科学

うつ病を抱える人は身体的健康を損なう割合が高い

科学

うつ病を抱える人は、そうでない人と比べて身体的健康問題を抱える割合が高いうえ、より速いペースで発症することが、エディンバラ大学の研究チームの新たな研究で明らかになりました。

 

うつ病が健康問題を引き起こすのか、それとも健康問題がうつ病を引き起こすのか、その因果関係は完全には解明されていませんが、研究者たちは、「うつ病と身体的健康には双方向の関係があり、互いに影響を及ぼし合っている可能性が高い」と指摘しています。

 

今回のテーマとして以下にまとめていきます。

 

参考記事)

New Research Pinpoints the Ways Depression Could Affect Physical Health as You Age(2025/03/05)

参考研究)

Depression and physical multimorbidity: A cohort study of physical health condition accrual in UK Biobank(2025/02/13)

 

 

研究の方法と結果 

Depression and physical multimorbidity: A cohort study of physical health condition accrual in UK Biobankより

 

研究では、イギリスの大規模な生体データバンク「UK Biobank」 に登録された172,500人以上のデータを分析。

 

対象者は40歳から71歳で、最初に健康状態のベースライン調査を受け、その後平均7年間にわたり追跡されました。

 

研究の結果、うつ病のある人は、平均して3つの身体的健康問題を抱えており、うつ病のない人の平均よりも多いことが判明しました。

 

Depression and physical multimorbidity: A cohort study of physical health condition accrual in UK Biobankより

  

また、うつ病のある人は約5年ごとに新たな健康問題を発症するのに対し、うつ病のない人は約6.25年ごとに発症することが示されました。

  

さらに、同じ年齢・性別のグループを比較すると、うつ病のある人は慢性的な健康問題を30%速いペースで発症していたことがわかりました。

  

特に、高血圧、アレルギー、変形性関節症(オステオアーサリティス)、胃食道逆流症(GERD) などが多く見られました。

 

また、うつ病のある人は、以下のような健康リスクを抱える可能性が高いことも明らかになっています。

• 不眠症

• 慢性的な痛み

• 肥満

• 喫煙

• 孤独感

など

 

これらの要因が組み合わさることで、うつ病のある人はより多くの健康問題を抱えるリスクが高まると考えられています。

 

 

うつ病は身体の健康を悪化させるのか? 

 

「うつ病の症状には、疲労感、不快感、痛みなどの身体的な症状が伴うことが多い」と、エディンバラ大学のBruce Guthrie教授は述べています。

 

しかし、なぜこのような症状が発生するのか、そのメカニズムはまだ完全には解明されていません

 

また、インディアナ大学医学部のMary de Groot教授は、生活習慣の変化が健康問題を引き起こす可能性を指摘しています。

 

うつ病のある人は、社会的活動から引きこもりがちになり、運動量が減少することが多くあります。

 

さらに、食生活や飲酒習慣が変化し、健康的な生活を維持しにくくなることも知られています。(Depression linked with higher risk of long-term physical health conditionsより

 

例えば、うつ病のある人はバランスの取れた食事を摂ることが難しくなり、不健康な食習慣に陥りやすい傾向があります。

 

また、ストレスや不安によって過食や過度の飲酒をしてしまうことも多いです。

 

  

うつ病と身体的健康の関連性

 

研究者たちは、うつ病と身体的健康の関係を説明する要因として、以下の3つに注目しています

  

1. 炎症 

慢性的な炎症は、うつ病だけでなく、糖尿病や心血管疾患とも関連していることが分かっています。

体内の炎症レベルが高いと、脳の機能に影響を及ぼし、気分やエネルギーレベルの低下を引き起こす可能性があります。

   

2. 遺伝的要因 

一部の人は、遺伝的にうつ病やその他の健康問題を発症しやすい可能性があります。

例えば、うつ病の家族歴がある人は、心血管疾患や糖尿病などの慢性疾患のリスクも高いことが示唆されています。

   

3. 生活習慣の変化

うつ病のある人は、運動量が減り、不健康な食生活を送りがちになるため、これが身体的健康に悪影響を与える可能性があります。

また、睡眠障害や慢性的なストレスも、身体の健康を損なう要因となります。

   

参考)

Inflammation in Cardiovascular Disease: A Comprehensive Review of Biomarkers and Therapeutic Targets

The Role of Inflammation in Diabetes: Current Concepts and Future Perspectives

Association of inflammation with depression and anxiety: evidence for symptom-specificity and potential causality from UK Biobank and NESDA cohorts

  

  

うつ病が身体に影響し、身体がうつ病に影響する

この研究は、うつ病が身体的健康問題のリスクを高めることを示唆していますが、同時に、身体的健康問題がうつ病を引き起こす可能性もあると研究者は述べています。

  

例えば、慢性的な病気を発症すると、仕事や社会生活の変化、自己イメージの変化などが生じ、それがうつ病を引き起こす原因になることがあります。

  

実際に、糖尿病の既往歴がある人はうつ病のリスクが高まることが多くの研究で示されています。心血管疾患でも、心臓発作の前後でうつ病を発症するケースが多く報告されています。(Lifetime Duration of Depressive Disorders in Patients With Type 2 Diabetesより

 

 

うつ病の人が知っておくべきこと

うつ病は多くの健康問題と関連があるため、気分の変化があれば医師に相談することが重要です。

 

参考記事内では、以下のような症状がある場合は、医療機関を受診することが推奨されます。

• 気分の落ち込み、抑うつ感、興味の喪失

• 睡眠や食欲の変化

• 意図しない体重の増減

• 集中力の低下、死についての考え

 

うつ病の治療法には、薬物療法やカウンセリングがあります。

 

また、運動、バランスの取れた食事、社会的交流などの生活習慣の改善も、うつ病の管理に役立ちます。

  

身体的健康と精神的健康は切り離せない関係にあるため、両方をバランスよく管理することが大切です。

  

 

まとめ

・うつ病のある人は、より多くの健康問題を抱え、それらを速いペースで発症する傾向がある

・うつ病と身体的健康の関係は双方向であり、炎症や遺伝的要因、生活習慣の変化が影響している可能性がある

・うつ病の症状がある場合は、早めに医療機関に相談し、治療や生活習慣の改善を検討することが重要

コメント

タイトルとURLをコピーしました