ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

マイクを切っちゃえ

2024-05-16 12:29:01 | 社会・政治・一般

間違えを認められない。

これが日露戦争以来、日本の行政府を蝕んできた病巣である。

これは日本に限らないが、政府とりわけ官庁が強いと、過ちを認めたがらない傾向がある。一つには、官僚の人事考課が減点主義であるため、なるべく仕事仲間が傷つかないように内々で処理したがるからだ。

日本において、この悪癖が慣行として根付いたのは日露戦争からだ。以前にもあったようだが、薩摩と長州、旧幕臣などの微妙な力関係が、内々の処理がしにくい状況を作っていたため、あまり露骨な失策隠しは出来なかった。

しかし、明治政府内部の力関係が安定してきたが故に、徐々に官僚の失策隠しが広まっていた。その決定打が日露戦争の勝利であった。細かい論評は避けるが、日露戦争は日本とロシア、双方が失策に失策を重ね、より失策が多かったロシアが敗戦を甘受した戦争である。

ちなみに失策を重ねたロシア軍官僚たちは、革命前夜の恐怖に怯えて敗戦の反省もろくにせずにモスクワに逃げ帰って赤色革命への対応に右往左往している。そしてロシアよりもほんの少しだけ失策が少なく、かつ幸運にも恵まれた日本軍は、失策の反省を勝ったのだからいいじゃないかと誤魔化した。

いや、誤魔化すどころではない。高級官僚の失策はなかったものとみなす一方、立案さえ国会を通過すれば、例え立案が失敗しても責任は問わず、高級官僚の責任は問わないことが慣例として定まってしまった。

これは、あまりに異常すぎてアメリカのGHQも気が付かなかった。アメリカの場合、大統領が替われば、支える高級官僚たちも同時に替わるため、失策を犯した官僚が罪を問われずに生き残るなんて想像も付かなかった。

この馬鹿げた慣習が今も生きて、日本の政治に悪影響を与えている一例が、今話題の熊本での「マイクを切った説明会」騒ぎである。環境大臣まで現地に赴いて謝罪を余儀なくされた醜態である。

これを岸田政権の失策だと報じるマスコミ様の見識の無さも腹立たしいが、この問題の根底にあるのは100年以上続く日本政府の異常で異質な隠蔽主義である。

有機水銀が原因で、環境を汚染し、汚染された魚介類を食べた人間にも多大な健康被害を及ぼしたのが水俣病である。今の学校でどのように教えているのかは知らないが、私が十代の頃からこの事件にひどさは知られていた。

当時の日本はたしかに経済成長を第一にしていた。環境汚染はもちろん、公害病もまだ世間的に周知されていなかったのは確かだ。でも、それを主導したのは、間違いなく日本の行政府だ。有機水銀という汚染物資を川に垂れ流した企業を守ることを優先した地元の役所。

有機水銀が病原だと知りつつ、それを隠蔽した保健所や病院。そして国民の健康よりも、国民の雇用先確保、税収確保を優先した中央官庁こそが、公害病が日本中に拡散し、かつ対応が遅れた元凶であった。

そしてこれらの明白な失策を問題視せずに放置した官庁の人事考課と、それを黙認した日本のマスコミ様も私からすれば、同じ穴の狢である。おそらくですが、今回の熊本の役人たちも内心では「なんで、こんな過去の問題で悩まされるのだ?」との被害者意識を持っていると思う。そして、それは正しい。なぜなら最初にしっかりと責任を取らなかった当時の日本政府が悪いのだから。

とはいえ、既に100年以上守られた異様な悪癖を是正するのは容易ではないことは、官庁にも政界にも無縁の私でも分かる。嫌な予測だが、おそらく日本人だけの問題であるうちは、決して改善されないと思います。多様な人種が日本に流入し、外国人が日本の統治機構に参入してからでないと、この問題は解決されないでしょう。

