『おんな城主直虎』第41~45回―終盤でやっと面白くなってきた | 歴史愛~歴史を学び、実生活を豊かにする~

歴史愛~歴史を学び、実生活を豊かにする~

「温故知新」とは言いますが、世の中を見渡すと表面的な教訓ばかりでイマイチ実生活に活かすことのできない解説ばかりです。歴史的な出来事を、具体的な行動に置き換えて実生活をより豊かにし、願望を実現する手助けになるように翻訳していきます。


※この記事は、平成30年4月1日に書かれたものです。

皆さんこんばんは。
今回は去年の大河ドラマ『おんな城主直虎』の感想シリーズということで、第41~45回までの感想を書きます。
※記事下部に武家や公家の人物名の読み仮名を載せています。

まずはあらすじ。

草履番(ぞうりばん)として徳川(とくがわ)家中で働く井伊万千代(菅田将暉)と小野万福(井之脇海)だったが、後輩を育てることを条件に小姓(こしょう)への取立ての約束を取り付ける。かくしてやってきた後輩は中年のノブ(六角精児)という男であり、育てにくさに怒りを爆発させる万千代だったが、ノブは実は以前徳川家中にいた本多正信であると判明。正信の知恵により武田勝頼(奥野瑛太)の侵攻に備え、井伊谷(いいのや)の材木を提供する案を徳川家康(阿部サダヲ)に話す万千代だったが、おとわ(柴崎コウ)の分別により、その手柄は近藤康用(橋本じゅん)のものとなってしまう。

長篠(ながしの)の戦いで留守居(るすい)を命じられた万千代・万福は酒井小五郎(タモト清嵐)の嫌がらせにより武器庫の番を命じられるが、見事に武具を磨きあげ、凱旋(がいせん)後の家康に賞賛される。長篠の戦場では織田(おだ)・徳川連合軍が見事に勝利し、手際よく柵を作った手柄で元井伊(いい)家臣の中野直之(矢本悠馬)と奥山六左衛門(田中美央)が織田信長(市川海老蔵)から茶碗を賜る。万千代は他の小姓からの妨害工作をなんとか打開しようと画策していた。

武具(ぶぐ)の手入れの手柄で小姓に上がった万千代。他の小姓の妨害も潜り抜け、岡崎(おかざき)城への遣いをすることになる。一方井伊谷では、長篠の戦いで使った材木の伐採による出水(でみず)が発生し、おとわの知恵により、信長より拝領した茶碗を売って新しく木を植えることになった。

万千代が小姓として務め始めてしばらく経ったころ、ついに万千代と万福は初陣(ういじん)を許され、駿河(するが)田中(たなか)城攻めの陣へと随行することを許された。しかし特に何もすることがなく自身の今後を危惧する万千代であったが、武田(たけだ)の間者(かんじゃ)から家康を守り、捕縛するという功を立て、1万石の領地をもらうこととなる。一方井伊谷ではおとわの母祐椿(ゆうちん)(財前直見)が最期のときを迎えようとしていた。祐椿の計らいで対話することになったおとわと万千代。しかし、二人の考えには大きな隔たりがあった。

家康を襲った間者が嫡子(ちゃくし)信康(平埜生成)の家臣であることが判明し、罰せられる岡崎衆。一方で家康の元には三男長丸(ながまる)が誕生し、嫉妬と焦りに駆られた瀬名(菜々緒)は信康に側室をもつことを勧める。しかし、その話が信康の正室(せいしつ)五徳(ごとく)姫を通して信長の耳に入り、信康を死罪にせよという命令が下ってしまう。

瀬名についてもっと知りたい方は、下記リンクをタップしてください:
徳川家康の生涯を貫く思想―山岡荘八『徳川家康』第4巻




第41回は「この玄関の片隅で」。
下記「昼寝の時間」さんもおっしゃっていますが、菅田将暉氏の万千代登場によってまた新しい大河ドラマが始まったような雰囲気となり、新鮮で野心的で非常に面白くなってきました。

そして、家康の側にいた鷹匠(たかじょう)、つまり万千代・万福の後任の草履番が本多正信ということが発覚し、その出会いというか、流れは非常に自然なように感じて素晴らしかったのですが、気になるのは「ノブ」という呼称。


