご満悦なのだ。

さて今宵の一杯は飯能駅まで戻って、いや宵というより寧ろ昼呑みの時間ではある。
駅近の隠れ家的居酒屋「なかよし」は、午後2時に縄のれんが掛かる稀有な店だ。

件の縄のれんを潜る。L字に切った年季の入った白木のカウンターが7席、居酒屋というより小料理屋って感じ。
お通しの大根とごぼう天の “おでん” が絶品、上品な出汁がいい味を出している。
唯一がっかりしたのは、地酒の “天覧山” を切らしてしまったんだって、そりゃないよ。

それでは東北の酒で揃えようと、一杯めは秋田県は八峰町、山本酒造店の “白瀑 ど辛” を択ぶ。
“お刺身盛” をつまみながら、日本酒度+15の超辛口が飲みごたえ十分なのだ。

後客が入ってくる。座敷に入った予約客はゴルフコンペの帰り。
小上がりに上がり込んだ5人はリュックを背負ってきた。
なるほど合点が入った。午後2時から暖簾をかけるのは、こういう来客ニーズがあるからだね。

次なるアテは “若鶏の甘唐揚げ”、いいテリをしてるし、これは美味しい。
福島の “会津中将 純米” は、濃醇だがしかしすっきりとした味わい、肉料理にも上手に相手をしてくれる。

さてと、カウンターに常連の二人連れが入るのを潮に店を出る。八十八夜を過ぎて外は明るい。
ゴルフに登山に呑み鉄に、大人の遊びに優しい町に感謝しながら、西武池袋線、西武秩父線の旅を終えよう。

西武鉄道 池袋線 池袋〜吾野 57.8km 完乗
西武鉄道 秩父線 吾野〜西武秩父 19.0km 完乗

君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。/ 中原めいこ 1984


剱岳と越前そばと月清しと 北陸新幹線を完乗!

2024-05-03 | 呑み鉄放浪記

敦賀延伸開業から1ヶ月、桜の季節を待って北陸を旅する。
呑むことと乗ることに的を絞って、北陸3県を早回しに訪ねてみたい。

背後から朝日を浴びて、午前7時前の赤れんがは驚くほど静かに佇んでいる。

07:20、22番ホームから2本目の “かがやき” が滑り出す。

全長22.3kmの長大な飯山トンネルを抜けると、車窓左手に頸城三山が現れる。
連聳する火打山と活火山の焼山を従えて、“越後富士” 妙高山が秀麗に裾野を広げている。

トンネルの合間にチカチカと日本海が煌めくと、やがて “かがやき” は富山平野へと飛び出す。
こんどは立山連峰の “剱岳” が遥か昔に氷河に削り取られた峻険な山容を見せる。

東京から2時間、満開の桜が迎えてくれた富山駅。
枝いっぱいの淡い桜色と、ハンギングバスケットの橙や黄それに紫のコラボレーションが華やかだ。

富山地方鉄道の市内線にガタゴト揺られること5分、丸の内電停を降りると富山城のお濠端だ。
天守閣と石垣、お濠に桜色を映すソメイヨシノ、ビルの間に煌めく立山連峰、この共演は美しい。

かつて高山本線のホーム上で繁盛していた「立山そば」は、とやマルシェの一角で出汁の香りで誘っている。
思わず押した券売機の “白えび天そば” 、白えびの香ばしさと薄めの出汁を絡めてズズッと美味しい。 

旅はテンポよく進む。13:40発の “つるぎ” は富山・金沢と敦賀を結び、名古屋・大阪方面へと連絡する。
真っ昼間の便はまだまだ輸送力に余裕があって、乗客は間違いなく訪日外国人観光客の方が多い。

 

“三笑楽” は合掌造りで有名な五箇山の酒、豪雪地帯の冬の寒で醸した芳醇辛口が美味しい。
金沢までは20分と少々、“白えび小判” を添えて、カポッとワンカップ一杯がちょうど良い。

金沢駅ではいつもの鼓門が迎えてくれる。この日は初夏を思わせるような陽気になっている。
どこへ行こうか考えた末、彦三町から浅野川沿を主計町茶屋街へ向かう。枝垂れ桜が川面に花筏を浮かべている。

柳の芽が揺れる「ひがし茶屋街」は紅殻格子の町家を並べて、石畳を漫ろ歩くのが楽しい。
朱に縁取られた花街の街灯が点る頃に訪れたら、さぞかし美しく幻想的だろうと想像する。

 

この街にも溢れる訪日外国人観光客、その喧騒から「きんつば中田屋」の階上に逃れる。
呑んでばかりのボクだけど、たまには甘味もいいだろうか、しっとりと “ロールケーキ” が美味しい。

慈母観世音菩薩を見上げる加賀温泉駅、新規延伸区間2つ目の駅は金沢から20分の乗車。
今宵は山代温泉の老舗に投宿して、加賀能登の野山の味覚を肴に一杯やりたい。

そして今宵の酒はお隣は山中温泉の “獅子の里”、スッキリとした切れ味の超辛純米を愉しむ。

少しだけお膳を紹介する。日本海の「割鮮」はあられ塩でいただく。この超辛の酒が合うね。
「進皿」の春鯛大根挟みは新玉ねぎのソースで、「羹(あつもの)」の能登豚野菜道明寺蒸しは生姜の餡で美味しい。

