今回は、ミステリー小説の金字塔・宮部みゆきさんの作品をご紹介します。
1987年のデビュー以来、優に100を超える作品を執筆されている宮部さん。
作品数が多いため、気になるけれどどれから読んでいいかわからないという方もいるはず。
今回は、そんな方のために私が読んだ作品の中から特に印象に残ったものをご紹介します。
皆さんの参考になれたら幸いです。
宮部みゆき小説おすすめ10選

ミステリーの金字塔とも言われている宮部さん。じつは時代小説やファンタジーなんかも執筆されているのをご存知でしょうか。
ですので、宮部みゆきさんの作品を読んだ事があるという方でも「こんなジャンルの作品もあったんだ!」という発見があるかもしれません。
今回は、数ある作品の中からバランスよく、さまざまなジャンルから厳選させていただきました。
お気に入りの1冊が見つかれば幸いです。
- レベル7
- 火車
- 蒲生邸事件
- 模倣犯
- ぼんくら
- 初ものがたり
- 名もなき毒
- ソロモンの偽証
- 英雄の書
- 小暮写眞館
レベル7

レベル7まで行ったら戻れない——謎の言葉を残して失踪した女子高生。記憶を全て失って目覚めた若い男女の腕に浮かび上がった「Level7」の文字。少女の行方を探すカウンセラーと自分たちが何者なのかを調べる二人。二つの追跡行はやがて交錯し、思いもかけない凶悪な殺人事件へと導いていく。ツイストにつぐツイスト、緊迫の四日間。気鋭のミステリー作家が放つ力作長編。
『レベル7』宮部みゆき著 新潮文庫出版 (1993/9/25)より引用
小説家デビューされて間もないキャリア初期に描かれた作品にもかかわらず、数々の賞にノミネートされた話題作。
記憶を失い、自分が何者なのかも思い出せない男女。行方不明になってしまった少女を探すカウンセラー。不可解なふたつのストーリーはどのようにつながっていくのか?
600ページ超えとかなりページ数がありますが、ハラハラドキドキさせる展開に続きが気になり、あっという間に読み切ってしまいます。
だんだんと明らかになる真実に、背筋がゾッと寒くなるようなサスペンス系ミステリー。
火車

休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。自らの意思で失踪、しかも徹底的に足取りを消して——なぜ彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか? いったい彼女は何者なのか? 謎を解く鍵は、カード社会の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。山本周五郎賞に輝いたミステリー史に残る傑作。
『火車』宮部みゆき著 新潮文庫出版 (1998/2/1)より引用
主人公の本間は訳あって休職中ですが、現役の刑事。ある時身内から、突然失踪してしまった婚約者を探して欲しいという依頼が舞い込みます。
休職中、しかも身内から内々に頼まれた事もあり、捜査権を持たずに個人で「捜査」を進めるというのが、このストーリーの面白いところ。
果たして、本間は真相にたどり着くことが出来るのでしょうか?
こちらも700ページ弱ある長編ですが、少しずつ明らかになる失踪者の「本当の姿」に、続きが気になりあっという間に読み切ってしまいます。
蒲生邸事件

予備校受験のために上京した受験生・孝史は、二月二十六日未明、ホテル火災に見舞われた。間一髪で、時間旅行の能力を持つ男に救助されたが、そこはなんと昭和十一年。雪降りしきる帝都・東京では、いままさに二・二六事件が起きようとしていた——。大胆な着想で挑んだ著者会心の日本SF大賞受賞長篇!
『蒲生邸事件』宮部みゆき著 文春文庫出版 (2000/10/10)より引用
こちらは打って変わって、タイムトラベルもの。
平成を生きる受験生の孝史が、昭和11年にタイムトラベルし、あの「226事件」に巻き込まれてしまいます。
史実に基づいた事件にタイムトラベルというSF要素を絡めた一風変わった設定ですが、はじめは消化しきれない思いを抱えていた主人公の隆史が、不思議な体験を通して成長していくヒューマンストーリーでもあります。
ストーリーの中でこの当時の状況について詳しく説明が入るので、歴史に詳しくない方でも大丈夫。
サスペンスやミステリーよりも、ヒューマンストーリーが好きな方におすすめです。
模倣犯(一)〜(五)

