年金制度改正に向けた
年金改革法案
2025年度は、5年に1度の公的年金の年金制度改正の年です。
2024年7月には、年金財政検証が発表されました。こちらも5年に1度、行われるものです。
厚生労働省は、財政検証の結果を踏まえて年金改革法案をまとめ、その概要を1月24日、自民党社会保障制度調査会に提出しました。
これらの法案を、今後通常国会に提出するために、現在、議論の真っ最中です。
何ヵ月も前から、幾つもの改革案が、厚生労働省の社会保障審議会などで検討されてきましたが、すでに見送られたものもあり、現段階では、次の項目に絞られ、詰めの議論が進んでいます。
①在職老齢年金の見直し
(26年4月から)
基準を50万円➡62万円に引き上げ
②高所得者の厚生年金保険料を増やす
(27年9月から)
月収等級65万円の上限を75万円に引き上げ
③厚生年金の適用拡大
すべての企業規模まで拡大
(29年10月に企業規模要件撤廃予定➡35年10月まで延期)
④基礎年金の底上げ
(29年以降に判断を延ばす 事実上の先送り)
厚生年金と税金を財源として底上げする
⑤遺族厚生年金の男女差解消
(28年度の実現に向けて、内容を検討し直し調整)
これらの内容については、昨年度から、幾度もマスコミに大きく取り上げられてきましたので、すぐにでも制度が変わるかのような印象が、あったかもしれません。
ですが、まだまだ決定事項ではありません。
年金改革法案は、今後も議論を経てから、3月以降に国会審議に入る見通しとなっています。
最終的には、2025年の通常国会での成立を目指しますが、少数与党の政権が、法案を成立させるには、野党への歩み寄りが必要で、かなり難航するだろう、と言われています。
また、夏の参院への影響が懸念されて、国民に負担が及ぶような改革は嫌われるとも予想されるので、まだどうなるか、先は見えません。
改革法案の紆余曲折
④の「基礎年金の底上げ」については、今後も長く経済状態の悪化が見込まれる国民年金を、厚生年金の積立金で補填しようという内容です。
これについては、厚生年金の受給額が、当面の間、月最大で約7,000円減少するということや、巨額の国庫負担金が必要となることから、異論が出ることは当初から予想されていました。
結果として、2025年改正では実施されず、2029年の財政検証以降に、経済情勢や税の財源確保の状況を踏まえて、改めて実施するかどうか判断する景気条項が盛り込まれました。事実上の先送りとなったようです。
また、③の「厚生年金の適用拡大」についても、現在51人以上とされている企業規模を拡大するにあたり、当初は
2027年10月に21人以上まで広げ
2029年10月にすべての企業規模まで広げ、企業規模要件を撤廃する
という案でしたが、
1月24日の自民党の社会保障制度調査会の会合では、拡大の段階を細分化し、撤廃時期を遅らせる案が示されました。
その結果、最終的に企業規模要件が完全撤廃されるのは、
2035年10月まで延期される見通しとなっています。
このように、国会に提出される前から、改革案は紆余曲折の展開となっていて、実際に国会審議に入るまでは、確かなことは不明と言えます。
こんな議論もありました
もともと、年金の見直しについては、過去、他にも幾つもの議論が上がりました。
主なものに
⑥基礎年金の保険料納付期間を、45年に延長
⑦国民年金第3号被保険者の廃止
⑧支給開始年齢の引き上げ
などです。
これらはすべて、今回の改革案では見送られたり、今後も実現が難しいと判断されています。
⑥基礎年金の保険料納付期間の延長
現在、20歳~59歳まで40年間支払う納付期間を、64歳までの45年間に延長する案。
これによって、負担となる保険料額が、5年間でいくら増加するか、マスコミにも何度か取り上げられました。
計算上、10年間年金を受け取れれば元が取れる、などと盛んに話題になりましたが、国庫負担が莫大になり、税負担が増えるということから、結局、今年度の改正に乗せるのは、早々と見送られました。
⑦国民年金第3号被保険者の廃止
配偶者に扶養されている第3号被保険者は、保険料を負担しなくても、基礎年金が受給できるため、不公平だということで、以前から見直しの声があがっています。
共働きが増えて、減少してはいますが、まだ750万人以上存在しています。
既得権益を廃止するのは難しいようで、なかなか具体的には話は進まないままです。
今後、厚生年金の適用拡大が広がるにつれ、自然に減少していくのを待つ、ということになりそうです。
⑧支給開始年齢の引き上げ
年金財政の建て直しのため、過去に幾度も議論されてきました。
老齢年金の支給開始は、現行では65歳です。
この支給開始年齢を遅らせることは、年金財政健全化のために有効な手段と言われています。
海外では、支給開始年齢を引き上げている例が、多く見られます。
しかしながら、日本の場合、これから支給開始年齢を引き上げれば、1993年~2004年ごろの就職難の時代に就職活動をしていた、就職氷河期世代の老後が、さらに厳しいものになるのは目に見えていて、今後も引き上げは難しいと判断されているのが現状です。
年金改革のこれから
年金の話題は、常に注目の的です。
厚生労働省で何か方針が示される度に、決定されるどうか定かではない段階で、新聞やテレビで大きく取り上げられ、それが損なのか得なのか、議論されます。
でも結局は、それが実現しないまま、先送りされたり、今後の検討課題として残ったままになるものも少なくないのです。
このような現状が、より年金を複雑に見せ、国民の年金不安、年金不信をますます募らせていると言えるでしょう。
ここしばらくの間、改革案の今後の行方を、しっかり見守っていく必要があります。
また、改革案が通過して、法改正されても、具体的な実施時期は何年も先であったり、段階的に実施されたりすることが殆どです。
その改正が、自分の場合は、どのような影響があるのか、または無いのか、各自で見極めることも大切です。
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