「台物」の和牛鍋、豚骨醤油出汁仕立てで、追い麺にべんがらこんにゃく麺が珍しい。
釜炊き御飯は朝利めし、薄揚げの甘味と三つ葉の香りと相まって美味しい一杯だ。

翌日の “つるぎ” は、まずは隣の芦原温泉まで8分の乗車。
一度は訪ねたいと思っていた丸岡城までは、ここから路線バスでアプローチできる。

丸岡城は北陸唯一の現存天守、織田信長の時代、柴田勝豊が一向一揆への備えとして築いた。
荒々しい野づら積みの石垣に載った2重3階の天守に、盛りを過ぎたソメイヨシノが花吹雪を散らす。

さらに隣の福井までは9分の乗車、缶ビールを開けるまでもない。新幹線というインフラの凄まじさを感じる。

新幹線の延伸開業で新しくなった東口広場には、トリケラトプスの親子が出現した。
ふくい観光案内所の屋上には、ハートのモニュメントと2体のフクイティタン。恐竜の増殖が止まない福井駅だ。

この週末、東口のハピテラスでは、福井県内23蔵を集めて「春の新酒まつり2024」が開催中。
この手のイベントには関心が薄いボクは、駅から10分歩いて常山酒造の蔵を訪ねる。
試飲を楽しみ、お気に入りを何本か仕込んだから、いずれ家呑みでご紹介したい。

軽快なチャイムがホームに響いてまもなく、緩やかなカーヴを描いて東京からの “かがやき” が進入してくる。
終点の敦賀まではあと2区間、時間にしてわずかに10分少々の乗車になる。

敦賀駅のまるで要塞のような堅牢で大きな新駅舎にまずは驚くしかない。
名古屋から、大阪からの特急の乗客を8分で新幹線に乗継させるため、どうしても必要な施設らしい。
いつの日か新幹線が大阪方面に延伸したら、ここが寂しい空間になってしまうだろうと想像する。

駅に降り立ったら、真っ先に佐渡酒蔵先生にご挨拶。この旅でも美味しいお酒を愉しんでます、っと。
松本零士氏は敦賀出身?っと誤解するほど、街角に「銀河鉄道999」と「宇宙戦艦ヤマト」が溢れている。
お気に入りは「別離」という作品、子どもの頃、映画のこのシーンには泣いた。

かつて1枚の切符で東京からベルリンまで旅する「欧亜国際連絡列車」があった。
毎週金曜の午後8時25分、東京発金ヶ崎(敦賀港)ゆきの夜行急行の乗客は、
ここでウラジオストック航路に乗り継ぎ、遥かヨーロッパをめざした。

なんともロマンのある、そしておそらく過酷な旅だったろう。
かつてのウラジオストック航路の桟橋周辺には海上保安庁の巡視船が並んでいる。
時を経ても、この海と空の「あお」と欧亜国際連絡列車の乗客が見た「あお」はきっと変わらない。

旅の終わりに “越前おろしそば” を啜る。
蕎麦前にいただいた “月きよし” は、20年前に廃業してしまった酒蔵の酒を復刻したもの。
氣比神宮に参拝した松尾芭蕉が詠んだ句『月清し 遊行の持てる 砂の上』からいただいたそうだ。
今宵、つるがの湊で見上げる清々しい月を思って、北陸新幹線の旅は終わる。

北陸新幹線 高崎〜敦賀 460.7km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
真夜中過ぎの恋 / 安全地帯 1984


Biz-Lunch Sun'sキッチン@東池袋「天津飯」

2024-05-01 | Biz-Lunch60分1本勝負

池袋のランドマークSunshine60、オフィスフロア専用エレベーターに乗り込む。
とある階で降りると、南面いっぱいに広がるカフェテリア「Sun'sキッチン」がある。

給食会社が受託しているのか、テナントが共同運営しているのかは分からないけれど、
案外と本格的で美味しい賄い料理を食べることができる。

一応、入居テナント従業員専用らしいけれど、ボクたちが席を占めるのに差したる制限はなかった。
2〜3人連れのご同輩のサラリーマン、スマホ片手に一人ランチのアパレル店の販売員、
ちょっぴり混沌とした雰囲気がまた楽しくもある。

そしてボクはと云えば、熱々の餡をかけた “天津飯” をいただく。
カニカマほぐしと万能ネギを散らして見目麗しく、そして美味しい。
お近くにお住まいのあなた、一度、オフィスフロア専用エレベーターに乗ってみたら如何だろう。

<40年前に街で流れたJ-POP>
誘惑光線・クラッ! / 早見優 1984


酒と肴と男と女 おでん処 大酉茶屋@金沢

2024-04-17 | 日記・エッセイ・コラム

ひと頃二人は何度か金沢を訪れた。
それぞれの拠点からちょうど良い距離だったこともあるけれど、
訳ありの二人を包み込んでしまうには、この街は手頃な大きさだと思うのだ。

