氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

「氷河期世代」はなぜ報われないのか 

1990~2000年代の雇用環境が厳しい時期に就職活動を行った、いわゆる「就職氷河期世代」に対して国がもっと支援すべきだという声が盛り上がっています。

分かりやすいのは、TBS系の報道番組『news23』が放映した『「初任給12万円」「内定取り消し」…“報われない”就職氷河期世代 どう支える? 若い世代に深刻な影響が…』(TBS NEWS DIG 3月14日)です。  

VTRには47歳で転職活動中の人や45歳で無職になってウーバーイーツ(Uber Eats)の配達員などをして生計立てる人、50代で非正規公務員として週4日働いて手取り12万円の人などが次々と登場して、新卒からの現在に至る“報われない半生”を振り返っていた。同世代の人間として、胸が締め付けられるような思いで視聴しました。  

これを受けて「TBS NEWS DIG」アプリの中で「就職氷河期世代」へ支援は必要かとアンケートを取ったところ「必要」(41.6%)と「事情を勘案し支援すべき」(42.7%)を合わせると、なんと8割以上の人が、何かしらの支援が必要だと考えていました。  

この「就職氷河期世代に愛の手を」というムードは、実は2024年から盛り上がっています。例えば、厚生労働省では「就職氷河期世代の方々への支援」という特設Webサイトを開設し、ハローワークのほか、49歳まで利用できる「地域若者サポートステーション」「ひきこもり地域支援センター」など各種窓口を案内している。  ただ、個人的には就職氷河期世代が貧しいのは「国の支援」などで解決できるものではない、と考えています。  

「はいはい、自己責任論ね。そうやって弱者を切り捨てる時代じゃないんだよ」というお叱りが飛んできそうだが、筆者が「国の支援」を否定しているのはそういう観点ではありません。

もし仮に先ほどのニュース番組で取り上げられたような「報われない人生を歩んできた40~50代」に対して経済的支援、キャリアアップ支援、就職支援などの手厚いサポートをしたとしましょう。

今の日本にそんな財源はどこにあるのかという問題はあるが、潤沢な予算が就職氷河期世代対策に注ぎ込まれたとしましょう。  

それによって正社員になれたとか、収入が上がったという人も多少は増えるかもしれません。

しかし、ほとんどの人は支援を受けた後も、今とそれほど変わらない人生を送るはずです。この人たちの能力や努力が足りないという話ではありません。  

人口減少によって、日本の「働き先」もどんどん減少しているからです。  

経済産業研究所が公開しているコラム『企業も少産多死の日本 ~画一的中小企業政策の終焉~』で端的に説明されているので引用しましょう。

日本全体の企業数は、1990年を100とすると、2005年には82、2015年には74にまで減少しました。

2040年までの企業数、従業者数をシミュレーションした結果によると、企業数は、今後10年でさらに減少し、1990年を100とすると、2025年(予測)には58と半減します。  

これだけ会社が減れば当然、雇用も減ります。

この状況を分かりやすく例えるなら、今の日本は「イス取りゲーム」で、プレーヤーの数に対してイスが圧倒的に少ない状態です。

座れないで途方に暮れている人を「一緒にイスを探しましょう」「イスに早く座れるように練習しましょう」と支えたところで意味はないのです。  

つまり、国が本当に手を付けなくてはいけないのは、このイス取りゲームの環境を根本的に変えて「あぶれた人が座れるイスを増やす」ことなのです。  

「いやいや、確か今の日本は人手不足だったろ」という人も多いでしょうが、それは介護、建設、農業などのいわゆる「不人気業界」に限定した話です。給料が安くて体力的にもハードなので、40~50代の就職氷河期世代も足が遠のいています。

だから「外国人労働者」を拡大せよという話になっているのです。  

ちなみに、この問題も「イスを増やす」という視点で考えればやるべきことは見えてきます。

介護、建設、農業など「人手不足業界」の最低賃金をしっかりと引き上げ、外国人労働者への依存度を低下させるのです。ハローワークの紹介やリスキリングより、低賃金と苦しむ就職氷河期世代にとってはそちらのほうがよほどありがたいのです。 

そういう日本の産業構造が抱える問題に手を付けず、「就職氷河期世代はかわいそうだから税金で手厚いサポートを」なんてやっても「焼け石に水」で、毎度おなじみの税金の無駄使いになってしまうだけです。  

では、なんでこのようなピントのズレた解決策が令和の日本で盛り上がっているのかというと、そもそも日本人の「就職氷河期世代」というものへの認識がズレているからではないかと思っています。  

就職氷河期世代関連のニュースを読むと分かるが、この言葉には必ず「バブル崩壊によって」とか「景気低迷による」という枕詞が付きます。  

つまり、この世代が新卒時に自分の望む企業に就職できなかったのは「日本経済の失速が原因だ」という認識です。

確かにバブル崩壊や景気低迷も無関係ではありませんが、今の40~50代が「就職氷河期世代」になることは、ある意味で分かりきっていました。  

日本に人口減少の弊害が表れてくるタイミングであり、なおかつ「社会に巣立つ人口」の多い世代だったからです。  

先ほどから言っているように、人口が減れば企業は減り、従業員も消費者も減ります。人口が減っているのに、会社の数だけが増えていくなんてことはあり得ないのです。

「日本の人口が減少し始めるのは2008年だから、就職氷河期はそこまで影響がないのでは」というご指摘もあろうが、それはあくまで高齢者も含めた全人口です。  

会社経営に影響があるのは、15~64歳という「生産年齢人口」であることは言うまでもありません。

これは1995年をピークに減少。全人口に占める生産年齢人口比率も、1990年の69.5%をピークに低下しているのです。  

15~64歳の現役世代がじわじわと減れば、企業の数もじわじわと減っていくことは言うまでもありません。

実際、事業所数は1989年をピークに減少しています。  

「我が国の事業所数の推移」を見ると、東京五輪前年の1963年は全規模で390万事業所だったが、高度経済成長期に右肩上がりで増え、1989年の662万事業所をピークに減少していくのです。  

1996年には650万事業所、1999年は618万事業所、そして2004年は571万事業所まで減った。バブル期から就職氷河期にかけて日本では「働く場所」が90万近くも自然減しているのです。

にほんブログ村 ライフスタイルブログ セミリタイア生活へ
にほんブログ村