奨学金がマイナーチェンジしています※令和6年

 日本学生支援機構が運営している奨学金制度。毎年のように変更があります。令和6年度の予約採用の手続きが進む中ではありますが、そのマイナーチェンジしている内容について、解説していきたいと思います。

 日本学生支援機構の奨学金とは?

 日本学生支援機構の奨学金制度は、「給付型」と「貸与型」で構成されています。多くの人のイメージにあるのは「貸与型」ではないでしょうか。まずは、簡単に奨学金制度を紹介します。

 大前提として、奨学金は学生本人が借主で、就職してから自分で返還していきます。

貸与型奨学金

 貸与型奨学金には、第一種(利子なし)、第二種(利子付き)のふたつがあります。利子の有無で2種類あるなら、利子なしの第一種にしたいと思います。それは当然ですね。

 第一種、第二種には、学力基準と家計基準があり、すべてのご家庭、学生が第一種の条件に該当するとは限りません。下図を参照してください。

貸与奨学金の申し込み目安※日本学生支援機構

(4人家族の場合)第一種(利子なし)第二種(利子付き)第一種・第二種を 併用
学力基準3.5以上 ※ (5段階評価)平均水準以上である人 又は意欲のある人3.5以上 ※ (5段階評価)
収入の目安 (会社員)803万円以下1,250万円以下743万円以下
所得の目安 (個人事業)552万円以下892万円以下506万円以下
※日本学生支援機構の資料より抜粋

そして、貸与額にも違いがあります。下図参照。

奨学金の貸与額※日本学生支援機構

奨学金の種類月額の区分学校の種別 (進学先)貸与月額(原則として、毎月1回振込み)
国 公 立私   立
自宅通学自宅外通学自宅通学自宅外通学
第一種奨学金 (利子なし)最高月額大   学45,000円51,000円54,000円64,000円
短期大学・専修(専門) ・高専(4・5年生)45,000円51,000円53,000円60,000円
最高月額 以外大学・短期大学 ・専修(専門) ・高専(4・5年生)30,000円 20,000円40,000円 30,000円 20,000円40,000円 30,000円 20,000円50,000円 40,000円 30,000円 20,000円
第二種奨学金 (利子付き)大学・短期大学・専修(専門) ・高専(4・5年生)20,000円~120,000円(10,000円単位)
入学時特別増額 貸与奨学金大学・短期大学・専修(専門) ・高専(4・5年生)100,000円~500,000円(100,000円単位)
※日本学生支援機構の資料より抜粋

 第一種、第二種で貸与額が異なりますから、必要資金により、第一種で足りる、第二種も併用するなど、検討します。

 あくまでも、「貸与」であり、返還する必要があるので、「心配だから、多めに借りておこうかな?」という感覚も心配です。借入額が大きくなるだけで、数百万円の借金を抱えて就職することになります。

給付型奨学金

 返還義務のない「給付型」奨学金制度もあります。この給付奨学金を利用できる学校は、国、地方公共団体から対象であることを確認を受けている学校のみとなります。念のため事前に確認をしてください。ほぼ大丈夫ですが。

 そして、給付型にも学力基準と家計基準があります。この条件に該当する学生、ご家庭が対象となります。下図参照。

学力基準(1)高等学校等における全履修科目の評定平均値が、5段階評価で3.5以上であること。 (※1)
(2)(1)に該当しない場合は、将来、社会で自立し、活躍する目標をもって進学しようとする学修意欲を有すること。(※2)  
(※1)5段階評価をしていない学校は、これに準ずる学習成績。  
(※2)学修意欲の確認は、高等学校等において、面談の実施またはレポートの提出等により行う。
※日本学生支援機構の資料より抜粋

 

家計 基準収入 基準(4人家族の場合の目安)
世帯構成 (★)が給与所得者の世帯第Ⅰ区分 (住民税非課税世帯)第Ⅱ区分第Ⅲ区分第Ⅳ区分
本人、親①(★)、親②(無収入)、中学生271万円以下303万円以下378万円以下635万円以下
本人、親①(★)、親②(給与所得者)、中学生親①:221万円以下 親②:115万円以下親①:242万円以下 親②:155万円以下親①:320万円以下 親②:155万円以下親①:587万円以下 親②:155万円以下
※ 表中の数字はあくまで目安です。収入基準は収入・所得に基づく住民税情報等により設定されるため、世帯構成、障がい者の有無、各種保険料の支払い状況等により、目安の金額を上回っていても対象となる場合や下回っていても対象とならない場合があります。
※ 日本学生支援機構のホームページに掲載している「進学資金シミュレーター」で、収入基準に該当するか、おおよその目安を確認できます。
資産 基準本人と生計維持者(親)の資産の合計が一定額(※)未満であること ※ 生計維持者が一人の場合:1,250万円、生計維持者が二人の場合:2,000万円
※日本学生支援機構の資料より抜粋

進学資金シミュレーターはこちらからどうぞ。※日本学生支援機構のページにいきます。

マイナーチェンジはどこ?