スナップえんどう白和え
ホタルイカ酢味噌

9年前に新幹線が延伸してからこっち、この街は今までに増して多くの観光客を迎えるようになった。
共通の知り合いにばったりという事も無いとは限らない。
くぐる暖簾は、人気の割烹や居酒屋から、渋い小料理屋とか地味めな酒場へと変わった。

先一杯(まずいっぱい)
イイダコ煮

駅前の喧騒を逃れた路地裏の店で提供される酒は、冷も燗も “菊姫” の一択。
鶴来町は白山比咩神社への参道にある蔵へは、ローカル私鉄に揺られて訪ねたことがある。
“先一杯(まずいっぱい)” は旨口だけど軽やかな口あたりの純米酒だ。

金劔
あじたたき

袖振り合うような狭いカウンター、蛇の目のお猪口で差しつ差されつするのが嬉しい。
“金劔” は鶴来町にある金劔宮(きんけんぐう)からあやかった、米の甘味・旨味を感じる優しい女酒。

山廃純米
もも串、せせり串、ささみ串
くるまふ、梅貝、竹の子 etc

焼き物は塩で、レモンを絞る。でも柚子胡椒かワサビか分かれるのが二人の好みだ。
濃醇で飲み応えがある “山廃純米” は、酸味と濃さのある剛健な男酒。
加賀麩やら梅貝やら、金沢おでんらしく盛り合わせてもらう。香り立つ深みのある出汁が美味しい。

次々に暖簾をくぐってくる常連客に席を譲るように店を出る。
街はちょうどいい感じに黄昏れて、二人が肩を並べて歩くのを許してくれる。
えんじに浮かび上がった鼓門を見上げたら、一緒に居られる時間もあと僅かだ。

Hello, My Friend / 稲垣潤一&高橋洋子


Holiday-lunch RESTAURANT SALT@浦和

2024-04-03 | 日記・エッセイ・コラム

信州上田の “亀齢ひとごこち” が注がれるカウンターはフレンチレストラン。
ペアリングコースをお願いすると5種のお酒を Lunch Course の料理に合わせてくれる。
爽やかな香りの純米吟醸が合わせるのは、旬が訪れた “ほたるいか×菜の花のリゾット” だ。

蕗のソースを絡めた “さわら” は蕪蒸しを添えて、このほろ苦い春の味が美味しい。
白ワインはブルゴーニュの “エジェルテ” のシャルドネ、この辛口がいい。

本日のお肉は “鴨”、ソースは鴨のレバーと八角にマデイラ酒、濃厚だね。
合わせるカベルネ・ソーヴィニヨン “パスカル・トソ” は辛口のミディアムボディ、ベリー系の果実味?
いつもは勝手気ままに択ぶお酒も、たまにはお店のコーディネートに委ねるのも楽しいですね。

<40年前に街で流れたJ-POP>
Rock'n Rouge / 松田聖子 1984 


氷川神社と石神井川の桜と超辛口ばくれんと 埼京線・赤羽線を完乗!

2024-03-30 | 呑み鉄放浪記

林立する高層マンションを縫うように、軽エメラルドグリーンの10両編成が疾走する。
大宮から赤羽そして池袋、呑む旅にはぴったりの街を繋ぐのが埼京線・赤羽線の旅だ。

13路線が乗り入れる首都圏の北の玄関口だけど、街の顔であるはずの駅舎はなんだか懐かしい佇まい。
溢れる人と、古臭くて狭い駅前広場のアンバランス、これもなかなか味がある。

埼京線は新幹線下の地下ホームから出発する。川越発の快速をやり過ごして、19番線の当駅始発に乗車する。
僅かな距離の旅だから、ロングシートでうららかな春の日を浴びながら、ゆるりと行きたい。

大宮は「鉄道のまち」だ。大宮駅、大宮工場、大宮操車場の設置が人を呼び、賑わいを創った。
そして大宮の歴史は武蔵一之宮 氷川神社の歴史とともにある。旅の始めにここを詣でておきたい。

大宮駅から氷川参道そして神社まで参詣者の列が途切れることはない。
初詣の様と言ったら大袈裟だけど、春の陽に誘われて、大宮公園の花見がてら氷川神社に向かう人は多い。

さて埼京線は新幹線と並走して高架線路が都心に向かって延びている。
健脚自慢のエメラルドグリーンは、時折E5系やE7系にバトルを挑むが、たいていは返り討ちに遭っている。

ふたたび東京上野ライン、湘南新宿ラインと出会う赤羽駅に途中下車。結構な乗降客の入れ替わりがある。
一番街のセンベロ酒場で昼呑みを、っと思ったけど、それでは余りに読めた展開と思い直して旅を続ける。

エメラルドグリーンの電車が走る赤羽線の区間は古くからの住宅街、埼京線区間とは雰囲気が違う。
車窓の桜花に見惚れて途中下車、この線路沿いの並木は東京家政大学のキャンパス。

