相続した空き家の3000万円特別控除 最新(令和6年)の改正ポイントと活用法

皆さん、こんにちは。稲沢あんしん不動産の佐藤です。
今日は空き家の相続関係の3000万円特別控除についてお話しします。

これは、相続した空き家が一定の条件をクリアできれば、譲渡所得から3000万円を控除できるという特例なんです。
この制度の目的は「管理の悪い空き家を増やさないこと」にあります。

なぜこの制度が作られたかというと、大きく3つの理由があります。

1つ目
空き家問題が既に社会問題になっているということです。今や空き家専門の相談窓口ができたり、空き家での火災、不法投棄、治安の悪化など、地域社会の問題になっていることが現実としてあります。

2つ目
古い空き家はもう更地にしてもらうか、あるいはちゃんと直して耐震性のある建物にするという方向への誘導です。そのまま放置するのではなく、積極的に対策を取ってもらうための政策なんですね。

3つ目
相続から3年以内という期間を設けることで、早期対応へのインセンティブを付けて、空き家の放置を減らそうとしていることです。

国としても、とにかく古い空き家問題を解決したいという意図が明確に読み取れます。

今回、令和6年に大きく制度が改正されてますので、改めてこの制度の内容と活用法をお話します。
では、詳しい内容に入っていきましょう。

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改正の最大ポイント

「買主が建物を取り壊す場合や耐震改修工事を行う場合も特例が適用可能になった」

これまでは相続人自身が建物を取り壊して更地にしてから売却する場合しか特例が使えませんでした。
しかし、令和6年1月1日からの改正により、建物をそのまま売却し、買主が後で取り壊す場合や耐震改修する場合も特例が適用できるようになりました。

この特例を使う最大のメリット

「譲渡所得から最大3000万円を控除でき、大きな税金軽減効果がある」

例えば、相続した実家を5000万円で売却し、取得費や譲渡費用が合計1000万円の場合、通常なら4250万円に課税されますが、この特例で3000万円を控除すれば、課税対象は1000万円だけになります。
税率約20%として約600万円の税金が節約できる可能性があります。

上記の内容を詳しく説明すると
例えば:実家を相続し、5000万円で売却するケースを考えてみましょう。

取得費:250万円(古い物件で取得費が不明な場合は売却価額の5%を概算取得費として使用)
譲渡費用:500万円(仲介手数料など)
譲渡益:4250万円(5000万円-250万円-500万円)

通常の場合:譲渡所得税(約20%):約850万円

特例を使った場合:控除後の譲渡益:1250万円(4250万円-3000万円)

結果
譲渡所得税:約250万円結果:約600万円の税金節約!

このように、特に古い実家などを相続した場合、この特例を使うことで数百万円の税金を節約できる可能性があります。
さらに令和6年の改正により、より柔軟な売却方法が選べるようになったため、活用しやすくなっています。

特例の概要

「相続空き家の3000万円特別控除」とは、亡くなった方(被相続人)の自宅(空き家)とその敷地を相続し、一定の条件を満たして売却した場合に、譲渡所得から最大3000万円を控除できる特例です。

令和6年1月1日以降の譲渡では、買主側が建物の取り壊しや耐震改修を行う場合でも適用できるようになり、より柔軟な売却方法が選べるようになりました。

令和6年1月1日からの主な改正点

2-1. 控除額の改正(相続人が3人以上の場合)

区分改正前改正後
相続人1〜2人の場合一人当たり3000万円
(最大2人まで)
一人当たり3000万円
(変更なし)
相続人3人以上の場合一人当たり3000万円
(最大2人まで)
一人当たり2000万円
最大控除額6000万円6000万円以上可能

改正後なら4人の相続人なら8,000万円も控除できますね

2-2. 譲渡方法の拡大

譲渡方法改正前改正後
相続人自身が建物を取り壊して売却適用可適用可(変更なし)
買主が建物を取り壊す場合適用不可適用可(新設)
買主が耐震改修工事を行う場合適用不可適用可(新設)
※翌年2月15日までに工事完了が条件