関連記事:
長篠の合戦―プライドよりも信頼関係を重視せよ

関連記事:
第一次高天神城の合戦-場を俯瞰する


以前書いたように、明治時代に姓名はひとつずつ、と決められる以前は基本的に「正信」のような実名(じつみょう=諱(いみな)、忌み名)を普段使いする習慣はなかったので、「正信」の「信」を切り取って通称にすることはまずなかったと考えられます(署名することはありました)。

参考記事:
武家や公家の名前について

ですので、「ノブ」ではなく仮名(けみょう=通称)の「弥八郎」の方が自然なのですが、「ノブ」で視聴者にヒントを出す狙いがあったのかもしれません。
ちなみに、徳川家の「鷹匠上がりの『ノブ』」で正信だ!」と気づくほどの歴史マニアは「弥八郎」でも十分に「正信だ!」と気づきます 笑

それと、大久保忠世(渡辺哲)が登場しましたが、彼は当時あんなに爺さんではありません。
天文元年(1532年)生まれですから、信長と同じくらいで当時は満43歳くらいです。
ちょっと残念。


大久保忠世についての関連記事:
第二次高天神城の合戦-勝者の戦法を徹底的にトレースせよ

同関連記事:
三方ヶ原の合戦―最強の能力「豹変力」

同関連記事:
一言坂の戦い合戦に学ぶ―がむしゃらになれ


第42回は「長篠に立てる柵」。
こちらも面白く拝見させていただきました。
万千代が酒井小五郎に意地悪される場面も、程よく手柄を横取りされそうになり、しかし、家康はきちんと万千代の仕業と洞察してスカッとさせるあたりが素晴らしいですね。

やきもきさせる展開を作ったら、きちんとスカッとさせてくれないと面白く思えません。


しかしひとつだけ気になったのが、信長が来ただけで岡崎城の本丸大広間が一瞬で南蛮(なんばん)化したこと。
漫画か!いや、欧米か!笑
リアリティがなさ過ぎてちょっと興ざめしました。

あと、酒井小五郎は忠次ではなく忠次の嫡子の家次ですね。

第43回は「恩賞の彼方に」。
ということで、面白いのであんまり書くことがないです 笑
後に武勇も武略も政治も外交もこなす井伊直政の片鱗がよく描かれて楽しいですね。
やはり、野心的な主人公(主人公ではないけど)がいた方が物語は面白い。

それと、後の展開がわかっているからなのかもしれませんが、築山・信康事件(つきやま・のぶやすじけん)の伏線が描かれているようで、そこもよかったと思います。


松平信康の登場する記事:
苦難の時代の幕開け―山岡荘八『徳川家康』第5巻

同上:
『麒麟がくる』第21回―松平蔵人の親族

同上:
石川数正は裏切り者ではない


第44回は「井伊谷のばら」。
万千代の出世劇がスカッとします。
武田の間者を見抜いたという演出もよかったですし、信康事件への伏線としてもよかった。
この辺は「空白」部分ですので、大いにフィクションで固めてもらっていいと思うのですが、うまくはまった展開だと思います。


ただ、このころ万千代がもらった領地は井伊谷だというのが通説です。
近藤康用は井伊谷を治めていません。
やはり史実を捻じ曲げるのはいただけない。
大河ドラマを見てそれが史実だと思い込む人が多いのですから、製作陣はその辺は責任重大ですし、歴史を捻じ曲げてしまったら訂正して謝るべき。

フィクションは空白部分でやってください。


ちなみに田中城は遠江ではなく駿河ですからね。
(劇中ではちゃんと駿河と言われていたような気がします)

第45回は「魔王のいけにえ」。
というわけでついに信康事件が幕を開けるわけですが、今回の止むに止まれぬ展開というのは遣る瀬無いものではありますが、ドラマとしては無難でよかったと思います。
家康は信康を憎んでいなかったけど、信長の徳川家削減のための命令で仕方なく信康を切腹させた、というのは新しい説でも何でもないのですが、下手に陳腐な創作されるならこのように通説をしっかり踏んでもらったほうが面白い。

しかし残念だったのが、家康の母於大(おだい)の方(栗原小巻)が鬼母のように描かれてしまったこと。
松平(まつだいら)家から離縁され、久松(ひさまつ)家に嫁いだあとも自分の血を薄めて写経し、家康(当時の竹千代(たけちよ))の無事を祈ったという逸話も伝わる人で、仏のような人というイメージがあったので残念です。
(劇中では演技の裏側に遣る瀬無い思いがにじんでいたとは思いますが)