続けてエメラルドグリーンは石神井川を渡る。この狭い谷の両岸に900本の桜が咲き誇って美しい。
この季節には、旧中山道板橋宿から王子の飛鳥公園まで、桜の下を歩きたい。

多くの乗客を吐き出して池袋駅の1番ホーム。埼京線・赤羽線は乗り通してしまえば僅かに30分少々の旅だ。
さてっと、池袋で呑むのもやはり芸がないから、2駅ほど戻ろうと思う。

十条駅から北へ、赤羽線と並行するように延びるアーケードは、200店舗がひしめく十条銀座商店街。
昭和風情のアーケードを漂って、やがてボクは一軒の立ち呑み屋に吸い込まれるのだ。

そして昭和の親父たちを真似て、ボクは “赤星” をグラスに注ぐ。この苦味が泣かせる。
先ずはお手軽に “サバ缶キュウリ” を突っついて、やがて “ミートボールのトマト煮” にクラッカーを散らす。

花冷えの “ばくれん” をお嬢さんが注いでくれる。山形は亀の井酒造の超辛の吟醸酒だ。
アテはホワイトボードに見つけた “ネギトロ”、これには目がない。わさび醤油を垂らして美味しい。

こだわってラインナップした地酒は一杯がワンコイン、かなり優れたパフォーマンスだ。
二杯目の “AKABU” は盛岡の酒。“バラ肉と厚揚げのニンニク炒め” をつまみに、清涼感溢れるやや辛いがいい。

食べ歩きが人気の昭和な商店街、立ち呑み屋のアテも逸品揃いで、きっとまた寄ってしまいそうな十条。
アーケードを這い出る頃には、いい感じで暗くなっている埼京線・赤羽線の旅だ。

埼京線 大宮~赤羽 18.0km 完乗
赤羽線 赤羽~池袋   5.5km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
孤独なハート / 長渕剛 1984


JY17 山手線立ち呑み事情 新宿ばーる@新宿

2024-03-27 | 大人のたしなみ

立ち呑みで巡る山手線の旅もようやくこれで半周、今宵は新宿で呑みたい。
バスタ新宿が出来てすっかり新宿駅の顔になった感のある新南口を降りる。

西新宿1丁目交差点を渡って2つ目の路地を右に折れると何軒かの立ち呑み屋がある。
呑み人が択んだのは黄色い看板を出した店、急な階段を地下に降りる。

 

一番乗りしたこの店で、ボクはロンドンのパブを気取ってみるのだ。
苦味のある Guinness を片手に Fish&Chips を抓む。いい感じのスタートだ。

白は DONA TERESA、なんて事のないテーブルワインだけど、一杯500円とコスパが良い。
次なるアテは “ささみのバルサミコ酢”、これは美味しい。

熱々の鉄鍋で登場した “牛筋のトマト煮”、これも絶品、ワインに合う。
赤は CAPPELLA ROSSO の一択、ピエモンテのワインだね。

ほろ酔いになった頃、決して広くはないお店はいつしか満員になっている。
階段を降りてくるのは若い方が多いね。カップルも。それではオヤジは退散しますか。

新宿駅には信州へと向かう特急も発着している。松本あたりで馬刺か山賊焼で一杯やりたいなぁ。
さて、次回は遠からず代々木でお会いしましょう。ごちそうさまでした。

<40年前に街で流れたフュージョン>
Sunspot Dance / 松岡直也 1984


アクセス特急とハイビスカスの翼と雨宿りの大衆酒場と 成田空港線・北総線を完乗!

2024-03-23 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

オレンジのラインを纏い、シャープで精悍な3100系が、120km/hと120km/hですれ違った。
“アクセス特急” は成田空港と羽田空港を1時間50分で結んでいる。

5つのホームに忙しなく電車が発着する京成高砂駅も、入り口はとっても地味な下町風情の駅なのだ。
この町には夕刻、呑みに帰ってくることにして、今日は北総鉄道北総線と京成成田空港線を乗りたい。

青砥からの複々線を中川にかかるガーダーを響かせて3700系電車が近づいてくる。これは京成電鉄の車両。
京成高砂から成田空港の鉄道は複雑で、4つの鉄道会社が第3種鉄道事業者として線路等の施設を所有し、
北総鉄道と京成電鉄が、第1種または第2種鉄道事業者として路線を運営している。

さらに京成高砂から印旛日本医大の間は両線がダブっていると言うのだから、もう素人には何のことやら。
ややこしい仕組みを理解しようとしていると、各駅停車は新鎌ヶ谷駅に滑り込み、少々停車すると云う。

少し伸びでもしようかとホームに降り立つと、注意を喚起するチャイムが鳴り出した。
轟音が近づいてくる。っと振り向く暇もなく160km/hの猛スピードで真打 “スカイライナー” が飛び去る。