改めて書くまでもないとは思いますが、今盛んに批判している野党様では絶対無理です。彼らも過去の自らの失策を顧みることから逃げ回っていましたからね。

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薬屋のひとりごと第15巻 日向夏

2024-05-15 11:26:20 | 

大人しい人が怒ると怖い。

特に怖いのは、自分の為ではなく他者の為に怒れる人だ。自らの利益でも保身でもない。誰かのために真剣に怒れる人は怖い。無私の精神で立ち上がり、不正を糺すために真剣に怒れる人は、自らが傷つくのを恐れない。だからこそ怖い。

逆に自らの栄誉のためであったり、善人ぶりをアピールするために怒っている人は、まるで怖くない。むしろ不快であり、邪魔である。今の日本の国会を見れば、この手の怒れる不快感がゴロゴロいる。新聞やTVといったマスコミ様のなかには、それこそ凝り固まって腐臭を感じさせるほどの怒れる人があふれている。

似て非なるものとして、怒るべき時に怒れない、叱るべき時に叱れない卑怯者も大嫌いだ。私は実例を見たことはないが、最近は「叱らない教育」とかいう醜悪な行為が流行っているらしい。これは叱るべき義務から逃げ、叱ってでも教えねばならぬ責務から逃げるだけの卑怯者の所業だと思う。

私事ではあるが、私はおばあちゃん子であった。初孫であり可愛がられたのは確かだ。そんな私だが、おばあちゃんに怒られたり叱られた記憶はない。いや、正確に云えば、私はおばあちゃんに叱られるのを異常に恐れる子供だった。多分、母よりもおばあちゃんが怖かった。

悪いことをするのが得意だった私ではあるが、おばあちゃんの前では大人しくしていた。悪さをしたことがバレた時も、おばあちゃんは手を上げたり、叱責することはなかった。ただ静かな口調で、何故悪いことなのか、何故してはいけないのかを、ゆっくりと穏やかに、それでいて逃げることも許さずに断固として語り掛けてくれた。

普段はうるさい先生の説教や拳骨制裁を鼻にも欠けない不届きものの悪ガキである私である。長い説教だと空想の世界に逃げ込んで現実逃避をする不埒な悪ガキではあるが、おばあちゃんのお話だけは逃げられないし、無視も出来なかった。

だからこそ、怒るべき時に怒らず、叱るべき時に叱れないだらしない大人が大嫌いであった。

大ヒット作である「薬屋のひとりごと」において、大人しく忍耐強く屈辱的な世間の目にも耐える我慢の人、高順が15巻目にして初めて怒った。ネタバレは避けたいので、その内容は本書を読んでもらうしかない。

はっきり言います。実に格好いい、男ならかくあるべしの怒り方です。漫画化やアニメ化されるのは相当先だと思うので、是非とも原作を読んで欲しいです。

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過去を参考に

2024-05-14 13:01:12 | 社会・政治・一般

先月のことだが、南コリアの政府高官が来日して通産省を始めとして要人と会談した。新聞などの報道では未来志向の新しい協力関係の構築が目的らしい。

馬鹿なの、本当に馬鹿なのかと言いたくなる。

南コリアは半島全体を巻き込み破壊の限りを尽くされた朝鮮戦争の焼け野原から脱却するため、国外からの経済支援を受けて再生した。鉄鋼業、造船業、自動車そして半導体メモリーの集中豪雨的輸出により経済の再建を果たした。

これらの産業は全て欧米及び日本からの資金支援、技術移転によるものだ。自国で新しい産業を育成するだけの文化的経済的土壌はない。そのことは彼ら自身がよく分かっていた。そう分かっていたはずだった。

おそらくソウル五輪開催に成功した頃ぐらいだと思うが、彼らは自国が世界の一流国の仲間入りをしたと考えるようになった。そうなると我慢できないのが、自国の経済発展が外国の援助によることだ。歴史を過去の事績と考えるのでなく、今の繁栄した自国に相応しいものに書き換えることは、彼らには当然のことであるらしい。

だからいつのまにやら外国からの資金支援、技術移転はなかったことにされ、自分たちが自らの才能と努力により発展したというファンタジー的歴史が教科書に載せられる醜態である。