 貸与型、給付型奨学金の紹介をしましたが、マイナーチェンジはどの部分でしょうか?じつは、給付奨学金がマイナーチェンジしています。

給付型「第Ⅳ区分」が追加

 給付奨学金の家計基準の第Ⅳ区分が追加されました。これまでの第Ⅲ区分には該当しなかったけど、第Ⅳ区分だと該当するというご家庭もあると思います。ここで最重要条件「多子世帯」であることです。多子世帯とは、扶養する子どもが3人以上です。これは大学授業料無償化にも通ずる微妙ポイントです。

 ここで、給付奨学金の支給額を確認しましょう。

給付奨学金制度の支給金額※日本学生支援機構

区 分国 公 立私 立
自宅通学自宅外通学自宅通学自宅外通学
  大学・短期大学・専修学校
(専門課程)
第Ⅰ区分29,200円
(33,300円)
66,700円38,300円
(42,500円)
75,800円
第Ⅱ区分19,500円
(22,200円)
44,500円25,600円
(28,400円)
50,600円
第Ⅲ区分9,800円
(11,100円)
22,300円12,800円
(14,200円)
25,300円
第Ⅳ区分
(多子世帯)
7,300円
(8,400円)
16,700円9,600円
(10,700円)
19,000円
※日本学生支援機構の資料より抜粋

この図の( )内の金額は、生活保護世帯、児童養護施設より通学するという人が対象となります。

給付奨学金について確認事項

給付奨学金と授業料の関係

 給付奨学金に該当すると、授業料減免に該当することがほとんどです。もし、大学進学で家計に心配があったとしたら、まずは申請しましょう。申し込みましょう。

 お金の心配がなくならないかもしれませんが、小さくなると思いますので、ぜひとも利用しましょう。申し込みなしで自動的に給付されませんから、手続きをしましょう。

給付奨学金と貸与奨学金の関係

 この奨学金は、すべて申し込みができますし、併用可でもあります。それでは、すべて申し込んで、すべて該当したらどうなるでしょうか?

 給付奨学金のOKが出た場合は、同時に申し込んだ第一種の貸与奨学金が減額または0となります。ですから、給付奨学金で該当する支給額と第一種の貸与額で合計して奨学金を計算していると、不足する可能性があります。余計に借りる必要はありませんが、不足するのも困りますから、しっかり検討することが大切です。

奨学金の申し込みは?

 奨学金の申し込みは、「予約採用」は高校三年生の5月、6月あたりです。この申し込み時期は学校によって異なる場合がありますので、学校に相談、確認してください。春頃に申し込んで秋頃に「採用候補者決定」となります。実際は進学後に手続きを進めますので、「やっぱりやめた」もできますし、「申し込み時点より小さく借りる」こともできます。この「予約採用」を逃すと、「在学採用」となり、進学後に手続きをします。

 進学を希望する学生で、進学資金に心配があるご家庭は、まずは奨学金を申し込みましょう。

奨学金はいつもらえる?

 奨学金は進学後の5月が初回振り込みとなります。入学前に受け取ることはできません。前半の奨学金は貯めておいて、後期授業料の納付に利用できると、学費の納付の心配はなくなります。日々の生活費はバイトを頑張りましょう。

 進学決定後の入学金、前期授業料の納付には間に合いません。総合型選抜など早めに決まるとしたら、納付も早めになります。

 入金と支払いのタイミングのズレを抑えておきましょう。キャッシュフローで考えるということです。

まとめ

 いかがでしたでしょうか?今日は5月11日で、まさしく予約採用の時期かもしれませんね。

 日本学生支援機構の奨学金制度は、歴史も長く、多くの学生が利用しています。そして、以前よりは利用しやすくなっていると思います。

 奨学金制度が変更し利用しやすくなることは歓迎はしますが、今回のマイナーチェンジは限定的で、意味がないとまでは申しませんが、なんとも寂しい内容ですね。