白井駅に途中下車した。豊かな自然が残る閑静な住宅街が広がってる。
この静かな住宅街を歩いて、ちらほらと梨畑が見えてくる辺りに目的の食堂がある。

地産の野菜をふんだんに使った惣菜サラダーと酎ハイレモンを一杯。
菜の花のお浸し、なすと厚揚げの煮物、かぼちゃサラダ、どれも美味しいアテになる。
そして “ピリ辛味噌うどん”、これがまた良い。思わず二杯目のジョッキーを注文してしまうのだ。

満腹を抱えて乗り込む2番手ランナーは、北総鉄道所有の愛称C-flyer 9100形、これもまた斬新なデザイン。
各車両の車端部にはクロスシートがあるから、空いている平日の日中なら車中酒ができるかもです。

時計塔とドーム屋根が印象的な駅舎は印旛日本医大駅、北総鉄道北総線の終着駅である。
千葉ニュータウンに位置するこの駅舎のデザインテーマは「都市と田園の共生」なんだそうだ。

多くの列車がこの駅で折り返すから、次の成田空港行きまでは40分の待ち合わせ。
ショルダーバックに忍ばせていた新書で時間を潰すうちに、オレンジのラインの8両編成が駆け込んでくる。

印旛日本医大から先は京成成田空港線の単独路線。水鳥が遊ぶ印旛沼を眺めて、成田空港までは所要15分。
成田空港駅のきっぷ売り場はJRも京成も長蛇の列、この辺りが訪日旅行の最初のボトルネックだろうか。

折角だからと展望デッキに上ってみた。赤い翼に混じってハワイアン航空のA330が駐機中。
ハイビスカスを飾ったPualaniさんの横顔に、久しぶりにハワイで羽根を伸ばしたいと思うのだ。

京成高砂まで戻ってきた。突然降り出した大粒の雨に追われて、今宵は南口の大衆酒場に駆け込む。
カウンター6席、テーブル4卓の完全なるローカルな店、ジョッキまで冷やした生ビールのレベルは高い。

コロッケのような分厚い “ハムカツ” がジューシーで美味い。ボクの好きな “たぬきとうふ” は箸休めに。
並びに座ったご常連お二人の消防団談義を聞きながら、“白ホッピー” を軽く2度ステアする。

ナカをお代わりしたら “豚バラ生姜漬け焼き” を焼いてもらう。これがまた絶品。
っと雨雲レーダーを眺めていたら、10分後にちょっとだけ雨が止みそうだ。この機会は逃せない。
雨宿りの大衆酒場で〆る今宵も渋めな北総線と成田空港線の呑み鉄の旅なのだ。

京成電鉄 成田空港線 京成高砂〜成田空港 51.4km 完乗
北総鉄道 北総線 京成高砂〜印旛日本医大 32.3Km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
Voyager / 松任谷由実 1984


ボクも町中華で飲ろう 登龍@新馬場

2024-03-20 | 日記・エッセイ・コラム

品川駅ではやや肩身がせまい感じの各駅停車に乗車して2駅、新馬場駅の高架で浦賀行きを見送る。
階段を降りて品川神社の新馬場参道を東に進むと旧東海道に当たる。品川方面に戻るといつもの登龍だ。

ときおりランチ遠征する大盛りの聖地・登龍、わざわざ休日に訪ねるのは、ギョービーをしたかったから。
小皿の “ピリ辛もやし” を突っつきながら “一番搾り” を呷っていると、ほどよくきつね色の一皿が登場する。
お酢8醤油2をつけて、大ぶりな “餃子” を口に放り込むと、あちちと肉の旨味が溢れて美味しい。

たまに昼から飲んでる商店街の旦那衆が飲んでいた “スーパーチューハイ” を頼んでみる。
ランチメニューにはない “豚肉と茄子の味噌炒め” の濃厚な味に、スッキリしたレモンの果実味が合うね。

〆はお隣さんに倣って “チャーシューメン” を。最近になってこの店は麺もイケることに気付いたボクだ。
登龍でギョービー、ささやかな夢が叶ったのは、4月上旬を思わせる温かな休日の昼前なのです。

<40年前に街で流れたJ-POP>
渚のはいから人魚 / 小泉今日子 1984


成田山新勝寺と北ウイングとシャリキンと 京成本線を完乗!

2024-03-16 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

大きな弧を描いて青砥駅に京成成田行きの快速特急が進入してくる。
スカイライナーのルートを成田空港線に譲って、この快速特急が京成本線の花形だ。

ソメイヨシノに先行して、上野公園前に寒桜が満開だ。
アジア系、欧米系を問わず、相変わらず外国人が多い。映える日本の桜を背景に自撮りに興じている。

コツコツと階段を登っていくと、本来この公園の主役である西郷隆盛が佇んでいる。
こんな穏やかに晴れた休日には、美術館でも巡って、テラスで珈琲を楽しむのも良いかもしれない。