まぁ「よそはよそ、うちはうち」だと思うので内政干渉してやるほど私は親切にはなれない。第一、彼らは過去を美化し、屈辱の歴史を直視する勇気が欠如しているので、逆ギレするだけだ。それどころか、外国からの援助に対する敬意や恩義など全くない。外国の企業が苦労して作り上げた重要な機密情報を無断でコピーし、勝手に模造して安売りして被害を与えても知らんふり。

だが、そのことを知っていながら知らないふりしている日本のマスコミの鈍感さ、愚昧さは放置できないし、放置してはいけないと思う。

冒頭に書いた南コリアの高官の目的は端的に云えば「アンモニア発電、メタン発電の技術を寄越せ、それもタダで寄越せ。もちろん共同開発なのだから資金も提供しろ」である。

これを好意的に報道しているマスコミは何を考えているのか。この化学系技術革新はカーボンニュートラルの切り札的技術であり、基礎化学が大きく遅れている南コリアでは自国開発不可能だ。だからこそ日本にすり寄り、無償で寄越せとたかりに来た。

これを未来志向の新しい協力関係などと書く馬鹿なマスコミがいるのだから呆れてものがいえない。過去をしっかりと見返して視ろ。鉄鋼ではスパイ行為で日本が独自に開発した特殊鉄鋼をパクって輸出して独自開発だと言い張った。この件は、それを更にパクったシナの企業との特許権裁判で「コリアは日本から盗んだのだから、我々はコリアから盗んだ訳ではない」とシナが暴露している。ホント、似たもの同志なのだと良く分かる。

造船はコリアが世界一だと言いながらも、大型船舶用のタービンブレイドは作れず輸入で誤魔化すため、売れれば売れるほど赤字が広がる。半導体メモリーに至っては日本製製造機械で作っておきながら、オリジナルはコリアだと言い張る。

お得意の自動車でも、つい最近まで自国でエンジンを開発できず、いつも外国メーカーから技術指導を受けていた。ハイブリッドエンジンに至ってはトヨタに無償で寄越せとたかったが、断られたため無断でコピーしたものの上手く出来ず、仕方なくEV車に逃げた。

ノーベル賞は欲しがるが、基礎的な学術振興はやらないため、基礎的な科学力がお粗末で、精密加工が苦手。化学教育を稼げる応用分野だけに絞ったため、微細な計量技術さえ出来ず、高純度フッ化水素は実験室で出来たと誇るが大量生産は出来ない。

そんな低レベルの科学土壌ゆえに、未来の有望分野であるアンモニア発電やメタン発電を独自に開発することは不可能だと自覚している。だからこそ日本にたかりに来た。幸か不幸か岸田政権は「検討する」ばかりで実質的な言質は与えていないらしい。また実務を担当する通産省は事なかれ主義に徹して、のらりくらりと逃げ回ったらしい。

だからこそ一部の親コリア的なマスコミ様に、合意が間近であるかのようなアドバルーン記事をたれ流す。世界中で大人気だと報じたK-POPと同じ手法である。

いい加減、日本のマスコミ様は自らを貶めるような馬鹿な記事をたれ流すのは止めたほうがいいと、あたしゃ生やさしく警告して差し上げますぜ。

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Momoka JAPAN 稲谷

2024-05-13 15:28:46 | 

一人で勝手気ままに海外旅行が出来た頃が懐かしい。

私が師匠のS先生の事務所で働いていた時は、所長と交替で長期の夏休みを取ることが出来た。数年に一度は海外旅行に一人で行っていた。大概はヨーロッパであり、友人夫婦が滞在していたベルギーを別にすれば、3回ほどロンドンを訪れている。

イギリスと書かないのは、ロンドン市内を出たことがないからだ。ヒースロー空港から一直線でロンドンに赴き、まず二日間は大英博物館に閉じこもった。あとはテートギャラリーとか自然史博物館、国立美術館、そしてロンドンの街並みの散策で終わってしまった。