特例の適用要件

  1. 被相続人が亡くなる直前まで住んでいた家屋であること (昭和56年5月31日以前に建築された家屋に限る)
  2. 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
  3. 売却価格が1億円以下であること
  4. 相続してから売却するまでの間、事業用・貸付用・居住用として使用していないこと
  5. 区分所有建物(マンションなど)は対象外

特例が使える具体的なケース

ケース1:実家をそのまま売却

相続した実家をそのまま買主に売却し、買主が建物を取り壊す場合や耐震改修する場合も特例が適用できます。

ケース2:被相続人が老人ホーム等にいた場合

次の条件を満たせば、被相続人が老人ホームなどに入所していても特例が適用できます。

  • 要介護認定または要支援認定を受けていたこと
  • 入所前までその家で暮らしていたこと
  • 老人ホームに入所後、その家を別の用途に使用していなかったこと

※老人ホーム等とは養護・有料老人ホームのほか介護老人保健施設・介護医療院・サービス付き高齢者向け住宅のこととなります。

更地で譲渡する場合の要件

ケース適用可となる場合
①売主が更地にする場合売主が空き家を取り壊し更地にして譲渡する場合は、この特例の対象となります。
②買主が更地にする場合譲渡のときからその譲渡の日の属する年の翌年2月15日までの間に買主が空き家を取り壊し更地にした場合は、この特例の対象になります(令和6年1月1日以後の譲渡に適用)。

注:なお、あくまで昭和56年5月31日以前に建築された家屋(区分所有建物を除く)の敷地のみが対象となるので、昭和56年6月1日以後に建築された建物の敷地については、たとえ更地にしてもこの特例の対象とはなりません。

建物を除却せず譲渡する場合の要件

ケース適用可となる場合
①売主が耐震補強工事をする場合建物を除却しないで譲渡する際に、売主が建物に耐震改修を行い、地震に対する安全性に係る基準に適合することが証明された場合は、この特例の対象となります。
②買主が耐震補強工事をする場合譲渡のときからその譲渡の日の属する年の翌年2月15日までの間に、買主が建物に耐震改修を行い、地震に対する安全性に係る基準に適合することが証明された場合は、この特例の対象となります(令和6年1月1日以後の譲渡に適用)。

早めの売却をお勧めする理由

  1. 期限がある:相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する必要があります。
  2. 空き家の管理コスト:空き家を保有し続けると、固定資産税や管理費などの費用がかかります。
  3. 建物の劣化:時間が経つほど建物は劣化し、売却価格が下がる可能性があります。
  4. 相続人間のトラブル防止:早めに売却して現金化することで、相続人間のトラブルを防げます。
  5. 確実な特例適用:条件を満たしていることを確認しながら計画的に売却できます。

売買契約時の注意点

買主が建物の取り壊しや耐震改修工事を行う場合は、以下のような特約を売買契約書に記載することが非常に重要です。

少し専門的な内容ですが、売買契約書の特約は重要なのでかなり参考になると思います。

【特約例1】買主が建物を取り壊す場合

第○条(空き家に係る譲渡所得の特別控除の特約)

1. 売主および買主は、本件土地・建物について租税特別措置法第35条第3項「空き家の譲渡所得の3000万円特別控除」の特例の適用を受けることを前提とし、本契約の売買価額・諸条件を決定したことを確認する。

2. 買主は、本件建物の所有権移転後、令和○年○月○日(※譲渡の日の属する年の翌年2月15日までの日付)までに建物の取壊し工事を完了させるものとする。

3. 買主は、前項に定める期日までに建物の取壊し工事が完了したことを証する書類(解体工事の請負契約書および解体工事完了証明書等)を売主に交付するものとする。

4. 買主の責めに帰すべき事由により第2項に定める期日までに建物の取壊し工事が完了しない場合、売主は租税特別措置法第35条第3項の特例の適用が受けられなくなることにより被った損害(通常得られたであろう税額控除相当額)について買主に対して損害賠償を請求することができるものとする。ただし、買主の責めに帰することができない事由による場合はこの限りではない。

【特約例2】買主が耐震改修工事を行う場合

第○条(空き家に係る譲渡所得の特別控除の特約)