墨田区・大川公園で若い女性の右腕とハンドバッグが発見された。やがてバッグの持主は、三ヵ月前に失踪した古川鞠子と判明するが、「犯人」は「右腕は鞠子のものじゃない」という電話をテレビ局にかけたうえ、鞠子の祖父・有馬義男にも接触をはかった。ほどなく鞠子は白骨死体となって見つかった――。未曾有の連続誘拐殺人事件を重層的に描いた現代ミステリの金字塔、いよいよ開幕!
『模倣犯(一)』宮部みゆき著 新潮文庫出版 (2005/12/1)より引用
文庫版で全5巻ある長編小説。文学賞を受賞し、のちに映画化されたことでも話題となりました。
本書を宮部みゆきさんの代表作に挙げる方も多いのではないでしょうか。
連続殺人事件を題材としているので重めの内容ですが、心理描写に定評のある宮部さんの世界観に惹き込まれ、ページを捲るのをやめられなくなります。
どっぷりとミステリーの世界にハマりたい時におすすめです。
ぼんくら(上)(下)

「殺し屋が来て、兄さんを殺してしまったんです」——江戸・深川の鉄瓶長屋で八百屋の太助が殺された。その後、評判の良かった差配人が姿を消し、三つの家族も次々と失踪してしまった。いったい、この長屋には何が起きているのか。ぼんくらな同心・平四郎が動き始めた。著者渾身の長編時代ミステリー。
『ぼんくら(上)』宮部みゆき著 講談社文庫出版 (2004/4/15)より引用
舞台は江戸時代。同心(当時の警察)をやっている平四郎のもとに、ある殺人事件の調査依頼が舞い込みます。
単純な事件かと思いきや、捜査を進めるにつれ不可解な新事実が次々と出てくる始末。平四郎は事件を解決できるのでしょうか。
宮部さんは現代小説のイメージがあるかと思いますが、実は時代小説も多数執筆されているのをご存知でしょうか。
平四郎の調査方法が現代では考えられない、この当時ならではの足を使った捜査方法や口コミ調査が新鮮で、現代小説とは一味違った楽しみ方ができます。
ミステリーだけでなく、時代小説や歴史物が好きな方にもおすすめです。
初ものがたり

鰹、白魚、鮭、柿、桜……。江戸の四季を彩る「初もの」がからんだ謎また謎。本所深川一帯をあずかる「回向院の旦那」こと岡っ引きの茂七が、子分の糸吉や権三らと難事件の数々に挑む。夜っぴて屋台を開いている正体不明の稲荷寿司屋の親父、霊力をもつという「拝み屋」の少年など、一癖二癖ある脇役たちも縦横無尽に神出鬼没。人情と季節感にあふれた時代ミステリー・ワールドへご招待!
『初ものがたり』宮部みゆき著 新潮文庫出版 (1999/9/1)より引用
こちらも江戸時代を舞台にした時代小説。岡っ引きの茂七のもとに寄せられた数々の事件を、解決へと導いていくストーリー。
本書のポイントは、ミステリー要素だけでなく四季折々の食がからんでくるというところ。
6つのストーリーが収録されているのですが、登場する「初もの」が、どれもとっても美味しそう。
ミステリーなので殺人事件も起こってしまいますが、人情味にあふれたストーリーですので、読後はほっこり温かい気持ちになれるはず。
時代小説好きにはもちろん「食」が出てくる作品が好きな方におすすめです。
名もなき毒

今多コンツェルン広報室に雇われたアルバイトの原田いずみは、質の悪いトラブルメーカーだった。解雇された彼女の連絡窓口となった杉村三郎は、経歴詐称とクレーマーぶりに振り回される。折しも街では無差別と思しき連続毒殺事件が注目を集めていた。人の心の陥穽を圧倒的な筆致で描く吉川英治文学賞受賞作。
『名もなき毒』宮部みゆき著 文春文庫出版 (2011/12/10)より引用
主人公の杉村三郎は大企業に務める会社員。
解雇されたトラブルメーカーに振り回され、事件に巻き込まれますが、優れた洞察力と持ち前のお人好しで事件を解決へと導きます。
本書のポイントは、捜査能力のない、あくまで一般人である主人公が「個人的に」事件に立ち入っていくところ。
ですので、警察目線の捜査というよりかは、心理描写が多めで共感しやすいのが特徴です。シリアスな展開が苦手な方でも読みやすいのでご安心を。
ちなみに、この杉村三郎が探偵役として登場するストーリーは他にもあり、シリーズ化されているので、気になった方はぜひ他の作品も手に取ってみてください。
ソロモンの偽証1〜6

