New Album Review: Nico Paulo  『Interval_o』EP

Nico Paulo  『Interval_o』EP
 

Label:  Foward Music Group

Release: 2025年3月21日

 

 

Review    

 

ニコ・パウロはポルトガル系カナダ人のミュージシャン、ビジュアル・アーティスト。パウロは芸術と音楽を追求するために2014年にカナダに移住し、当初はトロントに根を下ろし、この街の活気あるクリエイティブ・コミュニティに身を置いた。

 

2020年代初頭にはセント・ジョンズに移り住み、ニューファンドランドの名高い音楽シーンに欠かせない存在となった。この島を拠点に活動するパウロは、世界中のステージにおいて、うなり、うっとりし、はしゃぎ、踊る、魅惑的なライブ・パフォーマーとしての地位を確立した。

 

絶賛されたセルフ・タイトルのデビュー作(2023年4月)は、豊かで洗練されたポップ・アレンジの中で、人間関係の相互関連と時間の流れを探求し、メロディアスでオープンハートなソングライティングをリスナーに紹介した。最新のEP『Interval_o』(2025年3月)は、温かみのあるアンビエントとミニマルなサウンドスケープの中で、直感的なソングライティングで変容の時を謳歌し、そうなりつつある過程に存在の意義を見出す。上記2枚のアルバムのテクスチャーの複雑さは、友人でありコラボレーターでもあるジョシュア・ヴァン・タッセルの貢献によるものだ。


このEPは忙しい人のささやかな休息のためにぴったりのポピュラーソング集である。EPは記憶のムーブメントで占められている。ニコ・パウロ、そして彼女が率いるバンドからの招待状を受け取ったリスナーはどのような世界を見出すだろう。

 

本作は声楽の響きを追求した『Interval 1 : Invitation』で幕を開ける。2つのボーカルを組み合わせた声楽形式のアカペラで聞き手を安息の境地へといざなう。背景となるトラックには水の音のサウンドスケープが敷き詰められ、それがパウロのゆったりとした美しいボーカルと溶け合う。

 

「Interval 2: Grow Somthing」はアコースティックギターをベースとしたフォーク・ソングである。どことなく寓話的でお伽話のような音楽の世界が繰り広げられる。ミニマルで反復的なギターフレーズが続く中、パーカッションが入り、パウロのコーラスとメインボーカルが美しく融和している。南国のサーフミュージックのように開けた安らいだ感覚を味わうことが出来る。アウトロではパウロのボーカルがフィードバックしながら、夢心地のままとおざかっていく。

 

その後、シネマティックなサウンドに接近する。「Memory 3: In Company」は再びクワイアのコラージュサウンドに舞い戻る。一貫してミニマルな構成と美しいハーモニーを交えながら淡々とした曲が続く。 

 

しかし、その中には、アーティストがライブで培ってきたアートパフォーマー的なセンスとサーフミュージックのようなトロピカルな要素が溶け合い、陶酔的なアートポップが構築される。最もアップテンポなトラックが「Memory 4: Move Like A Flame」。ワールド・ミュージックの要素をベースに、ボサ・ノヴァ的なアコースティックギター、そしてリズムの中でシンプルなボーカルワーク、エレクトロニカ風のサウンド処理が心楽しげな雰囲気を醸し出している。

 

EPの音楽を聞き出すと、惜しいほどすぐに終わってしまう。それでも、情報過多な時代においてスペースや余白の多い音楽ほど美しいものは存在しない。クローズ「Movement 5:  Two Ends」はボサ・ノヴァやハワイアン音楽を基底にし、夕日を浜辺で見るような甘美さを表現する。ほんの瞬きのように儚く終わるEP。音楽そのもののセンスの良さ、そして歌の本当の美しさによって、ニコ・パウロはカナダの注目のフォークシンガーとして名乗りを挙げようとしている。


 


82/100