1. 売主および買主は、本件土地・建物について租税特別措置法第35条第3項「空き家の譲渡所得の3000万円特別控除」の特例の適用を受けることを前提とし、本契約の売買価額・諸条件を決定したことを確認する。

2. 買主は、本件建物の所有権移転後、令和○年○月○日(※譲渡の日の属する年の翌年2月15日までの日付)までに耐震改修工事を完了させ、当該建物が耐震基準に適合することの証明を取得するものとする。

3. 買主は、前項に定める期日までに耐震基準適合証明書または住宅性能評価書等の写しを売主に交付するものとする。

4. 買主の責めに帰すべき事由により第2項に定める期日までに耐震改修工事が完了しない場合、または耐震基準に適合することの証明が取得できない場合、売主は租税特別措置法第35条第3項の特例の適用が受けられなくなることにより被った損害(通常得られたであろう税額控除相当額)について買主に対して損害賠償を請求することができるものとする。ただし、買主の責めに帰することができない事由による場合はこの限りではない。

【追加条項】確定申告のための協力義務

第○条(確定申告に関する協力)

1. 買主は、売主が租税特別措置法第35条第3項の特例の適用を受けるために必要な書類の取得に協力するものとする。

2. 売主は、本件建物の取壊し工事または耐震改修工事の進捗状況について、必要に応じて買主に確認することができるものとし、買主はこれに誠実に回答するものとする。

これらの特約は一例です。実際の契約においては、不動産取引の専門家(宅地建物取引士、弁護士等)に相談のうえ、適切な内容を検討してください。特に工事完了期限は、確定申告の期限(譲渡の日の属する年の翌年3月15日)より前に十分な余裕を持って設定することが重要です。

必要書類について

この特例を受けるためには、確定申告時に次の書類を提出する必要があります。

  1. 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]
  2. 譲渡資産の登記事項証明書等
  3. 譲渡資産の所在地を管轄する市町村長から交付を受けた被相続人居住用家屋等確認書
  4. 売買契約書の写し(譲渡金額1億円以下であることの証明)
  5. 耐震基準適合証明書または住宅性能評価書の写し(買主が耐震改修工事を行う場合)

よくある質問(Q&A)

Q1: マンションや区分所有建物も対象になりますか?

A: いいえ、区分所有建物(マンションなど)は対象外です。一戸建て住宅が対象となります。

Q2: 複数の相続人で共有している場合はどうなりますか?

A: 空き家と敷地の両方を共有で相続している場合、各相続人がそれぞれ特別控除を受けられます。ただし、土地だけを共有で相続した場合は適用されません。

Q3: 相続から3年以上経過していますが、まだ売却していません。特例は使えますか?

A: 残念ながら、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する必要があるため、その期限を過ぎると特例は使えません。

Q4: 相続した空き家をしばらく自分が住んでいましたが、特例は使えますか?

A: いいえ、相続してから売却までの間、事業用・貸付用・居住用として使用していないことが条件なので、特例は使えません。

Q5: 複数の実家を相続しました。すべてに特例が使えますか?

A: いいえ、被相続人が生活の本拠としていた1つの建物とその敷地のみが対象です。

Q6: 令和6年1月1日より前に売却済みですが、新しい制度は適用されますか?

A: いいえ、改正後の制度は令和6年1月1日以後の譲渡に適用されます。

Q7: 買主が工事を期限内に完了できなかった場合、特例は使えなくなりますか?

A: はい、買主が翌年2月15日までに工事を完了できなかった場合、特例は使えなくなります。売買契約書に特約を設けて対応策を決めておくことをお勧めします。

Q8: この特例を使うためには、どこに相談すればよいですか?

A: 税理士や不動産の専門家に相談することをお勧めします。特に不動産に関することは、相続に詳しい不動産の専門家の相談が重要です。

おわりに

相続した空き家の活用は、税制面でも大きなメリットがあります。特に令和6年1月1日からの改正で、より柔軟に特例が使えるようになりました。ぜひ早めに専門家に相談しながら、最適な選択をしていただければと思います。

何かご不明な点があれば、いつでもご質問ください。

国税庁:No.3306 被相続人の居住用財産を売ったときの特例

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