クリスマス未明、一人の中学生が転落死した。柏木卓也、14歳。彼はなぜ死んだのか。殺人か。自殺か。謎の死への疑念が広がる中、“同級生の犯行”を告発する手紙が関係者に届く。さらに、過剰報道によって学校、保護者の混乱は極まり、犯人捜しが公然と始まった——。一つの死をきっかけに膨れ上がる人々の悪意。それに抗し、死の真相を求める生徒達を描く、現代ミステリーの最高峰。
『ソロモンの偽証1』宮部みゆき著 新潮文庫出版 (2014/9/1)より引用
学校の屋上から転落死してしまった中学生。同級生たちは真実を突き止めようと奔走します。
まだ中学生の彼らが、未熟ながら考え行動する姿に胸を打たれハッとさせられることでしょう。
文庫版で6冊と長編ですが、2冊ごとに第Ⅰ部、Ⅱ部、Ⅲ部と分かれていてストーリー展開も早いので、中だるみすることなくあっという間に読めてしまいます。
ミステリー好きにはもちろん、学園ものがお好きな方にもおすすめです。
英雄の書

森崎友理子は小学五年生。ある日、中学生の兄・大樹が同級生を殺傷し、失踪するという事件が起きた。兄の身を心配する妹は、彼の部屋で不思議な声を聞く。「君のお兄さんは、“英雄”に憑かれてしまった」。大叔父の別荘から兄が持ち出した赤い本が囁いた。『エルムの書』に触れ、最後の器になってしまった、と。友理子は兄を救い出すべく、英雄が封印されていた“無名の地”へと旅立った。
『英雄の書』宮部みゆき著 新潮文庫出版 (2012/6/27)より引用
本の中の世界に入ってしまうというファンタジーな設定なのですが、命を主題にしていることから内容は重めです。
若干小学五年生の女の子が兄を助けたい一心で、ほんの中の世界に飛び込んでいく姿にハラハラドキドキしっぱなしでした。
心理描写や“無名の地”(本の中の世界)の設定の書き込みもすごくリアルで、没入感が味わえます。
ファンタジー、冒険小説好きにはたまらない1冊です。
小暮写眞館(上)(下)

家族とともに古い写眞館付き住居に引っ越ししてきた高校生の花菱英一。
変わった新居に戸惑う彼に、一枚の写真が持ち込まれる。それはあり得ない場所に女性の顔が浮かぶ心霊写真だった。不動産屋の事務員、垣本順子に見せると「幽霊」は泣いていると言う。謎を解くことになった英一は。待望の現代ミステリー。
『小暮写眞館』宮部みゆき著 講談社文庫出版 (2013/10/16)より引用
ストーリーは、高校生の花菱英一が不思議な写真の謎に迫るところからスタートします。
いわゆる学生さんが探偵役のミステリーかと思いきや、花菱家の家族を描いたヒューマンストーリーにもなっているのでシリアスな展開が苦手な方でも大丈夫。
上下巻合わせて4つの目次に分けられているのですが、ストーリーを通して少しづつ成長していく主人公の様子や、それによって生じる周囲の人々との関係性の変化も楽しめます。
家族、仲間との関係性を描いたヒューマンストーリーがお好きな方におすすめです。
宮部みゆき小説おすすめ10選・まとめ
今回は、宮部みゆきさんの作品をご紹介しました。
現代ミステリーに限らず時代小説、学生もの、ファンタジー要素やSF要素を含むなど実にたくさんの作品がありますので、どれからトライしたらいいか分からない……という方の参考になれば幸いです。
あなたの心に響く1冊が見つかりますように。