もうひとつ残念だったのが、於義(おぎ)丸(のちの結城秀康)の存在がなかったことにされていること。
気賀(きが)の中村与太夫(=中村正吉。本田博太郎)を描いておきながら、於義丸を出さないのはちょっと意味がわからない。
見ている方としては気賀の中村が出てきたのだから当然於義丸のエピソードも描かれるのかと思ったので肩透かしだった。

というわけで、いろいろ不満はありますが前よりはよっぽど面白くなってきました。
あと5回で終わりなので感想がんばります 笑

今回登場した人物のフルネーム(参考:「武家や公家の名前について」)
・本多 弥八郎 藤原 正信
ほんだ やはちろう ふじわら の まさのぶ
・武田 大膳大夫〔通称は四郎〕 源 朝臣 勝頼
たけだ だいぜんのだいぶ〔通称はしろう〕 みなもと の あそん かつより
・徳川 三河守〔通称は次郎三郎〕 源 朝臣 家康
とくがわ みかわのかみ〔通称はじろうさぶろう〕 みなもと の あそん いえやす
・近藤 石見守〔通称は平右衛門〕 藤原 朝臣 康用〔信用〕
こんどう いわみのかみ〔通称は平右衛門〕 ふじわら の あそん やすもち〔のぶもち〕
・酒井 小五郎 源 家次
さかい こごろう みなもと の いえつぐ
・中野 越後守〔通称不明〕 藤原 朝臣 直之
なかの えちごのかみ〔通称不明〕 ふじわら の あそん なおゆき
・奥山 六左衛門 藤原 朝忠
おくやま ろくざえもん ふじわら の ともただ
・織田 参議〔通称は三郎〕 平〔藤原、忌部〕 朝臣 信長
おだ さんぎ〔通称はさぶろう〕 たいら〔ふじわら、いんべ〕 の あそん のぶなが
・徳川〔松平〕 次郎三郎 源 信康
とくがわ〔まつだいら〕 じろうさぶろう みなもと の のぶやす
・大久保 新十郎〔七郎右衛門、官職なし〕 藤原 忠世
おおくぼ しんじゅうろう〔しちろううえもん、官職なし〕 ふじわら の ただよ
・結城〔羽柴、松平〕 三河守〔通称なし〕 藤原〔豊臣、源〕 朝臣 秀康
ゆうき〔はしば、まつだいら〕 みかわのかみ〔通称なし〕 ふじわら〔とよとみ、みなもと〕 あそん ひでやす
・中村 (官職・通称不明) 源 正吉
なかむら (官職・通称不明) みなもと の まさよし

※画像は内容とは関係ありません。

参考
第41回
昼寝の時間
ドラマ@見とり八段
莓ワールド!
第42回
ドラマ@見とり八段
みはいる・BのB
坂の上のサインボード
第43回
莓ワールド!
昼寝の時間
みはいる・BのB
第44回
昼寝の時間
莓ワールド!
ドラマ@見とり八段
第45回
ドラマ@見とり八段
真田のよもやま話
みはいる・BのB

/
記事を読んでいただき、ありがとうございました!他の記事もぜひご覧下さい!

twitterfacebookでのフォロー、お待ちしてます!


☆「この人の書いてること、ちょっと面白いかも」と思った方はぜひメルマガ登録してみてください!

歴史を学んで、知識をつけるだけではなく「歴史を活かして自分の生きたい人生を歩む」というテーマで、ブログでは語れない話などを書いています。

↓こちらの画像をタップしてください↓


また、メルマガに登録してメルマガに記載されているメールアドレス宛にリクエストを送っていただければ、順次お応えします。

・○○(武将、合戦等)について語ってほしい
・大河ドラマ(『軍師官兵衛』以降)について語ってほしい
・今、○○について悩んでいるが、どの武将を参考にしたらいいか

…等々

ブログと違ってほぼリアルタイム配信なので、会話をしているかのようなコミュニケーションが楽しめます!

登録、お待ちしています!

※メルマガが迷惑メールフォルダや「プロモーション」フォルダに入っている可能性があります。
毎週火曜日に配信しているので、必ずチェックして、迷惑メールフォルダ等に入らないように設定しておいてください。




ブログランキング参加中!
クリックをお願いします。

にほんブログ村 歴史ブログへ
にほんブログ村


歴史ランキング