京成上野駅は西郷隆盛の足元に2面4線のホームを持っている。
2番ホームから滑り出したスカイライナー41号の後を追って、快速佐倉行きで京成本線を呑む旅は始まる。

轟音を響かせて江戸川橋梁を渡ると、3700系の8両編成は千葉県に入る。
車窓に見える河川敷の球場には、少年たちが明日の大谷翔平をめざして白球を追いかけている。

京成佐倉に降りたのは初めてかもしれない。駅を背に道路は佐倉城址に向かって登り坂だ。
佐倉城址公園も桜の名所ではあるが、開花まではあと1週間は必要ではないだろうか。
代わりに土塁と生垣の通りに旧佐倉藩士の武家屋敷を訪ねる。凛とした雰囲気が良い。

駅への帰り道で「房州屋本店」という老舗の蕎麦屋さんを見つけて先ずは一杯。
冷酒を舐めながら、山葵をきかせて “そば豆腐” をいただく。そばの実の食感が楽しくもある。 

なめこ汁を従えて “舟せいろ” が登場する。
おろし、なめこ、わさび、と薬味を変えつつ舟形のせいろ一枚を楽しむ。美味しい午後だ。

旅の後半は3000系の8両編成、今度のは快速の成田空港行きだ。
とは云え次の目的地である京成成田まではわずかに10分と少々、それでも成田山には寄らない訳にいかない。

“長命泉” の蔵元を冷やかし、川豊本店から漂う蒲焼の香りを振り切って、成田山の門前に辿り着く。
那羅延金剛(ならえんこんごう)と密迹金剛(みっしゃくこんごう)が睨みを利かす仁王門には真紅の大提灯、
訪日外国人観光客が喜びそうな大提灯には「魚がし」の文字、築地の魚河岸講の奉納出そうだ。

階段を登り切ると、弘法大師が自ら彫ったとされる御本尊不動明王を納めた大本堂、
そして西からの薄日に照らされて、十六羅漢を彫りめぐらせた三重塔の朱が美しい。

アンカーの快速成田空港行きは都営浅草線から乗り入れる5500形、
地下鉄車両とは思えないスタイリッシュなフェイスは、歌舞伎の隈取りを現代風にアレンジしたのだそうだ。

京成成田から成田空港間は1978年の開港に合わせて開通した。
呑み人も仕事柄ここへはずいぶん通った。40余年を経ても変わりなくグリーンのサインは輝いている。

映画のシーンのように すべてを捨ててく airplane
北ウイング 彼のもとへ 今夜ひとり 旅立つ

海外渡航が特別なものであった時代、昭和な呑み人には染み付いた中森明菜の曲だ。
実際、旅人の数だけドラマがあり、その舞台であるのが北ウイングだと思う。

第2ターミナルから無機質な通路を延々と歩くと、東成田という忘れ去られたような薄暗い地下駅に辿り着く。
ここは開業当時の成田空港駅、この駅を起点に芝山千代田駅までを芝山鉄道が、京成成田へ東成田線が走る。

旅の終わりに、芝山千代田から京成成田間を乗り通す。
時間にしてわずか10分の旅、芝山千代田での乗客はエアカーゴ関係にお勤めの方が多いようだ。

市役所通りを跨ぐ開運橋の袂に「寅屋本店」の赤提灯が揺れている。今宵は昭和レトロな大衆酒場で呑みたい。
ここのビールは “赤星” の大瓶、泣けてくるねぇ。磨かれて角がすり減ったカウンターで一人酒だ。

 

“刺身3点盛り” は、マグロ、真鯛、はまち。良いところを切っている、侮れない一皿だ。
傍に春の苦味を纏って “菜の花の辛子酢味噌”、大人のアテって感じだね。これは美味い。

熱々の餡をかけて “蓮根のはさみ揚げ” をいただく。隣の親父さんが食べていたのに倣ってみる。
餡に焼けそうな口に “シャリキンホッピー” を流し込んで美味しい。
そう、キンミヤのシャリキンが飲めるこの店は、すでに呑み人お気に入りの一軒なのだ。

京成本線 京成上野〜成田空港 69.3km 完乗
京成東成田線 京成成田〜東成田 7.1km 完乗
芝山鉄道    東成田〜芝山千代田 2.2km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
北ウイング / 中森明菜 1984


十石舟と金のかっぱと金鵄政宗と 雨水の京都旅

2024-03-13 | 日記・エッセイ・コラム

少し前のことですが、城南宮の「しだれ梅と椿まつり」を訪ねた翌日、ふらりと伏見を歩いた。
十石舟が浮かぶ運河沿いを歩き、寺田屋旅館を覗いて、金色のかっぱと戯れたころ、ほろ時雨。
それではと、冷たい雨が通り過ぎるのを酒蔵小路で雨宿り、ここは伏見十八蔵の酒が楽しめる。

最初に択んだ “金鵄正宗”、五百万石で醸した落ち着いた香りの旨酒だ。アテに “金平柚子風味” が美味い。
“きびなご甘辛煮” を抓みながら二杯目は “花洛”、濃厚な旨みのアテにとろりと生酛づくりの純米酒が合う。
帰りの車中酒に “英勲” を仕込んで、結局呑むばかりの雨水の候の京都旅、そろそろ終わりを迎えるのだ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
モニカ / 吉川晃司 1984


Kyoto メトロに乗って 上賀茂神社と枝垂れ梅と玉乃光と 烏丸線を完乗!