正直云えば、またロンドンを訪れる機会があれば、同じコースをたどる可能性は高い。特に大英博物館はまだまだ見て回りたい。ただ、困ったのは食事だった。私はグルメではないが、同じ献立を続けるのは大嫌い。名物のフィッシュアンドチップスも、キューピーのマヨネーズか醤油があれば今少し楽しめたと思うが、ホテルの電気コンロでは調理もままならない。

仕方なく定番のインド人街のカレー屋か、チャイナタウンの中華料理店へ行ったが毎日は飽きる。少しお高めのホテルで名物のローストビーフを頂いたが、銀座の鎌倉山の圧勝である。ただ街頭で買った青リンゴの酸っぱさは、日本では味わえぬ美味だったと記憶している。

ただし一回だけこれは!と思わされた料理があった。初日、空港からホテルまでの道中で知り合ったアメリカ人家族の旦那さんの紹介でいったパブで食べた豆のスープである。三種類ほどの豆とベーコンを煮込んだ優しい味わいのスープであった。これは美味しかった。

ただ、このアメリカ人、南部なまりが凄くて聴きとるのが難儀だった。私だけでなくパブの給仕人までも困惑するほどの癖の強い米語だった。奥様も同様で、辛うじて小学生と思しき子供の英語で意思が通じた。ちなみに筆談もやったが、あいつらスペル間違えて覚えているらしい。スープとパンを頼んだのだが、多分オーダーに20分以上かかったと思う。

このスープを食さなかったら、私は英国人の味覚はワンコ以下だと吐き捨てたと思う。やはり外国で美味しい地元料理に出くわすのは難しいと痛感した。

表題の漫画は、YouTubeの人気番組であるMomoka JAPANを原作にして描かれた。Momokaさんは当初は留学先のカナダやアメリカで、現地の人に日本のお菓子などを食べてもらった反応を動画にアップしていた。帰国してからは、観光などで来日した外国人を日本の飲食店に招待して、その反応を動画にアップしている。

似たような企画の番組は複数あるが、この番組が人気が高いのはMomokaさんのコミュニケーション能力の高さが一因だと思う。男性から女性、白人から黒人、ラテン系まで幅広く取材しており、単なる日本料理自慢ではなく、相手の国の特徴なども訊き出しながら楽しい会食にしているのが人気の秘訣だと思う。最近は私もよく通う渋谷が舞台であることも多く、けっこう楽しみに視聴しております。

 

 

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メイドインアビス つくしあきひこ

2024-05-10 09:12:05 | 

丸みを帯びた優しい絵柄に騙されてはいけない。

ファンタジー系の漫画なのだが、その優し気な絵柄とは裏腹に、その冒険譚は相当に壮絶だ。ダークファンタジーだと評したいが、子供たちの朗らかさが暗さに染まらないのだけが救いだ。

伝説的な探検家である母を求める女の子と、機械の身体ながら失われた記憶を求める男の子の冒険譚である。地底の遥か深みまで続く巨大な穴(アビス)は、まさに深淵であり、深く下れば下るほど帰還が困難になる。その代償は貴重な未知のアイテムであるため、深みを目指す探検家は後を絶たない。

深く潜れば潜るほどに貴重なアイテムが見つかるが、帰還の際に体に変調をきたし、最終的には死を免れることは困難となる。これをアビスの呪いと呼ぶ。

そんなアビスに死を覚悟しつつも探求の旅に出た二人の子供が遭遇する困難の数々。それは決して生やさしいものではなく、目をそむけたくなる残酷さも混じっている。

私はこの作品を知人の子供の小学生から教えてもらった。そして読んでみて、その面白さに魅入られた。同時に小学生がかくもハードなファンタジー漫画に慣れ親しんでいることに驚いた。

誰にでもお勧めできる作品ではない。特にダークファンタジーに慣れてない人には辛いかもしれない。絵柄の優しさとは裏腹な過酷な冒険譚は、それでも一読の価値があると私は考えています。機会がありましたら是非どうぞ。

コメント (4)
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