2024-03-09 | 呑み鉄放浪記 地下鉄編

国際会館行きの10系電車と近鉄線から乗り入れる3200系電車がツーショットで竹田駅。
満開の知らせが届いて、城南宮の「しだれ梅と椿まつり」を訪ねた。

城南宮を訪ねる烏丸線の旅は国際会館駅から始まる。
八瀬の山々を背景にして、静かな朝の宝ヶ池と京都国際会館はまだ冬の装いだね。

始発の時点ではまだガラガラの竹田行き、席が温まるまもなく2つ目の北山に途中下車。
カフェやブティックが並ぶ北山通りは、なかなかモダンでおしゃれな街並みだ。

開店時間を狙った洋食カフェ「和蘭芹(パセリ)」に、幸運にも空席があった。
せっかくの京都だから、美味しいブランチを楽しみたい。っと地元の人気店を訪ねる。

“ベーコンとモッツァレラチーズのトマトソース オムライス” ってちょっと長い。
とろりとチーズがのびてトマトソースが美味しい。

賀茂別雷神社(上賀茂神社)は山城国一ノ宮、平安京以前から栄えている京都で最も古い神社らしい。
一礼をして二の鳥居をくぐると、細殿の前に二杯の立砂が美しい。立砂は神様が降り立つ際の目印だ。

結構な列に並んで朱塗りの楼門を抜けると、流造りの本殿と権殿が現れる。
厳かに二礼二拍手一礼、今宵も美味しいお酒が呑めますように。

北山駅に戻って烏丸線の旅を続ける。10系電車の先頭車両には伝統産業素材の展示をしている。
 呑み人が乗った編成には京扇子の展示が。紅葉に流水、寒牡丹と秋冬の繊細優美な飾扇子が美しい。

3つ進めて今出川で途中下車。御所の北側に境内を広げる相国寺は京都五山第二位に列せられる名刹。
この日、承天閣美術館では「若冲と応挙」が会期延長中で、とても幸運な訪問になった。

美しいレンガ造の建物「有終館」は1887年に竣工した国の重要文化財。
今出川のランドマークは同志社大学であることに異論はないでしょう。

烏丸線は北大路駅から先、文字通り烏丸通の下を真っ直ぐに南下していく。
御池、三条、四条と頭の上を繁華街が流れていくけれど、この界隈を訪ねるのは暗くなってから。

冬の澄んだ青空を突く京都タワー(131m)、町家の瓦葺きを波に見立て、街を照らす灯台のイメージだそうだ。
烏丸線は京都駅でごっそり乗客を入れ替えて、今しばらく南下を続ける。

京都から駅を3つ数えると、突然に右手から西陽に射られて、3200系は終点の竹田駅に滑り込む。
多分2本に1本はこのまま近鉄京都線に乗り入れてさらに南へと走るのだ。

方除けの大社 城南宮は、雅やかな平安時代の歌会「曲水の宴」を再現することで知られる。
今頃は「梅が枝神楽」の季節、梅の花を冠にさした巫女が梅の枝を手に神楽を舞う。

「しだれ梅と椿まつり」を迎えた春の山で、150本の薄紅や紅や白が枝垂れて春の訪れを告げる。
今回のボクは、枝垂れた梅より苔むした庭に注目、真紅の “落ち椿” や薄紅を散らした梅の花弁がキレイだ。

夜の帳が下りる頃に四条駅を降りて高辻東入ルると酒粕レストランがある。
箪笥製造卸を営んだ京町家をリノベーションした店は、伏見の玉乃光酒造が営む酒粕おでんと一品料理の店だ。

結論から言うと、どの料理も美味しいご機嫌な店だった。次の機会にも必ず訪ねたい。
一杯目は “CLASSIC” と名付けた生酛系の純米吟醸酒、酸味と旨味がいい。
“酒粕ポテトサラダ” と “トマトとツナの丸ごとサラダ” を並べてご機嫌なのだ。

金継ぎを施した洒落た片口にフレッシュな “なまざけ” を注いでもらう。
“プルーンと酒粕クリームチーズの生ハム巻き” に、ワインの様なフルーティーな味わいを合わせる。
一転して “鯛の酒粕なめろう”、これは次の一杯に合わせようか。これは旨い肴だ。

“鰤の酒粕味噌柚庵焼き” に “京都ポークの酒粕味噌柚庵焼き” と柚で攻める。これ酒粕に合うね。
“杜氏しか飲めない•••” と謳った雄町の純米吟醸酒は、賞味期限1週間の搾りたての無濾過生原酒。
つまり、ここに来ないと飲めないってことね。これは飲んでおかないと。

最後に “酒粕おでん” を盛り合わせてもらう。味噌と酒粕を合わせた出汁がとろりと美味しい。
この華やかなラベルは京都産の酒米「祝」で醸した純米吟醸、酸味と旨みがバランスした優しい酒だ。

そしてボクはこの “純米吟醸 祝” を土産に抱えて三条烏丸辺りのホテルへほろ酔いで戻る。
さすがは京都、烏丸線の旅は美味しい旅なのだ。

京都市交通局 烏丸線 国際会館〜竹田 13.7km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
くちびるヌード / 高見千佳 1984


Biz-Lunch 明治軒@心斎橋筋「エビフライ&ポークカツ」

2024-03-06 | Biz-Lunch60分1本勝負

大阪に出張したら、一度この店を訪ねたいと思い、雨の中を長堀通を越えて心斎橋筋を歩きて来た。
磨き抜かれたテーブルと長椅子が老舗を物語る。創業は昭和元年なのだと云う。

当然ながら名物オムライスを食べに来たのだけれど、急遽、ホワイトボードの “サービスランチ” に変更。
熱々の “ポークカツ” がケチャップソースで美味しい。どこか懐かしい感じがする。
大阪の “エビフライ” って、エビを開くの?アジフライの形をしているね。
このホクホクをタルタルソースをたっぷり付けて頬張る。これもいいね。

引も切らない席待ちの列を年嵩の姐さんがテキパキと捌いて、地元の方も観光客も美味しい洋食を楽しむのです。

<40年前に街で流れたJ-POP>
微風のメロディー / 尾崎亜美 1984


Osaka メトロに乗って 東成しんみちロードの串揚げ居酒屋で 今里筋線を完乗!

2024-03-02 | 呑み鉄放浪記 地下鉄編

今里筋線の路線図を見ると興味深い。大阪市街の東端を舐めるように南下し都心部に向かうことはない。
さてと今宵の一杯はどこでやるのか考えものだけど、まずは考えるより先に旅に出たい。

市営住宅が立ち並ぶ雨上がりの井高野に、ど派手な柑子色のゲートが口を開けている。
革靴をコツコツ鳴らして長い階段を降りていくと、これまた柑子色のラインを引いた80系が待っている。

なんと可愛らしい。15m×4両のミニ地下鉄は、まるで遊園地の乗り物か?と言ったら言い過ぎか。
たぶん都営大江戸線や仙台市地下鉄東西線と同じようなサイズだと思う。

都心に入らない今里筋線の沿線いは観るべきランドマークは少ない。
関目成育駅から徒歩10分、訪ねた野江水神社は水火除難の守護神、淀川の氾濫に悩まされた土地柄か?
旧京街道に絡む太子橋今市から関目成育の間は、じっくり歩いてみると楽しいかも知れない。

柑子色の4両編成は23分かけて今里駅に終着し、ここで千日前線と接続する。
今里筋線は都心に乗り入れない代わりに「いまざとライナー」というBRTシステムが阿部野橋へと走る。

そして呑み人は、東成しんみちロードへと紛れ込む。
訪れたのは午後8時過ぎだから、果たしてこの商店街が賑やかなのか廃れているのか分からない。
ふらふらとシャッターが降りた狭いアーケードを進むと、串揚げと描かれた白い提灯が揺れている。

髭の大将と笑顔の素敵なお嬢さんに迎えられて、「のすけ」は15〜16席のコの字カウンター。
ご常連で埋まるこのローカルな居酒屋の暖簾を潜るには、少なからず勇気を振り絞る。
先ずは生ビールと “刺身盛り合わせ” で。ワサビたっぷりに “水たこ” が美味しかったなぁ。

ご自慢の串揚げも “おまかせ五本盛り”、タラ白子から始まって、黒毛和牛ハネシタ、豚肉ヘレ、
下仁田ネギ、それに燻製合鴨ロース粒マスタード。どれも美味しい。
大将が勧めてくれたのは “日日 山田錦”、優しく甘い香りの伏見の生酛が串揚げにも相性がいいね。

“浪の音” は大津の酒、これも大将に勧められた超辛口の生原酒、旨味とキレがいい感じだ。
“おでん” は、これは珍しい春菊、それに厚揚げとこんにゃく。冷たい雨の夜に温まるね。

はじめましての街角のローカルな居酒屋で、ひとり旅情に浸る呑み人なのです。

大阪市高速電気軌道 今里筋線 井高野〜今里 11.9km 完乗

ふたり大阪 / 松浦亜弥


Biz-Lunch 味万本店@心斎橋筋「きつねうどん」

2024-02-28 | Biz-Lunch60分1本勝負

本町から心斎橋筋商店街を下って、ちょっとレトロな「味万本店」を訪ねる。
なにがレトロって、店内の有線放送は、なぜか童謡が流れている。

実は一昨日、大阪オフィスの社員に案内されて、とにかく “カレーうどん” が美味しかった。
っで、大阪らしい “きつねうどん” を食べようと、この出張で二度目の訪問、開店時間の11:00に飛び込む。

着丼した “きつね”、真昆布やら鯖節やら出汁を利かせた澄んだつゆ、甘辛く煮たふんわりと油揚げが旨い。
パリッと海苔で巻いた “天むす” が、塩の加減も絶妙に、これまた美味しい。

さすがに食い倒れの街は、ランチは安くて美味しい。午後への活力も湧く大阪の Biz-Lunch だ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
つぐない / テレサ・テン 1984